月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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事件②

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駅から、歩いて15分くらいのところにある自宅。
毎日歩くその道は、昔から変わらない。

桜の並木道。
春は、綺麗にピンクの花が咲く。
その後、緑の葉に覆われ、大量の虫が落ちる。
そして、今、何の木かも忘れ去られたかのような、枝だけの、ただの、枝だけのそこにある木となる。

その木の下を、必死で走った。
古い、一軒家。
父が建て、そして残した家。
その、向かいに住むのが、リョウだった。

KANからの電話。

出演DVDが送りつけられた。


なぜ、ウチに。
なぜ? 誰が?


今日は母親が、いるのだろうか。
郵便受けに、入れていてくれればいい。

宅配だったら。
リョウの母親が、受け取っているかもしれない。

昔からの、馴染みの配達員。
再配達しても、いつもウチには誰もいなくて。
見兼ねたリョウの母親が、受け取るようになった。
昔何度か、自分宛の荷物をリョウが開けてしまったことがあった。開けられても大したモノは入っていなくて、秘密にするようなコトもなくて、そのくらいオープンな関係だった。


角を曲がると見える。
昔ながらの、古い一軒家と、向かい合う綺麗にメンテナンスされた一軒家。

ガシャンと錆びた門を開け、郵便受けを開ける。
チラシが、数枚入っているだけだった。

家に、あるのか?
母親は、いるのか?

ドアを開けようと踵を返した、その時、空から声がした。

「おかえりー」

向かいの家の、窓から見えるリョウ。
その手には、片手で軽々持てる、小さな荷物。

「おぅ……」

上がる息を整えながら、朔良はあくまで、平静を装う。

「すげぇ急いでんね。これ?」
「あ、やっぱそっち行った?」
「なに? ゲームでも買ったの? 開けていい?」
「いやダメだろ!」
「えーなんでだよ」

朔良は静かに錆びた門を開け、道路を挟んだところにある白い門を開け、そして茶色のドアを構いもなく開けた。

足早に階段を上り、ガチャリと扉を開けようとした。が、そのドアノブは、回らなかった。

「え? リョウ?」
「……」
「開けろよ、なんだよ? リョウ?」
「ミツキぃ、これ、開けていい?」
「いや……ダメ」
「なんでダメなんだよ」
「俺宛てだろ?」
「昔はそんなことなかったじゃん」
「……」
「……ミツキ、お前俺に、なに隠してる?」

心臓が、ドクンと大きな音を打った。
痛いくらいに。
大きな音。

「なぁ、ミツキなんか言えよ……」
「お前、見たの?」
「見られちゃマズイもんなの?」
「なんなんだよ、ハッキリ言えよ」

静かな扉の向こうに感じるのは、怒りか、悲しみか。
そこに研ぎ澄ました神経を集中させる。

いや、集中させようと、必死だった。

集中なんてできるわけがなくて、波打つ心を、抑えようと、ただ、必死だった。


もし、リョウに気づかれていたら。
もし、リョウにバレていたら。

親にもバレるのだろうか。
友達にもバレるのだろうか。

冷ややかな視線を、浴びるのだろうか。
友達は、離れていくのだろうか。


一瞬で、朔良の脳内を思考が駆け巡る。
ぐるぐると、渦を描くように。


初めて出会ったKANの顔も。
穏やかに語るSUUの顔も。
初めてみた芸術的な絡みも。
ただただ、カッコイイ先輩モデル。
そして、櫂という、存在。


嫌な思考と共に巡る、あの世界の人々の顔と、その出来事。


現実の生きる世界と、あの世界で生きる世界が、ぐちゃぐちゃに絡み合っているように感じた。

どちらも自分には現実なのに。
違う世界を生きるそれぞれの自分がいるかのようで。
それが、ぐちゃぐちゃに混じり合い絡み合った時、朔良はパチンと何かが、弾けたような気がした。



どちらも、現実。
どちらも、現実であり、もはや朔良であることは、自分であること。

そこにたどり着いた瞬間、絡んだ糸がするすると解けて、ストンと落ちた。

そんな気がした。
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