月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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fan side……

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「まさかデンキウナギに感動させられると思わなかったわ」 
「櫂朔……さすがだわ……」

カットがかからないその空間で、甘い甘い会話を繰り広げた後、「これいつ終わんの!?」と櫂と朔良のツッコミまで、オフショットには収められていた。

ファン、スタッフ共にその作品を「デンキウナギ」と呼び、櫂朔最高峰の作品だと言った。

甘さと、激しさ、嫉妬と、独占欲と。
好きだなんだだけではない、曝け出した姿が、最高峰と呼ばれた所以だった。

『なぁ、見て見て』
『なにそれ、ミミズ?』

シャワー後なのか、モザイクのかけられた全裸姿のまま、タオルでわしゃわしゃ髪を拭きながら朔良が歩いてくる。その先には、櫂がなにやら机に向かっていた。カメラが映し出したのは、資料の端にサインペンで書かれた細い線。

『いや、デンキウナギやん』
『はぁ!? 絵心なさすぎじゃない?』
『うそやん! 朔描いてみぃよ!』
『よっしゃ』

櫂からサインペンを受け取り朔良は、ミミズのような絵の隣にデンキウナギを描く。

『いやいや、ただのヘビやん』
『ミミズよりマシだろ!』
『どっちもどっちやな』
『これ、プレゼントしまーす』
『ミミズとヘビでーす』
『デンキウナギでーす』

カメラを回すKANの声も入り、ハハハと笑う。


落書きをして笑う、普通の男の子。


ウィーンという機械音が鳴り、DVDが再び、再生を始めたのは、ふたりの絡み。

「え、また見るの?」
「ココ! ここ、やばくない?」

画面に映し出されるのは、立ちバックで攻められる朔良が崩れ落ち、それを受け止めるように櫂が腰と肩に手を回す姿。

『大丈夫?』
『大丈夫じゃない……このままイキそ……』

触れられてもいないのに勃ち上がった朔良のソレに、櫂は優しく手を伸ばす。

『もうこんななっとるよ?』
『あぁ……それダメだって……』
『もうイク?』
『まだ……このままでいたい……』

櫂は嬉しそうに微笑み、キスをせがむ朔良の頬に手を当て優しく唇を重ねた。そして、『上向いて……』と、1度挿入したソレを引き抜き、朔良のカラダをくるんと回転させた。

「ここ! ココが好き!」
「へ? ここ!?」
「朔ちゃんさぁ、カラダ軽いからだろうね?体位変えるとき、くるんって変わるじゃん? これ、好き」
「私この後さぁ、、指きゅぅーってほら! 力入ったとき、指先まで色変わってさぁ、これ好き」

画面の中では、激しく突きカラダを揺らしながら、櫂と朔良が乱れそして、デンキウナギに喩えた会話を繰り広げている。

「ココ……最高よね……」
「俺といるときにいちばんでおってほしい」
「醜いところも弱いところも全て受け止めるから、隣にいてほしい」
「これ台詞かなぁ?」
「台詞にしてもよくこの状況で言えるよね?」
「台詞じゃなかったとしたら、リアルすぎるよね」
「すごすぎる……」
「たまらん……」

ホテルの一室。
チェックアウトまでの時間、DVD鑑賞をギリギリまで行う。

「もう会場にいるのかなぁ?」
「いるんじゃない? 朔ちゃん会いたいようー」
「私は櫂くんにはやく会いたいなぁ」

イベントが始まるまで、あと数時間。
ホテルには、同じファンらしき人がちらほらいて。
決して安くないこのホテル。

なぜ集まるのか。
デンキウナギの、撮影場所となったホテルだから。

彼らの絡んだその、ホテルに泊まりたい。
彼らの見た景色を見たい。

そしてそこから、彼らに会いに行く。
櫂と朔良に、会いに。





ざわめく会場。
初めてきたときは、会場になかなか入れなかった。
どんな人がいるのか。
自分はここにきてしまってが良かったのか。
しばらく会場に吸い込まれる人を眺めていた。

今、当たり前のように吸い込まれていく自分に、少しだけ笑いがこみ上げる。

「あ、久しぶりぃー元気だったぁ?」

スタッフさんとも、仲良くなって、当たり前のように挨拶をしてくれる。

「元気よーKOHちゃんも元気そうだねー」
「あたしは元気よぅー元気しか取り柄がないからね」
「ねぇ、デンキウナギやばかったんだけど!」
「そうでしょ? 編集しながら固まったわよ!」
「あぁー未編集の素材が欲しい!」
「ははっ! 素材とかあんたもうスタッフね!」

軽口を叩きながら、手を振る。

「KOHちゃんまた可愛くなったね」
「彼氏できたのかなぁ」

スタッフのKOHちゃんは男性でありながら、誰よりも美容に気を使い、誰よりも可愛らしい。普段は表に出てこないが、イベントの時には最前線でファンを喜ばせてくれる。初めてきたファンには、緊張を解してくれる。

「あら! あんたそんなところでなにやってんのよ! 早く入りなさい!?」

初めてで、なかなか会場に入れないファンには、頃合いを見計らって声をかける。そのタイミングが絶妙で、ありがたい存在。

指定された席に着く。

「こんにちはー久しぶりやね」
「ねぇねぇ、新人くん見た?聖也くん可愛かったね」
「あれ、乗り換えんの?」
「いやいや私はやっぱり凌空が好きよ」
「斗真、なにしてるかなぁ寂しいねぇ」

あちこちから聞こえる、話し声。
購入したグッズ、写真集、DVDを堂々と見せ合う。

普段、誰にも知られずこっそりと、ひっそりと眺めている。それを、堂々と手にとり、恥ずかしがることもなく、話ができる。

幸せな空間だと、毎回思う。


「こんにちはー」

突然、マイクを通した声が聞こえた。
ステージを見ると、幕前にSUUが立っていた。

「SUUさんまた太った?」

コソコソと隣で耳打ちをしてくる友達に、クスリと笑う。

「実はですね、ちょっと事情があって、櫂がまだ会場に来ていません」

一瞬静まり返る会場。
櫂を目当てにしてきた友だちは、隣で固まっている。

「ご安心ください。今こちらに向かってはいます。帰りのお時間等もありますので、時間通りに開始させていただきますが、オープニングには遅れるかと思いますので、ご了承下さい」

いつもながら、丁寧に、言葉を選びながらゆっくりと話す、低音の響く声。

「良かったね、ちゃんと来るって」

隣の友達に小さく耳打ちする。

「何があったんだろう……」
「寝坊じゃない?」
「えぇー?」
「それか仕事?」

少しして、いつものオープニング音楽と共に、幕が上がった。

凌空をセンターに、弦、朔良が脇を固め、サイドに新人の聖也と碧生。

甲高い声援が、会場に響き渡る。
それぞれの好きな人の名を呼ぶ声。
思わずあげてしまう、悲鳴のような声。

この人たちは、何を思ってそこに立っているのだろう。全てを曝け出して、ノンケであるにも関わらず男性を相手にして、そして女性たちに声援を浴びる。

一度、聞いたことがある。

「私たちのことどういうふうに思ってるの?」

そこにいたのは、弦と朔良。

「ありがたいですよ、あなたたちいなかったら、俺ら作品作っても意味ないすからね」

優等生のような言葉。

「でもまぁ、変態だとは思ってますけどね」

そして付け加える、お茶目な言葉。

「それはお互い様だよね!?」

そんな軽口を叩けるくらい、近い存在。


それなのに、彼らの日常を何ひとつ知ることができない。

普通に仕事をしていて、学校に行っていて、
友達がいて、同じように生活をしている人。
それを知っている人がいる。
私たちと同じような普通の人が、それを知っている。

それでも私たちは、何も知ることができない。
ファンになってしまったから。


彼らの作品を見ることができる幸せ。
会える喜び。

そこに入り混じる、寂しさと切なさ。


もし彼らが、引退してしまったら、もう二度と、彼らには会えない。そして、もう二度と、彼らの今を知る機会は与えられない。

『今』この時に、この場所にいられる幸せを、ただただ、噛み締める。

そう思って、ステージに立つ彼らを目に焼き付ける。そうするとなぜか、目の前がぼんやりと滲んでくる。

「また泣いてるぅー」

隣の友達が、そう言って笑う。

「だってぇ幸せなんだもん」

そう言って、私も笑う。


「櫂、到着しましたー!」
「ごめんなさぁあい! 寝坊です!」
「え、まじで!?」
「ごめんなさいまじで! まじでごめんなさい!」

頭を下げる櫂に、周りからバシバシとツッコミが入る。

「大丈夫?」

隣で朔良が、マイクを通さず櫂を見上げた気がした。

「うん、大丈夫」

見下ろした櫂も、笑ってそう返したと思う。

そうやって、垣間見える彼らの優しさが、やっぱり好きで。

そしてやっぱり、涙が出てしまうんだ。
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