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fan side……
しおりを挟む『なぁ~どこ行ってたの?』
『どこも行ってないって』
『だって全然帰ってこなかったじゃん』
『そんなことないだろ』
『浮気? 外に男いんの?』
『いねぇって! なんだよそれ』
『……じゃぁキスして!』
『はぁー? なんでだよ』
『できないの? できないのー!?』
ソファで帰宅したばかりであろう凌空に、朔良が迫る。朔良にしては珍しく、嫉妬と、可愛らしさ全開。
甘えたような声を出し、凌空に迫る。
『できないの?』
ぐっと顔を近づけ、じっと凌空の瞳を見つめ、見つめられた凌空は観念したように身体の力を抜く。
『キス……しよか?』
『嫌々はやだ』
『嫌々じゃないよ』
『ほんと?』
不安そうな朔良の瞳が少しずつ、甘えたような上目遣いに変わる。そっと唇を重ね、安心したように朔良は、凌空に身を委ねた。
朔良の指先が凌空の肌をなぞる。ワイシャツのボタンをひとつずつ外し、露わになる蕾を舌で転がす。
その感覚に集中するかのように凌空は、目を瞑りはぁっと息を吐いた。
『気持ちいい?』
朔良は凌空の反応を確かめるようにその表情を見上げ、嬉しそうに微笑んだ。
『朔良ぁ……きもちいい』
朔良の少し長い髪に、手を通す。
その手に自らの手を重ね、また朔良は微笑んだ。
上目遣いで凌空を見るその顔は、とても優しく、そして、可愛らしい。
『凌空、今日は俺、挿れていい?』
『ダメ。今日は俺』
『なんで? 挿れたい』
『だってさぁ、今日は俺の番じゃん』
タブレットに映し出される、甘えんぼ朔良と、ゆったりとした口調で朔良の攻めを受け流そうと試みる凌空。
「え、リバカップルは順番なわけ?」
2人のやりとりに、思わず、言葉が出る。
『そこ順番なの?』
画面の中では朔良が同じように凌空に笑いかける。
『え、違ったっけ?』
『もうさぁ~、誰との話?』
と、また嫉妬を繰り出した。
可愛い。
可愛くて堪らないのに。
なせが、心の奥底が、ぎゅぅっと抉られる。
凌空が嫌なわけではない。
凌空と朔良のこの作品は、2人の可愛らしさと関係性が出ていて好き。
なのになぜこんなにも、切ないのか。
久しぶりの朔良の出演作品に、櫂が、いないから。
あの時、涙も出なかった。
櫂が、引退を発表した時。
その隣に、朔良はいた。
カメラをじっと見つめて、櫂は自分の言葉で、引退を説明した。そこには強い意志が感じられて、彼は、彼の道を行くんだと感じた。
もっと、もっと櫂と朔良を見たかった。
もっと、もっと、ありがとうを言いたかった。
あなたたちは、特別なんだと。
特別な存在なんだと、伝えたかった。
それなのに、彼はあっさりと、そこを去っていったように感じて、それが堪らなく、寂しかった。
そしてその隣で、キュッと唇を結び、じっと櫂の言葉を聞いて、真っ直ぐ前を見る朔良の表情が、今も脳裏に焼き付いている。
それはまるで、母親に置いていかれる子どもが「行かないで」と言えずにじっと耐えているような、泣きそうな心をグッと腹の底に必死で押し込めているような、そんな顔に見えた。
そんな朔良が、変わらず作品に出演し、櫂ではない相手に嫉妬をして甘えている姿。これを櫂とやったらどんな作品になっていたんだろうと、考えてしまう。
今まさに挿入しようとしている朔良をいったん止めて、あれからずっと見れていなかったデンキウナギを、再生する。
『でもな、俺もジェラシーやねん』
そう言って櫂は、朔良と弦の関係に嫉妬した。
『俺といるとき、いちばんでおってほしい』
激しい行為の中で櫂は、朔良にそう願った。
どんな時も2人の関係は自然で、その言葉には嘘がないように感じられた。
画面の中。
甘い甘い世界の中にいるふたりに、話しかける。
「だってさぁ、櫂くんも朔ちゃんも、気づいてる? 朔ちゃんの前でだけ、櫂くんはこんなにも関西弁で話すんだよ」
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