月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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伝承

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「おい、悠! 悠、恐がんなほら来いって」
「やだーー朔良くん怒ってる」
「怒ってるよなんだよ遅刻って!」
「大先輩を前に大遅刻! そらあかんな」

事務所のベッドに横たわり、不機嫌そうに足を投げ出した朔良の姿を、KANがカメラに収める。

撮影に遅刻した悠と呼ばれる若者は、ビクビクしながら近づいてきて、ペコペコ朔良に頭を下げた。

「今日できんの?」
「できますできます!」
「そんなビビってたらできないだろ」
「やーりーまーすー!」

悠は今度は一目散にシャワーを浴び準備に向かった。

たまに呼ばれる撮影は、これからを期待されるモデル、朔良の技を受け継げるであろうモデルを相手として設定された。

朔良のモデルとしての残りの時間が、僅かであることをスタッフは感じていて、その伝承をしていく時期にあることを、それは意味していた。

走り去る後ろ姿を目に、朔良は笑う。


「可愛いな、悠」
「朔ちゃんはじめまして?」
「んや、イベントで会ったわ」
「あぁーりっちゃんの」
「そいや凌空くんこないだ会った」
「まじ? 元気やった?」
「うん、櫂と歩いてたらふつーに道端でバッタリ会った」
「へぇーそんなことあるんやなぁ」

KANは、そっとカメラを置いた。
珍しいその光景に、朔良は思わず視線をKANに向ける。

「櫂とは、どう? うまくやっとる?」
「……うーん、なんかまだ時間を埋めてるって感じかな……」
「櫂と再会して、朔ちゃん辞めるって言うかなと思った」
「あぁ、考えるけどなぁ……イベントでファンの人たち見て、あーまだ今じゃないって思った……」
「朔ちゃんはいい子やな……」
「それ最初から言ってるよね」
「流されて辞めても、悪いことやないのに」

KANは、眉を下げて朔良を見た。

「どうした? 最近元気なくない?」
「んや、そんなことないで、みんなが上手くいって嬉しい。でもちょっと寂しい、そんな感じやな」
「KANちゃんは彼氏とかは? 聞いたことないな」
「んーいたこともあったけど今はおらん。なんやもう、今はただただ家族に憧れとる」
「家族かー……」

『家族』のカタチ。
凌空と弦を見て、あのふたりも、ちゃんと家族だと思う。でもKANにはそれもまた、違うのだろうか。

「すいません! お待たせしました!」
「ちょっとそんな感じじゃできひんやろ」
「できますやらしてください!」
「やらしてくださいって何だよそれっ!」

大きな口を開けて、朔良が笑う。

かつて、ほとんど笑わなかった朔良。
少しずつ打ち解けて、さらけ出して、そして、笑うようになった。

居心地の良かったメンバーが去って、若いメンバーとの距離感に悩みながらも、少しずつ少しずつ、立ち位置を見出しているように、KANには見えた。


「よしじゃぁ撮ろかー」
「悠、いつも通りでいいから」
「はい……あータチできるかなぁ……緊張する」

SUUの声に、場が引き締まる。


「待ち合わせ遅刻するってどーゆうこと?」
「え……ごめん……」
「本当にごめんって思ってる?」
「思ってる……」
「じゃぁ……気持ちよくして……」

スタートの瞬間突然繰り出される朔良のアドリブ。
緊張する悠への気遣い。
素のままで、入り込めるように。

悠が遠慮がちに、キスをする。
差し出された舌が、少しだけ触れる。

「そんなんじゃ全然足りない」

キスをしながら、悪戯顔でニヤリと笑って、朔良は囁く。

「えぇ……もっと?」
「もっと、……舌、出して……」

自然に、遠慮するなと。
もっと来いと。
朔良が甘い声で、誘導する。

リップ音が、部屋に響く。
悠のカラダを朔良がなぞり、その手を首筋に這わせる。そして、悠の腕を自らの背に這わせるよう、その腕の行く道を作る。

カメラがその姿を追う。

カメラの位置に、見せるキスの角度。
首筋、顎のライン、絡む舌が見えるように。
首筋を這う手で少し、角度を調整する。

一頻りカメラがその姿を撮り終えたことを確認し朔良は、ゆっくりと身体を倒しながら、悠の後頭部に手を回し、それについて行くように悠が、朔良を組み敷く。

「朔良くん……気持ちいい?」
「まだ……まだ足りない……」
「もっと?」
「もっと……」

白い肌を覆う布を、1枚ずつ剥ぎ取り刺激を与え、煽られるように悠は、朔良を刺激する。

「見本、見したるよ……」

全ての肌を露わにした朔良が、今度は悠を組み敷いた。

「ほら悠……こっち見て?」

うっすら目を開ける悠と目が合い、朔良は小さく口角を上げる。そしてその目を見つめながら、小麦色の肌に、舌を這わせる。

それを受け悠は生温かい息を吐く。

その息に指を絡めるように朔良は、自らの指を悠の唇をなぞり、舌に絡めた。

「朔良くん……挿れたい……」
「我慢できなくなった?」
「うん……」

コクリと頷く悠に朔良はまた、小さく微笑む。

「可愛いなぁ悠……」

綺麗にほぐしたその場所を、悠に差し出す。
もうすっかりそれにも慣れて、むしろそこに、快感を覚えた。

「ゆっくり……そうそう……」
「入ってる? 入ってるとこ見て……」
「もっと……もっと突いて……」


悠のモノを受けながら腰を振り悠を導き、完全なる朔良主導の絡みに、KANは笑った。

「いやぁこれ、教材やな」
「攻めネコになるかと思いきや、ちゃんとウケながらの誘導、朔良もそんなことできるようになったか」
「なにもうー……でも悠サイン見逃さず対応してくれてたよな」
「ほんとっすかぁ!? マジで嬉しいっす」


まだ吐き出されたモノが腹に残る。
気怠い身体を投げ出したまま、回されるカメラを前に笑う。

嬉しそうに笑う悠の姿、仕事への貪欲な姿勢が、朔良は嬉しかった。


「悠、何回目?」
「3回目くらいじゃないかな?」
「すごいな……全然心配ないじゃん、素直だし」
「朔ちゃん……」

朔良が後輩を褒め、認めるたびKANは、寂しげな顔をした。



「朔ちゃん、携帯なっとるで」

遠くに投げ出したままになっているスマホを、KANが朔良に手渡す。

「もしもし?」
『あ、朔?』
「どした? すげぇタイミング」
『仕事終わったん?』
「今終わったとこ」
『いやそれ……ちょっと生々しいな……』
「あー……ごめん」
『んやいいんよ、終わったら飯行こーぜ』
「うん、迎えに来てー」
『はいはい』

あたたかい声が、スマホから耳に届く。
別の男から吐き出されたモノを腹に張り付けたまま、櫂と会う約束をする。

罪悪感、葛藤、戸惑い。
そんな言葉が心を駆け巡る。

でもそんな想いはもうとっくに、蹴りをつけた。
櫂とも、話し合った。


「なんとも思わんこともない。でも、納得できるまでやればいい。俺は、待っとるから」

櫂はそう言った。

櫂の心に甘えていることは、わかっている。
今、自らの心に折り合いをつけながら、その時を迎える準備をしている。

「櫂、来るってー」

本当にどこまでも不器用だと、朔良は小さく笑って、浴室へ向かった。
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