楽毅 大鵬伝

松井暁彦

文字の大きさ
上 下
108 / 140
決別

 五

しおりを挟む
「魏竜。一万でいい。俺の麾下を今すぐに集めてくれ。臨淄まで最速で駆ける」

「王を討つのか」

「ああ。斉王を討てば、災禍は臨淄で終わる。東へ逃せば、斉東にまで災禍が及ぶ」
 魏竜は真一文字に唇を結び、肯首した。
 
 二刻後。
 昌国より東一里の地に、楽毅の麾下一万が集結した。この一万は楽毅自身が、手塩にかけて鍛え上げた猛者ばかりで、呼吸の合図で手足のように動く。
 
 宵に染まりし大地に、蒼き具足を纏った一万が整然と隊列を組んでいる。

「行くか」
 先頭の司馬炎と魏竜と合流すると、楽毅は麾下に進発の合図を出した。



しおりを挟む

処理中です...