バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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魔剣争奪戦編

第58話 タローvsジード(1)

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 あの日、自分が愛される者に嫉妬していると自覚した日。
 思えばその時から、嫉妬の魔剣レヴィアタンはボクの手によく馴染むようになった。
 自覚する前と後では技の速度、正確性、威力の全てがまるで別のものとなっている。
 自分で言うのもなんだけど……

 ボクはけっこう強いんだよ?

 魔王になって200年は経過したけど、ボクに勝てたモンスターも人間もいない。
 ランとは一目惚れ同士だったから戦いはしなかったけど、それでも模擬戦ではランに負けたことは無い。

 だからボクは、ボクを強いと思った。

 なのにさ――

 これはないだろ!?


 ***


 ジードは連続攻撃の最中、魔剣を逆手に持ち替える。

青龍之雷せいりゅうのいかづち!」

 刃に蒼い雷が付与され、そのまま回転の勢いそのままに斬りかかる。

「ビリビリは好きじゃないんだよなー……」

 タローは片手で怠惰の魔剣ベルフェゴールを構えたままだ。
 蒼雷を纏った嫉妬の魔剣レヴィアタン怠惰の魔剣ベルフェゴールとぶつかり合う。
 雷が怠惰の魔剣ベルフェゴールを伝い感電する、ジードはそう思った。
 だが、ジード狙いは外れてしまう。
 タローはぶつかり合う瞬間に魔力を放出した。
 そして雷が魔力に当たると、そのまま魔力を拡散。電撃の直撃を防いだのだ。

「――チッ!」

 スピードを活かした連撃を繰り返すが、タローにはまだまともに一撃をくらわせられなかった。

(後先考えてられないな……!)

 ジードは嫉妬の魔剣レヴィアタンの魔力を開放する。
 すると、刃がぶれ始めた。そしてそこには――

「……刃が増えた?」

 タローの目に移るのは、まるで手甲鉤てっこうかぎのように、刃が合計で3つ増えた状態の青龍刀レヴィアタン
 ジードはそれを、刀で峰打ちするときのように、刃が自分に向くように構えた。
 そして空中に大きく飛び上がると、高速で縦回転して、タローを襲う。

青龍之爪せいりゅうのつめ!」

 まるで龍が爪を振るうがごとき威圧。
 本当に龍なのではないかと錯覚してしまうほどであった。
 タローは大きく振りかぶると、怠惰の魔剣ベルフェゴールを先ほどより力を込めて振るった。

「――っ!」

 もう何度目かの魔剣同士の衝突。
 だが、今回は先ほどまでとは違い、タローの足元が大きくへこんだ。
 足が少しだけ地面にめり込むのを見て、タローは右腕一本で持っていた魔剣を両手に持ち直した。

「ふんっ!」

 そのまま魔剣でジードを押し返す。
 ジードは空中で回転しながら近くの木に着地する。

「はぁ……はぁ……」

 肩で息をし始めるジード。
 だが、それでもジードは攻撃の手を緩めなかった。
 間髪入れずにもう一度魔力を開放し、蒼雷を付与。
 足に力を入れ大きく踏み込むと、今度は地面でスピンしながら突進する。

青龍之尾せいりゅうのお!」

 両手で持つ青龍刀レヴィアタンで、今度は平打ちする。
 先ほどの青龍之爪せいりゅうのつめは刃の先端で刺突を目的とした突き技だった。
 しかし、タローの片手での威力は超えたものの、両手では押し返されてしまっている。
 対して青龍之尾せいりゅうのおは、刃で斬るのではなく、刃の側面でブッ叩く技である。
 殺傷性は低いが、当たれば全身に鈍痛が響き、まともに動けなくなる。
 動けなくなった隙にとどめを刺せれば勝ちだ。

 だが、それは無理な話だった。


「――うおっと」

 タローは高速で回転するジードの動きを見切ると、刃の側面をバンッ! と素手で止めた。
 そして、好機とばかりに刃を伝ってジードの手を掴む。

「なにっ!?」

 距離を取ろうと藻掻くが、タローの剛力がそれを許さない。
 タローは片手でゆっくりと怠惰の魔剣ベルフェゴールを構える。

「つ~か~ま~え~た~~~~ッッ!」

 魔剣が振るわれた直後、ジードの視界では慌ただしく映像が切り替わっていく。
 最初はタロー。
 次は木。
 その次は空。
 雲、木、雲、青空、雲、雲、木、木、木と来て、最後は地面だった。

「――がはッッ!」

 激突による衝撃と、響く腹部への鈍痛。
 思わず吐いた血は少量ではない。
 ポーションで回復したくても、手が震えて取り出せない。
 いや、それどころか何かを飲むという行為すら受け付けないだろう。

「~~~っっがっっっっぐふぉっっ!」

 格好など気にせず無様に跪き血を吐く。
 それしかできないほどに、タローの一撃は強烈なものだった。

(は、ははは……ホントに、こんなのないだろ……)

 ジードは努力した。
『誰か』もわからない『誰か』に認められるために努力した。
 愛されるために努力した。
 強くなれば愛されると信じて努力した。

 そして、やっと出会えた『誰かラン』に愛され、ジードは報われた。

(そうか、ようやくボクは強くなれたんだ!)

 そう思った。

 でも、その思いが間違いであったのかと疑うほど、強い男がいた。

(努力してボクはこの程度……けどこの男は――)

 戦闘前、タローのことを少しだけ調べた。
 特にこれといった血筋でもなければ、特別な訓練をしていたわけではない。
 冒険者になってからも、滅多な修行もせずダラダラと毎日を過ごしているだけの男。

 そんな奴に、ジードは手も足も出なかった。

(負けるのか……こんなに努力したのに?)

 その瞬間とき、ジードに異変が起きた。

(努力してないのにコイツは愛されてる。ボクはこんなに努力して愛されたのに?
 なんでコイツばかり愛されてるんだ? なんでコイツはツヨインダ?
 なんデだ……ナンデダ……)

 嫉妬の魔剣レヴィアタンは、"嫉妬"を喰らう魔剣。
 嫉妬が強ければ強いほど、その力を増す。
 そして、嫉妬の魔剣レヴィアタンの能力は――



「――ナンデ、オマエナンカガアイサレテンダヨォォォォォ!!!」



 ジードの言葉は発音がおかしくなっていた。
 それもそのはずだ。
 ジードの身体が、人が発音できる骨格から変化していたのだから。

 腕は細く鋭い爪が生え、胴は蛇のように長く伸び、頭から角が生えていた。

 その姿はまるで――


「マジかよ……!」

 タローの目の前にいるのは――青き龍。


「ウォォォオオオオオ゛オ゛!!!!」


 嫉妬の魔剣レヴィアタンの能力の名は、青龍降臨ブルードラゴン

 ジードが行使したのは、嫉妬の魔剣レヴィアタン最高技、青龍変化セイリュウヘンゲである。

「オマエガ、ウラヤマシイィィィイイイイ゛イ゛!!」

 タローとジードの戦いは、苛烈を極め始める。
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