バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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魔剣争奪戦編

第67話 タロー&タマコ vs ラン&ジード(4)

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 濃密な魔力を纏った怠惰の魔剣ベルフェゴールが、蒼雷を纏った鋭爪と激突した。
 魔力と蒼雷を撒き散らせながらぶつかり合う様、まるで線香花火のように美しい。

「「がぁあああああ゛あ゛!!!」」

 タローは魔剣を乱雑に振るうが、一撃一撃が必殺の威力を秘めている。
 直撃すれば龍人は敗北するだろう。
 しかし、龍人はタローの一撃に対し、高速で三撃入れることで対応していた。
 逆に言えば、龍人の3倍の攻撃がタローのの一撃と同等なのだ。
 それは疲労も3倍早く溜まると言うことでもある。

「「ハァ……ハァ……」」

 青龍同化せいりゅうどうかの効果でスピードが上がっているとはいえ、龍人は蓄積したダメージが大きい。
 このペースで戦えば1分どころか30秒も持たないだろう。

「「ならば――」」

 それを危惧してか、龍人は上空へと飛び立つ。
 天空で大きく翼を広げると、蒼雷を纏った両翼で自身を包み込んだ。

「「青龍天回翼せいりゅうてんかいよく!」」

 龍人はドリルのように高速回転しながら、タロー目掛けて墜下する。
 高速で落下する雷錐に対し、タローは仲間の名を呼んだ。

「タマコ!」

理解わかっておる!」

 タマコは黒弦刀を構えて身を屈める。
 そして音速移動ソニックを発動すると、龍人に向かって一気に地面を蹴った。

死への行進曲デス・マーチ!」

 タマコがもう一度龍人に大技を仕掛ける。
 そして同時に、タローは怠惰の魔剣ベルフェゴールを両手で握りしめた。

「「その程度の技などッッ!」」

 龍人の回転撃と音速の突きが衝突した。
 そして威力は言葉の通り龍人が勝っている。
 だが、それは百も承知の上だ。

「――主殿!」

「まかせろ」

 タローは衝突した直後の黒弦刀の柄を、フルスイングして打った。
 まるで釘を打つかのような攻撃だが、これにより死への行進曲デス・マーチの威力が飛躍的に上昇。
 龍人の威力と同程度にまで引き上げた。

「「ぐわっ!」」

「うっ!」
「おっと」

 両者の技が弾けると、龍人は空中に投げ出されてしまった。
 大きく体勢を崩す龍人に対し、タマコも同じく吹き飛ばされるが、それをタローが後ろから受け止めた。
 龍人の初撃を不意打ちながらその場で踏み止まったタローだ。
 この程度なら造作もない。

「――追撃するぞ!」

 そしてタローはタマコを受け止めるや否や、すぐに龍人へ距離を詰め、もう一度怠惰の魔剣ベルフェゴールに魔力を付与した。

「あと30秒くらいか……」

 ここまでの時間を体感で計測する。
 タローには時間を稼ぐつもりなど微塵もない。
 1分もかけずに終わらせようとしていた。
 その理由は、時間制限で勝つのは『真の勝利』とは言えないこと。

 そしてもう一つは――自分がである。


「さっさと終わらせて、俺は賞金貰って家でグぅ~タラで過ごすんだぁぁああああッッ!!」

「「そんな動機のヤツに負けてたまるかぁあああッッ!!」」

 龍人は翼を広げて空中でなんとか体勢を整えると、両爪に蒼雷を纏わせた。

「「青龍雷迅爪せいりゅうらいじんそう!」」

 龍人もタローへと距離を詰め、その雷爪で切り刻もうと腕を振りかぶった。

 直後――

「――音鎖ロック

 突然腕が鎖で縛られたように動かなくなる。

「「な、なんだ!?」」

 戸惑う龍人の視線に先に、黒弦刀の弦を弾くタマコが映った。

「「魔法か!? こんなもの――」」

 もう一方の腕で音鎖ロックを破壊しようとするが、音の鎖はもう一方の腕、胴体、両足と順に縛っていった。

音鎖弾奏ロック・ミュージック!」

 幾重にも縛られ身動きが取れなくなってしまう龍人。
 だが破るだけなら簡単だ。
 ものの数秒で事足りることである。

 しかし、龍人にその数秒の時間は与えられなかった。

「「クソッ!」」

 途中まで龍人も距離を詰めていたことにより、すでにタローは眼前へと迫っている。

「いい加減、終わらせてやる!」

 魔力の帯びた怠惰の魔剣ベルフェゴール
 そして、タローはそれを両手で構えている。

 特大の一撃が来ることは予想できた。

 けれど、ここで諦めるような二人ではない。

(まだッス!)
(最後まで足掻いてみせるよ!)

 ランとジードの想いが重なる。
 すると、龍人の頭部の角に蒼雷が超高速でチャージされていく。

 腕は利かない、足も動かない。
 だが、まだ牙が残っていた。

「「――勝つのはボク達だぁぁ!!」」

 蓄積された蒼雷は角から喉元へと移動。
 龍人はそのまま大口を開けると、そこから鋭利な牙と蒼雷の砲撃を放った。

「「青龍神王牙せいりゅうじんおうが!」」

 龍の牙を彷彿とさせる形状の雷撃。


 ――特大濃密魔力+怪物以上の攻撃力

 ――強靭な牙+蒼き雷撃

 間違いなく、この戦いの最強を繰り出した両者。

「「がぁあああああ゛あ゛!!!」」

「うぉおおおおおッッ!!」

 龍人渾身の一撃にタローも雄叫びを上げる。
 二つが激しくぶつかり合い、周囲に火花を散らした。

 だが勝者の一撃は、徐々に相手の攻撃を押していく。


 その光景を目の前に、龍人の精神世界ではランとジードが会話をしていた。


(ねぇ、ジー君)

(……どうした?)

(自分、この人達と戦えてよかったッス……)

(……うん。ボクもそう思うよ)

(きっと、自分達もっともっと強くなれるッスよね?)

(あぁ……絶対に強くなれる! だから――)

(うん)

(帰ったら、もう一度修行のやり直しだ――)



 雷撃は次第に押し返され、その膨大な魔力に飲まれていった。


「「――……楽しかったよ」」


 そう言い残した後、魔力は龍人をも覆い隠す。
 魔力はそのまま空へと飛んでいき、遠くの山を少し穿って消えた。



 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・




 静寂が戻った森は周囲の木々が消え去っており、その激しい戦闘を物語る。

「……」

 何も言わずに、タローは戦いの跡を眺めた。
 少しして、後ろからタマコが近づき話しかける。

「終わったのぉ……」

「うん」

「強かったのぉ……」

「……うん」

 タローは勝利した。
 にもかかわらず、彼の表情は険しい。
 髪が乱れ、前髪が顔を隠す。

「……本当に、強かったよ」

 木々が消え去り、遮るものが無くなった森に風が強く吹き荒れる。
 その風がタローの髪を揺らすと、頬から赤い雫が一滴伝った。


 ――最後のランとジードの一撃は、少しだけタローの頬を掠めていた

 ――本当に、それだけだ

 ――けれどその一撃は、確かに届いていた



「子供の頃に転んで擦りむいた以来だよ……自分の血を見るのは――」


 これが、タローが冒険者になってから初めて負った傷であった。




 冒険者ラン・イーシン 脱落
 魔王リッカ=ジード=エメラルド 脱落
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