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魔剣争奪戦編
第76話 アキラ vs ムサシ
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油断などしていなかった。
少なくとも俺はいつでも動ける準備はしていたし、ムサシから目は離していなかった。
けれど、気付いた時にはすでにコイツの手には刀が握られていた。
アホな俺でも理解できる――
頬の熱さが、その力の差を過剰なくらいに伝えてくる――
「へっ、上等だぜコノヤロー……」
見え透いたハッタリをかまして、俺は拳に赤いオーラを纏わせた。
特に策は無ぇ。そういうのを考えんのは苦手だからな。
だが、これしか出来ねぇんなら、これで行くしかないだろうがッ!
***
「テメェから血祭りにしてやらぁあッッ!」
スキル――喧嘩上等。
素手で戦闘をしたときに、攻撃力と防御力を上昇させる。
(ムサシのスキルは知らねぇが、まずは一発だ!)
「うぉぉおおおおッッ!」
地面を蹴ると愚直に真っすぐ突っ走る。
スピードの勢いをそのままに、その剛拳をムサシへと繰り出した。
「うん。いい拳打だね」
抜刀していた刀を両手で握りしめる。
ムサシは特に勢いも付けず、ただ刀を前にして防御姿勢を取る。
キィィィン! という衝突音が広範囲に鳴り響いた。
周りに木々が生えていないせいか良く響くその音。
だがそれよりも驚くべきは、アキラの拳打を受けてムサシは一歩も後退していない点だ。
「ぐっ!」
「……」
決して手は抜いていない。
それなのにムサシは動じることもなく、ごく当たり前のように平然と受け止めてみせた。
拳と刃が火花を散らし鍔迫り合いになる中で、アキラはあることに気付く。
「オイ、ナメてんのか?」
「……なにがだい?」
「――ふざけんな! なぜ"峰"で受け止める!? 俺には斬る価値も無いってゆうのかよッ!」
惚けるムサシに、アキラはさらに強い口調で咎めた。
瞳孔が開き、額に血管が浮かび上がる。
確かにムサシは構える直前に刀を峰が外側になるように持ち替えていた。
アキラからすれば、ムサシが手心を加えたようにしか思えない。
「う~ん……そう言われてもなぁ……」
プライドの高いアキラの問いに対し、ムサシは一つ考えた。
そして口角を上げると、相貌に威嚇を込めてニヤリと笑う。
「こうしないと――死ぬぜ?」
瞬間だった。
黒の刀から異形の波動を感じ取る。
「ッ!?」
その強烈なインパクトにアキラの生存本能が反応した。
地面を削るほど強く踏むと、その身をムサシから遠く離す。
「………………」
退避してすぐのこと、自分の拳を見つめた。
強さに違いはあれど、その感覚に覚えがあったからだ。
「魔剣か?」
アキラが訊くと、ムサシはそれに頷く。
「憤怒の魔剣――刀の姿をした魔剣さ。僕にピッタリだろ?」
そう言うと、芸達者なのか器用に憤怒の魔剣をクルクルと回してみせる。
お茶らけて見える行動。
しかしその実、踏み込む隙はどこにも無い。
油断したと思い込み攻撃をくらわせようものなら、次は一刀で両断されるだろう。
だからアキラは不用意に踏み込むことはしなかった。
その落ち着きが、別の手心に対してイラつかせた。
「オイ」
「なんだい?」
「なんで――もう一本使わねぇんだ?」
アキラの視線の先には、ムサシの腰にある脇差があった。
その独特な雰囲気はムサシが今抜刀している打刀と同じもの。
つまり、この脇差も魔剣。
――憤怒の魔剣は、魔剣の中で唯一の"二刀流"の剣なのだ――
まさに二刀流の剣豪、宮本武蔵と同じ名である彼に相応しい武器。
であるはずだが、ムサシは二本ある憤怒の魔剣の一本しか使っていない。
おそらくムサシは二刀流を使える。
彼の姿勢、雰囲気、底知れぬ実力が、戦闘スタイルなど知らないはずのアキラに理解させた。
だからこそ、『二刀流を使わなくても勝てるという』という態度が気に入らない。
ムサシとの実力差を感じつつも、本気を出さないムサシが癇に障るのだ。
実力に差があっても、相手が本気なら本気で返す――
それがアキラの流儀であった。
「――お前は強い。だから俺も本気で行かせてもらうッッ!」
直後に赤いオーラは拳だけでなく全身を覆う。
鎧のように展開すると、アキラの目を赤く染めた。
「最大解放――喧嘩特攻!」
最大解放:<喧嘩特攻>
攻撃力と防御力に加えて、スピードも大幅に上昇する。
初見とはいえタローすらも、そのスピードに翻弄されたほどだ。
「すぐにもう一本も抜かしてやんよぉッッ!」
高速で駆け出すと、その場に赤いオーラの残像だけが残る。
そのスピードでムサシの背後へと回ると、もう一度拳を繰り出した。
だが――
「中々速いねぇ!」
ムサシはこのスピードに反応していた。
拳打が来る場所へ魔剣を置くと、少し後退はしたものの攻撃を受け止める。
「クソがッッ!」
次々に連打を浴びせるアキラだが、その全てを魔剣一本で防いでいく。
アキラの表情が険しくなる一方、ムサシはまるで遊んでいるのか余裕がある。
(だったら最大火力でブッ飛ばすッッ!)
このままでは最大解放の副作用で動けなくなってしまう。
一か八かの最強の一撃を放つことをアキラは決断した。
アキラは両足に全てのオーラを集中させ、更なる加速を試みる。
(ムサシの反応は大したもんだ。タローと同等以上だろう。
だが、さっきからアイツは受けてばかりだ! 躱すほどの余裕は無ぇッッ!)
アキラは勝機をスピードに委ね、どんどん速さを増していく。
土煙とオーラが舞い上がり、その姿を更に見えづらくした。
「これは……」
台風の目に入ったかのように、ムサシの周りは大量の砂嵐が舞う。
視界に頼れない中で、ついにアキラは動いた。
両足のオーラを右足一本に集中させて地を踏む。
その豪快な踏み込みは初速から最大速度を生んだ。
「――これで終わりだぁあッッ!」
右足のオーラを、今度は右腕に全て移動。
タローの再戦に備えて鍛えたおかげで、その威力は以前よりも上がっている。
凶暴で強力な一撃がムサシの顔面を――
「終わるのは君だ」
ムサシはアキラの攻撃地点ピンポイントにタイミングを合わせた。
両手で握られた憤怒の魔剣を、上段から勢いよく振り下ろした。
ザシュッ!
その音は、拳に刀が敗れる音。
Sランクでもトップクラスの強度を誇るアキラの防御力。
それを物ともせず、ムサシはアキラの右拳から肩までを切り伏せた。
「――ウソだろ……?」
訳が分からないという顔のアキラ。
痛みで藻掻くこともなく、ただ茫然と膝をついた。
そんな彼にムサシはゆっくり近づく。
「憤怒の魔剣の能力名は『断罪執行』――その力は"絶対切断"だ」
――断罪執行――
ありとあらゆる万物を、その刃で斬り伏せる。
地獄の長に相応しい能力。
それはまさに、魔王の断罪。
「アキラくん。そんな実力じゃ最強は程遠いぜ?」
「――ッ!」
「もう一度敗北して、自分を見つめ直しな」
それが最後に聞いた言葉だった。
刃で身体を貫かれると、アキラはダメージで強制転移となった。
静けさが戻った場所でムサシだけが残される。
「さて、と…………ん?」
ムサシが納刀すると、遠くで蒼雷が轟いた。
視線を向けてほどなく、空に青い龍が出現する。
そして、それに立ち向かう男が一人。
「ははっ! 面白いことになってるじゃん!」
ムサシはワクワクとその瞳を輝かせた。
先ほどまで戦っていたとは思えないほど、あっけらかんとした態度で。
ムサシ・ミヤモト――
この戦いで彼は、一度も本気を出さなかった――
この戦いで、一度もスキルを使わなかった――
冒険者アキラ・アマミヤ 脱落
少なくとも俺はいつでも動ける準備はしていたし、ムサシから目は離していなかった。
けれど、気付いた時にはすでにコイツの手には刀が握られていた。
アホな俺でも理解できる――
頬の熱さが、その力の差を過剰なくらいに伝えてくる――
「へっ、上等だぜコノヤロー……」
見え透いたハッタリをかまして、俺は拳に赤いオーラを纏わせた。
特に策は無ぇ。そういうのを考えんのは苦手だからな。
だが、これしか出来ねぇんなら、これで行くしかないだろうがッ!
***
「テメェから血祭りにしてやらぁあッッ!」
スキル――喧嘩上等。
素手で戦闘をしたときに、攻撃力と防御力を上昇させる。
(ムサシのスキルは知らねぇが、まずは一発だ!)
「うぉぉおおおおッッ!」
地面を蹴ると愚直に真っすぐ突っ走る。
スピードの勢いをそのままに、その剛拳をムサシへと繰り出した。
「うん。いい拳打だね」
抜刀していた刀を両手で握りしめる。
ムサシは特に勢いも付けず、ただ刀を前にして防御姿勢を取る。
キィィィン! という衝突音が広範囲に鳴り響いた。
周りに木々が生えていないせいか良く響くその音。
だがそれよりも驚くべきは、アキラの拳打を受けてムサシは一歩も後退していない点だ。
「ぐっ!」
「……」
決して手は抜いていない。
それなのにムサシは動じることもなく、ごく当たり前のように平然と受け止めてみせた。
拳と刃が火花を散らし鍔迫り合いになる中で、アキラはあることに気付く。
「オイ、ナメてんのか?」
「……なにがだい?」
「――ふざけんな! なぜ"峰"で受け止める!? 俺には斬る価値も無いってゆうのかよッ!」
惚けるムサシに、アキラはさらに強い口調で咎めた。
瞳孔が開き、額に血管が浮かび上がる。
確かにムサシは構える直前に刀を峰が外側になるように持ち替えていた。
アキラからすれば、ムサシが手心を加えたようにしか思えない。
「う~ん……そう言われてもなぁ……」
プライドの高いアキラの問いに対し、ムサシは一つ考えた。
そして口角を上げると、相貌に威嚇を込めてニヤリと笑う。
「こうしないと――死ぬぜ?」
瞬間だった。
黒の刀から異形の波動を感じ取る。
「ッ!?」
その強烈なインパクトにアキラの生存本能が反応した。
地面を削るほど強く踏むと、その身をムサシから遠く離す。
「………………」
退避してすぐのこと、自分の拳を見つめた。
強さに違いはあれど、その感覚に覚えがあったからだ。
「魔剣か?」
アキラが訊くと、ムサシはそれに頷く。
「憤怒の魔剣――刀の姿をした魔剣さ。僕にピッタリだろ?」
そう言うと、芸達者なのか器用に憤怒の魔剣をクルクルと回してみせる。
お茶らけて見える行動。
しかしその実、踏み込む隙はどこにも無い。
油断したと思い込み攻撃をくらわせようものなら、次は一刀で両断されるだろう。
だからアキラは不用意に踏み込むことはしなかった。
その落ち着きが、別の手心に対してイラつかせた。
「オイ」
「なんだい?」
「なんで――もう一本使わねぇんだ?」
アキラの視線の先には、ムサシの腰にある脇差があった。
その独特な雰囲気はムサシが今抜刀している打刀と同じもの。
つまり、この脇差も魔剣。
――憤怒の魔剣は、魔剣の中で唯一の"二刀流"の剣なのだ――
まさに二刀流の剣豪、宮本武蔵と同じ名である彼に相応しい武器。
であるはずだが、ムサシは二本ある憤怒の魔剣の一本しか使っていない。
おそらくムサシは二刀流を使える。
彼の姿勢、雰囲気、底知れぬ実力が、戦闘スタイルなど知らないはずのアキラに理解させた。
だからこそ、『二刀流を使わなくても勝てるという』という態度が気に入らない。
ムサシとの実力差を感じつつも、本気を出さないムサシが癇に障るのだ。
実力に差があっても、相手が本気なら本気で返す――
それがアキラの流儀であった。
「――お前は強い。だから俺も本気で行かせてもらうッッ!」
直後に赤いオーラは拳だけでなく全身を覆う。
鎧のように展開すると、アキラの目を赤く染めた。
「最大解放――喧嘩特攻!」
最大解放:<喧嘩特攻>
攻撃力と防御力に加えて、スピードも大幅に上昇する。
初見とはいえタローすらも、そのスピードに翻弄されたほどだ。
「すぐにもう一本も抜かしてやんよぉッッ!」
高速で駆け出すと、その場に赤いオーラの残像だけが残る。
そのスピードでムサシの背後へと回ると、もう一度拳を繰り出した。
だが――
「中々速いねぇ!」
ムサシはこのスピードに反応していた。
拳打が来る場所へ魔剣を置くと、少し後退はしたものの攻撃を受け止める。
「クソがッッ!」
次々に連打を浴びせるアキラだが、その全てを魔剣一本で防いでいく。
アキラの表情が険しくなる一方、ムサシはまるで遊んでいるのか余裕がある。
(だったら最大火力でブッ飛ばすッッ!)
このままでは最大解放の副作用で動けなくなってしまう。
一か八かの最強の一撃を放つことをアキラは決断した。
アキラは両足に全てのオーラを集中させ、更なる加速を試みる。
(ムサシの反応は大したもんだ。タローと同等以上だろう。
だが、さっきからアイツは受けてばかりだ! 躱すほどの余裕は無ぇッッ!)
アキラは勝機をスピードに委ね、どんどん速さを増していく。
土煙とオーラが舞い上がり、その姿を更に見えづらくした。
「これは……」
台風の目に入ったかのように、ムサシの周りは大量の砂嵐が舞う。
視界に頼れない中で、ついにアキラは動いた。
両足のオーラを右足一本に集中させて地を踏む。
その豪快な踏み込みは初速から最大速度を生んだ。
「――これで終わりだぁあッッ!」
右足のオーラを、今度は右腕に全て移動。
タローの再戦に備えて鍛えたおかげで、その威力は以前よりも上がっている。
凶暴で強力な一撃がムサシの顔面を――
「終わるのは君だ」
ムサシはアキラの攻撃地点ピンポイントにタイミングを合わせた。
両手で握られた憤怒の魔剣を、上段から勢いよく振り下ろした。
ザシュッ!
その音は、拳に刀が敗れる音。
Sランクでもトップクラスの強度を誇るアキラの防御力。
それを物ともせず、ムサシはアキラの右拳から肩までを切り伏せた。
「――ウソだろ……?」
訳が分からないという顔のアキラ。
痛みで藻掻くこともなく、ただ茫然と膝をついた。
そんな彼にムサシはゆっくり近づく。
「憤怒の魔剣の能力名は『断罪執行』――その力は"絶対切断"だ」
――断罪執行――
ありとあらゆる万物を、その刃で斬り伏せる。
地獄の長に相応しい能力。
それはまさに、魔王の断罪。
「アキラくん。そんな実力じゃ最強は程遠いぜ?」
「――ッ!」
「もう一度敗北して、自分を見つめ直しな」
それが最後に聞いた言葉だった。
刃で身体を貫かれると、アキラはダメージで強制転移となった。
静けさが戻った場所でムサシだけが残される。
「さて、と…………ん?」
ムサシが納刀すると、遠くで蒼雷が轟いた。
視線を向けてほどなく、空に青い龍が出現する。
そして、それに立ち向かう男が一人。
「ははっ! 面白いことになってるじゃん!」
ムサシはワクワクとその瞳を輝かせた。
先ほどまで戦っていたとは思えないほど、あっけらかんとした態度で。
ムサシ・ミヤモト――
この戦いで彼は、一度も本気を出さなかった――
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冒険者アキラ・アマミヤ 脱落
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