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最終章・転生勇者編
第151話 食うか食われるか
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魔剣争奪戦以降、アリスは自身の力を2つ強化する鍛錬を積んだ。
まずは胃袋を大きくすること。
タローとの戦いでは先に満腹になってしまったのをきっかけに、あれからさらにその食欲を増したのである。
そして、もう一つはタローとムサシの激闘を観戦して、関心を持った能力。
『……第四段階……防御貫通、か』
七振りの魔剣に共通する能力の一つにして、今確認されている中で最も到達に難しいとされている能力だ。
防御力に差があるとその分ダメージが通りづらくなるが、この能力を使えばどんな敵も等しく倒せる。
すなわち。――
(……あれが出来れば、アリスはもっと食べられる!)
それからというもの、アリスは暴食の魔剣と向き合い続けた。
満腹になったあの時、持ち主であるアリスを喰おうとした魔剣。
最初は恐れを抱いてまともに剣を握ることが出来なくなってしまっていた。
が、その恐怖に立ち向かい、能力の会得を試み続けた。
何度も何度も挑戦し、失敗を繰り返す日々。
それでも諦めなかったのは、アリスの飽く無き食への渇望。そして、王子への想いに他ならない。
(……王子。絶対あなたに追いついて見せるわ!)
いつの日か、タローの横に自分が立てるように、アリスは努力を重ねたのだ。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
ユウシのステータスは、防御力を除いてアリスを全てを上回っている。
しかし、アリスはユウシに傷を与えられたのだ。この結果からアリスの努力の成果は理解できるであろう。
「……いい子だね、暴食の魔剣」
微笑みながら魔剣を撫でて可愛がる。
第四段階を覚えてからアリスは、暴食の魔剣を愛しいと思うようになり、こうして何かと褒めるようになったのだ。
効果があるかはわからないが、心なしか暴食の魔剣は喜んでいるように見えなくも無かった。
「……いい子いい子ー」
よしよしと撫で続けるアリス。
その目の前で、跪きつつも男は起き上がった。
「ふぅー……ふぅー……」
痛みを少しでも和らげようと、ゆっくりと深呼吸をする。
幾分か落ち着くと、アリスに向き直りつつ距離を取った。
背中からはまだ血が溢れている。激痛は背中を走り続けており、油断すればまた意識を失いそうだ。
しかしその痛みが、逆にユウシを覚醒させたのである。
(痛みで頭が冴えてきた。さっきよりも見えるぞ!)
転生前は心霊系は苦手だったユウシ。それは今でも続いており、アリスを見たときに思わず恐怖が込み上げてきてしまった。
そのせいで視界と思考が鈍り、後れを取ってしまったのである。
自分を律したつもりでいたが、まだまだだとユウシは反省する。
だが、もう大丈夫だ。
「今度は見切ってやる……ッ!」
さっきより目つきが鋭くなった。
怯えているような様子も無く、その風貌は勇者そのものである。
アリスも変化に気付いており、警戒を強めた。
「……つぎでおわらせる」
アリスはもう一度両腕をだらりと下げると、ゆらゆらと身体を揺らし始めた。
ゆらゆら、ゆらゆらと、まるで操り手のいないマリオネットのように、その身体を揺らす。
相変わらずこちらの恐怖を煽る動きだが、ユウシはその真価に気付いた。
(そうか。速さの正体は、あの脱力によるものか!)
アリスのスピードは、初速の速さにある。
スピードを生み出すのに必要なのはいかに早く筋肉を収縮するかである。
そしてそのスピードを出すためには筋肉を一度脱力する必要があるのだ。
不気味な動きに目を奪われがちだが、その実アリスは限界まで体から力を抜き、そこから一気に力を籠めることで、爆発的な瞬発力を出すことに成功させたのである。
そこへ、第三段階の身体強化を加えることで、更なる速度を生みだしていたのだ。
「……いくよ」
アリスは一言発すると、再び姿を消した。
少女とは到底思えぬその速さには驚くばかりだ。
が、対応できない速さではない。
(たしかに速い。だが、あの青い龍人よりは遅い!)
初見では恐怖で視界が狭まり見切れなかったが、解放された今なら余裕がある。
横から来たアリスを視界に捉えると、振り下ろされた魔剣を盾で受け止めた。
「……へぇ」
暴食の魔剣を受け止められ、わずかに眉をピクリと動かした。
そこへ、ユウシは剣による刺突を放った。
「……やるじゃん」
鋭利な刃が迫る中でもアリスは冷静だった。
暴食の魔剣を瞬時に引っ込めると、盾を足蹴にして後方へ大きく跳んだ。
ギリギリでアリスには当たらず、勇者の剣は空を切る結果となった。
「……あなた、思ったより強いのね」
「それはどうも」
「……それに、あなたの魔力は美味しいみたい」
「どういう意味だ?」
「……すぐに、わかるよ!」
アリスは再度駆け出す。
ユウシはアリスの台詞に疑問を浮かべつつ迎え撃った。
ガキン! ガキン! と刃がぶつかり合う
そして幾度目かの接触で、ユウシは違和感に気付いた。
「ッ! 魔力を喰っているのか!?」
不意に感じた脱力感。
内側から吸い取られるような感覚を覚え、その答えに辿り着く。
「……せいかい」とアリスもそれに肯定した。
(暴食の魔剣か。なるほど、"暴食"の名を冠する悪魔らしい能力だ!
とすれば、まともに受けるのは得策ではない、か)
剣や盾で受け止めては、いずれジリ貧になる。
ユウシは回避に徹しようと試みた。が、そう上手くはいかない。
「……うふふ、逃がさないよ?」
アリスは強化した身体能力をフルに活用し、高速で魔剣を振るう。
して、その動きは、まさに悪魔じみていた。
「ぐっ! なんて体の柔らかさだッ!?」
ユウシはその動きに驚愕していた。
というのも、アリスは関節が以上に柔らかいのだ。そのため、常識では考えられない、人体の構造上ありえない方向から攻撃が飛んでくるのである。
そのためユウシも思わず武器での防御を行ってしまっていた。
そこへ、追い打ちをかけるようにさらなる能力が発動される。
「――……食欲旺盛」
アリスは繰り出される攻撃の中で、ユウシに掴みかかった。
その瞬間、ユウシはさらなる脱力感に襲われた。
「今度は、ステータスか!」
すぐさま、その能力に気付いた。
アリスのスキル:食欲旺盛は、相手に直接触れることでステータスを食らうことが出来る。
前回はスキルと魔剣を同時に併用したことにより、満腹となり敗北を喫した。
しかし、胃袋を更に大きくしたアリスはそれを克服。今では何の弊害も無いに等しいのである。
尚且つ、その一口は以前より大きくなっている。
一度手で触れれば、一度刃が触れれば、瞬く間に大量の魔力とステータスを持っていかれてしまうのだ。
その結果、ユウシのステータスは、あっという間に減少していったのである。
「……ふぅー」
攻撃の横行が止むと、アリスは一つ息を吐き、ユウシを人睨みした。
「……お腹、一分目かな?」
ユウシのステータスは他のSランク冒険者と比べても膨大だ。
それに対し、腹一分目ときたら、もう笑うしかなかった。
「随分と、わんぱくな少女だな」
____________
現在のステータス
ステータス:
LEVEL:72
攻撃力:22000→9600(-12400)
防御力:20000→9700(-10300)
速度:21400→9500(-11900)
魔力:28004→10700(-17304)
知力:1700→1500(-200)
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タローとの戦いでは先に満腹になってしまったのをきっかけに、あれからさらにその食欲を増したのである。
そして、もう一つはタローとムサシの激闘を観戦して、関心を持った能力。
『……第四段階……防御貫通、か』
七振りの魔剣に共通する能力の一つにして、今確認されている中で最も到達に難しいとされている能力だ。
防御力に差があるとその分ダメージが通りづらくなるが、この能力を使えばどんな敵も等しく倒せる。
すなわち。――
(……あれが出来れば、アリスはもっと食べられる!)
それからというもの、アリスは暴食の魔剣と向き合い続けた。
満腹になったあの時、持ち主であるアリスを喰おうとした魔剣。
最初は恐れを抱いてまともに剣を握ることが出来なくなってしまっていた。
が、その恐怖に立ち向かい、能力の会得を試み続けた。
何度も何度も挑戦し、失敗を繰り返す日々。
それでも諦めなかったのは、アリスの飽く無き食への渇望。そして、王子への想いに他ならない。
(……王子。絶対あなたに追いついて見せるわ!)
いつの日か、タローの横に自分が立てるように、アリスは努力を重ねたのだ。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
ユウシのステータスは、防御力を除いてアリスを全てを上回っている。
しかし、アリスはユウシに傷を与えられたのだ。この結果からアリスの努力の成果は理解できるであろう。
「……いい子だね、暴食の魔剣」
微笑みながら魔剣を撫でて可愛がる。
第四段階を覚えてからアリスは、暴食の魔剣を愛しいと思うようになり、こうして何かと褒めるようになったのだ。
効果があるかはわからないが、心なしか暴食の魔剣は喜んでいるように見えなくも無かった。
「……いい子いい子ー」
よしよしと撫で続けるアリス。
その目の前で、跪きつつも男は起き上がった。
「ふぅー……ふぅー……」
痛みを少しでも和らげようと、ゆっくりと深呼吸をする。
幾分か落ち着くと、アリスに向き直りつつ距離を取った。
背中からはまだ血が溢れている。激痛は背中を走り続けており、油断すればまた意識を失いそうだ。
しかしその痛みが、逆にユウシを覚醒させたのである。
(痛みで頭が冴えてきた。さっきよりも見えるぞ!)
転生前は心霊系は苦手だったユウシ。それは今でも続いており、アリスを見たときに思わず恐怖が込み上げてきてしまった。
そのせいで視界と思考が鈍り、後れを取ってしまったのである。
自分を律したつもりでいたが、まだまだだとユウシは反省する。
だが、もう大丈夫だ。
「今度は見切ってやる……ッ!」
さっきより目つきが鋭くなった。
怯えているような様子も無く、その風貌は勇者そのものである。
アリスも変化に気付いており、警戒を強めた。
「……つぎでおわらせる」
アリスはもう一度両腕をだらりと下げると、ゆらゆらと身体を揺らし始めた。
ゆらゆら、ゆらゆらと、まるで操り手のいないマリオネットのように、その身体を揺らす。
相変わらずこちらの恐怖を煽る動きだが、ユウシはその真価に気付いた。
(そうか。速さの正体は、あの脱力によるものか!)
アリスのスピードは、初速の速さにある。
スピードを生み出すのに必要なのはいかに早く筋肉を収縮するかである。
そしてそのスピードを出すためには筋肉を一度脱力する必要があるのだ。
不気味な動きに目を奪われがちだが、その実アリスは限界まで体から力を抜き、そこから一気に力を籠めることで、爆発的な瞬発力を出すことに成功させたのである。
そこへ、第三段階の身体強化を加えることで、更なる速度を生みだしていたのだ。
「……いくよ」
アリスは一言発すると、再び姿を消した。
少女とは到底思えぬその速さには驚くばかりだ。
が、対応できない速さではない。
(たしかに速い。だが、あの青い龍人よりは遅い!)
初見では恐怖で視界が狭まり見切れなかったが、解放された今なら余裕がある。
横から来たアリスを視界に捉えると、振り下ろされた魔剣を盾で受け止めた。
「……へぇ」
暴食の魔剣を受け止められ、わずかに眉をピクリと動かした。
そこへ、ユウシは剣による刺突を放った。
「……やるじゃん」
鋭利な刃が迫る中でもアリスは冷静だった。
暴食の魔剣を瞬時に引っ込めると、盾を足蹴にして後方へ大きく跳んだ。
ギリギリでアリスには当たらず、勇者の剣は空を切る結果となった。
「……あなた、思ったより強いのね」
「それはどうも」
「……それに、あなたの魔力は美味しいみたい」
「どういう意味だ?」
「……すぐに、わかるよ!」
アリスは再度駆け出す。
ユウシはアリスの台詞に疑問を浮かべつつ迎え撃った。
ガキン! ガキン! と刃がぶつかり合う
そして幾度目かの接触で、ユウシは違和感に気付いた。
「ッ! 魔力を喰っているのか!?」
不意に感じた脱力感。
内側から吸い取られるような感覚を覚え、その答えに辿り着く。
「……せいかい」とアリスもそれに肯定した。
(暴食の魔剣か。なるほど、"暴食"の名を冠する悪魔らしい能力だ!
とすれば、まともに受けるのは得策ではない、か)
剣や盾で受け止めては、いずれジリ貧になる。
ユウシは回避に徹しようと試みた。が、そう上手くはいかない。
「……うふふ、逃がさないよ?」
アリスは強化した身体能力をフルに活用し、高速で魔剣を振るう。
して、その動きは、まさに悪魔じみていた。
「ぐっ! なんて体の柔らかさだッ!?」
ユウシはその動きに驚愕していた。
というのも、アリスは関節が以上に柔らかいのだ。そのため、常識では考えられない、人体の構造上ありえない方向から攻撃が飛んでくるのである。
そのためユウシも思わず武器での防御を行ってしまっていた。
そこへ、追い打ちをかけるようにさらなる能力が発動される。
「――……食欲旺盛」
アリスは繰り出される攻撃の中で、ユウシに掴みかかった。
その瞬間、ユウシはさらなる脱力感に襲われた。
「今度は、ステータスか!」
すぐさま、その能力に気付いた。
アリスのスキル:食欲旺盛は、相手に直接触れることでステータスを食らうことが出来る。
前回はスキルと魔剣を同時に併用したことにより、満腹となり敗北を喫した。
しかし、胃袋を更に大きくしたアリスはそれを克服。今では何の弊害も無いに等しいのである。
尚且つ、その一口は以前より大きくなっている。
一度手で触れれば、一度刃が触れれば、瞬く間に大量の魔力とステータスを持っていかれてしまうのだ。
その結果、ユウシのステータスは、あっという間に減少していったのである。
「……ふぅー」
攻撃の横行が止むと、アリスは一つ息を吐き、ユウシを人睨みした。
「……お腹、一分目かな?」
ユウシのステータスは他のSランク冒険者と比べても膨大だ。
それに対し、腹一分目ときたら、もう笑うしかなかった。
「随分と、わんぱくな少女だな」
____________
現在のステータス
ステータス:
LEVEL:72
攻撃力:22000→9600(-12400)
防御力:20000→9700(-10300)
速度:21400→9500(-11900)
魔力:28004→10700(-17304)
知力:1700→1500(-200)
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