3 / 14
3話 穴ありました~!
しおりを挟む
ここがどのくらい広い森なのか分からない。迷子になりそうな予感がした。
後で元の場所にちゃんと帰ってこられるように何か目印になるようなものはないか? とキョロキョロしながら進んでいくと、木の下に赤い立派な傘を広げたキノコ達を発見した。
これを道すがらちぎって落としていこう!
ファンタジーの世界だなぁ、としみじみ思いながら、キノコの傘をちぎっては森に落としていく。
どれくらい歩いて来たのかな……?
時計がないので経過時間は分からなかったが、十五~二十分はゆうに経ってるような気がした。
なんとか私はあの小さな灯りを頼りにその場所までたどり着いた。
驚いたことに、その小さな灯りは木の枝にぶら下がっていた。
いや、灯りが勝手に枝にぶら下がっているのではなく、ランタンがぶら下がっているのだ。
「すごい、アンティーク!」
私は感嘆の声を上げた。
ゲームの中だと分かってはいても、いちいち感動してしまう。
そのランタンは、現代では見ることのない代物で鉄製の持ち手がついており、同じく鉄製のフレームにはすりガラスが嵌め込まれていてその中に蝋燭の火が瞬いていた。
当時はそれが主流なのだろうが、現代人の私にはとても珍しく感じた。
その温かなオレンジ色の火に私は近付いていった。まるで光に魅せられた蛾のように。
ーーだが、
「ひぁあっ!!!!」
足を一歩ランタンへ向かって踏み出した途端、私の片足は空をかいた。
身体は完全にバランスを崩し、前のめりで気味に落下した。
そこに落とし穴があったのだ。
私は穴の底でおでこと鼻を強打した。ついでに膝頭もかなり痛い。
「誰よっ! こんなところに穴を掘るなんて!!」
私は流石にキレた。
普通、こういった危険な場所には立ち入り禁止のポールやらロープやらで囲まれていて、他の人が入れなくしてあるのもだ。
この穴がもし土じゃなく、コンクリートで出来ていたらと考えただけでもゾワッとする。
穴に落下した拍子に、打ちどころが悪くて亡くなることも大いに有り得るのだ。
取りあえず、この穴が土で出来ていて良かった~!!
そう思わずにはいられない。
私は悪態をつきながら、穴の底で四つん這いになると上体を起こした。
落ちた穴はそれほど深くはなかった。
そして、おやっ? と思った。
「この形って……!?」
今気付いたのだが、この穴は長方形をしていた。穴の深さは私のアパートの風呂場にある浴槽と同じぐらい。
この穴は何なのだ??
偶然にも死体を埋める為の穴を欲している時に、ふってわいたかのような最適な穴を見つけた。
天の恵み……!?
自分で穴が掘れないのなら、この穴を利用しない手はない。
だけど、誰が何のために準備していた穴なのだろう?
不可解な穴であることは間違いない。
灯りのついたランタンがあるなら、穴を掘った人物も周りにいそうなものだが見当たらなかった。
……どうする??
少しの間、私は考えを巡らせた。
これはゲームの世界だし、悩んでも仕方ないや……。さっさとミアの死体を運んでこの穴に埋めてしまおう。
私は穴から出ると、森に落としてきたキノコの欠片を辿ってミアのいる場所まで戻っていった。
ミアと肩を組み、よろけながらも死体を運んだ。こんな時はミアの死体が自分で穴まで歩いて行ってくれたら、どんなに楽だろうかと思った。
魂の抜けた人の身体はこんなにも重いものなのかとつくづく思い知らされたのだ。
そして、私は先ほど見つけた丁度良い穴にミアを寝かせると、その上にどんどん土を被せていった。
ミアの姿が完全に隠れてしまうと、もう私の中にあったささやかな罪悪感は消え失せていた。
「ふぅ……、疲れたなぁ~」
その場にどっこらしょ、と座り込む。
大好きなゲームの世界へ転生したというのに、初っぱなから悪役令嬢を殺してしまい、森に埋めるという後味の悪いことばかりをしてきている。
おそらく、自分はこのゲームの主人公に転生してはいない。ゲーム中の主人公のイベントにこんな場面はないからだ。
……主人公ではないとすると、私は一体誰に転生したのだろう??
私はゲームに出てくる女性キャラの顔を順に頭に思い浮かべてみた。
「鏡でもあれば、すぐに分かるのに」
スコップの時と同じだったが、こんな森の中に民家さえ見当たらないのに鏡なんて物があるはずもない。
それに、中世の頃は鏡も高級品だったはずだから、そうそう巷でお目にかかれないだろう。
自分の姿が見てみたい……!
そう思うのにすぐには見れそうになかった。
中世って不便なことばっかり……。
私はため息をついて項垂れるしかなかった。
ーーパキッ、
私はハッとした。
遠くの方で地面の小枝か何かを踏みしめたような音がした。灯りを見つけて人がこちらに向かってきているようだ。
私の心はざわついた。
ミアの死体は完全に埋めてしまったが、この状況を人に見られたくない。
慌てて立ち上がると枝にぶら下がっているランタンをこじ開け、息をふいて蝋燭の火を消した。すると、スッと暗闇の幕が下りた。
近くの茂みに姿を隠して、私はそっと耳をそばたてる。
サクッ、サクッ、と地面を踏む音がどんどんこちらへ近づいてくる。誰かがこちらに向かってきているのは間違いなかった。
恋をしているわけでもないのに、勝手に胸がドキドキした。
誰だろう……? 私でも分かるゲームキャラだといいけれど……。
拝むような気持ちでその人物が姿を現すのを茂みの中で恐々と待った。
※※ここまで読んでくださってありがとうございます!
続きが気になる方は、
⭐お気に入り登録してもらえると励みになります。※※
後で元の場所にちゃんと帰ってこられるように何か目印になるようなものはないか? とキョロキョロしながら進んでいくと、木の下に赤い立派な傘を広げたキノコ達を発見した。
これを道すがらちぎって落としていこう!
ファンタジーの世界だなぁ、としみじみ思いながら、キノコの傘をちぎっては森に落としていく。
どれくらい歩いて来たのかな……?
時計がないので経過時間は分からなかったが、十五~二十分はゆうに経ってるような気がした。
なんとか私はあの小さな灯りを頼りにその場所までたどり着いた。
驚いたことに、その小さな灯りは木の枝にぶら下がっていた。
いや、灯りが勝手に枝にぶら下がっているのではなく、ランタンがぶら下がっているのだ。
「すごい、アンティーク!」
私は感嘆の声を上げた。
ゲームの中だと分かってはいても、いちいち感動してしまう。
そのランタンは、現代では見ることのない代物で鉄製の持ち手がついており、同じく鉄製のフレームにはすりガラスが嵌め込まれていてその中に蝋燭の火が瞬いていた。
当時はそれが主流なのだろうが、現代人の私にはとても珍しく感じた。
その温かなオレンジ色の火に私は近付いていった。まるで光に魅せられた蛾のように。
ーーだが、
「ひぁあっ!!!!」
足を一歩ランタンへ向かって踏み出した途端、私の片足は空をかいた。
身体は完全にバランスを崩し、前のめりで気味に落下した。
そこに落とし穴があったのだ。
私は穴の底でおでこと鼻を強打した。ついでに膝頭もかなり痛い。
「誰よっ! こんなところに穴を掘るなんて!!」
私は流石にキレた。
普通、こういった危険な場所には立ち入り禁止のポールやらロープやらで囲まれていて、他の人が入れなくしてあるのもだ。
この穴がもし土じゃなく、コンクリートで出来ていたらと考えただけでもゾワッとする。
穴に落下した拍子に、打ちどころが悪くて亡くなることも大いに有り得るのだ。
取りあえず、この穴が土で出来ていて良かった~!!
そう思わずにはいられない。
私は悪態をつきながら、穴の底で四つん這いになると上体を起こした。
落ちた穴はそれほど深くはなかった。
そして、おやっ? と思った。
「この形って……!?」
今気付いたのだが、この穴は長方形をしていた。穴の深さは私のアパートの風呂場にある浴槽と同じぐらい。
この穴は何なのだ??
偶然にも死体を埋める為の穴を欲している時に、ふってわいたかのような最適な穴を見つけた。
天の恵み……!?
自分で穴が掘れないのなら、この穴を利用しない手はない。
だけど、誰が何のために準備していた穴なのだろう?
不可解な穴であることは間違いない。
灯りのついたランタンがあるなら、穴を掘った人物も周りにいそうなものだが見当たらなかった。
……どうする??
少しの間、私は考えを巡らせた。
これはゲームの世界だし、悩んでも仕方ないや……。さっさとミアの死体を運んでこの穴に埋めてしまおう。
私は穴から出ると、森に落としてきたキノコの欠片を辿ってミアのいる場所まで戻っていった。
ミアと肩を組み、よろけながらも死体を運んだ。こんな時はミアの死体が自分で穴まで歩いて行ってくれたら、どんなに楽だろうかと思った。
魂の抜けた人の身体はこんなにも重いものなのかとつくづく思い知らされたのだ。
そして、私は先ほど見つけた丁度良い穴にミアを寝かせると、その上にどんどん土を被せていった。
ミアの姿が完全に隠れてしまうと、もう私の中にあったささやかな罪悪感は消え失せていた。
「ふぅ……、疲れたなぁ~」
その場にどっこらしょ、と座り込む。
大好きなゲームの世界へ転生したというのに、初っぱなから悪役令嬢を殺してしまい、森に埋めるという後味の悪いことばかりをしてきている。
おそらく、自分はこのゲームの主人公に転生してはいない。ゲーム中の主人公のイベントにこんな場面はないからだ。
……主人公ではないとすると、私は一体誰に転生したのだろう??
私はゲームに出てくる女性キャラの顔を順に頭に思い浮かべてみた。
「鏡でもあれば、すぐに分かるのに」
スコップの時と同じだったが、こんな森の中に民家さえ見当たらないのに鏡なんて物があるはずもない。
それに、中世の頃は鏡も高級品だったはずだから、そうそう巷でお目にかかれないだろう。
自分の姿が見てみたい……!
そう思うのにすぐには見れそうになかった。
中世って不便なことばっかり……。
私はため息をついて項垂れるしかなかった。
ーーパキッ、
私はハッとした。
遠くの方で地面の小枝か何かを踏みしめたような音がした。灯りを見つけて人がこちらに向かってきているようだ。
私の心はざわついた。
ミアの死体は完全に埋めてしまったが、この状況を人に見られたくない。
慌てて立ち上がると枝にぶら下がっているランタンをこじ開け、息をふいて蝋燭の火を消した。すると、スッと暗闇の幕が下りた。
近くの茂みに姿を隠して、私はそっと耳をそばたてる。
サクッ、サクッ、と地面を踏む音がどんどんこちらへ近づいてくる。誰かがこちらに向かってきているのは間違いなかった。
恋をしているわけでもないのに、勝手に胸がドキドキした。
誰だろう……? 私でも分かるゲームキャラだといいけれど……。
拝むような気持ちでその人物が姿を現すのを茂みの中で恐々と待った。
※※ここまで読んでくださってありがとうございます!
続きが気になる方は、
⭐お気に入り登録してもらえると励みになります。※※
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる