マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#348 グレースの実家へ

「ふぅ……」


 ここは教国の富裕層が居を構えるエリア。

 そのエリアの中にある一つの屋敷の前で、意思を固めるような息を吐いているのは、グレースだった。


「グレースさん、大丈夫ですか?」

「無理はせんでな~」

「ふふ、ご心配ありがとうございます、シュージさん、カグラさん」


 そんなグレースの横にはシュージとカグラもいた。


「むしろ、ついてきてくださった事にこちらが礼を言いたいくらいです」

「少し思い詰めたような表情してたからね~。 それに、普段から僕らもグレースに世話になってるから、挨拶しときたいし」


 カグラの言葉で察せられるように、今3人がいるのは、グレースの実家の前なのだ。

 先日、シュージがグレースと一緒にいた時に、グレース自身が実家に赴く事を教えてくれただが、今朝朝食でグレースを見かけた時に、少し思い詰めた表情を浮かべており、同じようにグレースの表情が気になったカグラと共に、グレースが良かったら一緒に行こうかと声をかけたのだ。

 すると、グレースはちょっと申し訳なさそうにしつつも、ありがたい提案だったのかそれを了承し、今に至るというわけだ。


「では、行きましょうか」


 そして、グレースは意を決したような表情を浮かべながら、屋敷の前に立っている門番の者へと近づいていった。


「ご苦労様です」

「あっ、グレース様っ! お帰りなさいませっ」


 門番にグレースが声をかけると、顔見知りだったのか、門番はすぐにグレースを恭しい態度で出迎えてくれた。


「えっと、そちらの方々は?」

「私が所属するギルドの仲間の方々です。 折角なら紹介と挨拶をしたいと申してくれまして」

「なるほど、分かりました。 では、中へどうぞ」


 グレースがシュージとカグラの事を紹介してくれたおかげで、シュージ達も変に疑われる事なく門を通る事ができ、少し歩くと屋敷の入口まで辿り着いた。

 案内してくれた門番の人が入口の扉を開けると、いつから待っていたのか、屋敷に勤めるメイドさんや執事の人達が入口近くで軽く頭を下げながら道を作るように整列していた。

 そして、その道の先には、少しふくよかな体型をした初老の貴人と、グレースがそのまま歳を重ねたような風貌をした貴婦人が立っていた。


「おぉ、おかえり、グレース!」

「よく来てくれましたね」

「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」

「お父様、お母様、それに家臣の皆様まで…… ただいま戻りました」


 それはまさに歓待といった感じの出迎えで、グレースの両親も笑顔でグレースに声をかけてくれたが、シュージにはちょっと家族らしくない気遣いの色が目に取れた。

 グレースも嬉しそうは嬉しそうではあるが、その表情には少しだけ陰が差しているように見える。


「おや、そちらのお二方は?」

「こちらは蒼天の風のお仲間のシュージさんとカグラさんです」

「おお、そうかそうか。 思えば、蒼天の風の人とは話した事が無かったな…… 私はグレースの父で、このトレイル伯爵家の家長であるヒノスクだ」

「私はグレースの母のアーネス・トレイルです。 お会いできて嬉しいですわ」


 と、グレースの両親であるヒノスクとアーネスがシュージ達を歓迎しながら自己紹介をしてくれた。

 なので、シュージとカグラも改めて自己紹介をし、立ったままというのも話しづらいので、一行は屋敷の中にある、リラックスして話せそうな場所であるサロンにやって来た。


「祭りは楽しんでいるかい、グレース?」


 そこではまず、ヒノスクが今開催されている祭りについて聞いてきた。
 

「はい。 久しぶりに参加しましたが、とても楽しいです」

「それは良かった。 ……一番楽しいであろう時期は私達が奪ってしまったからね」

「そんな事……」

「一番楽しい時期というと~?」


 発言の意味が分からなかったカグラが素直にそう尋ねた。


「祭りは聖女達にとって、とても思い出に残るような催しです。 その中でも、聖女が披露するダンスと演奏会は特に華やかで楽しいものなのですが、婚約者がいる聖女はそれには参加できないのですよ」


 アーネスがそう詳しく説明をしてくれた。

 どうやら、婚約者がいる身で大衆の前で踊ったりするのは、外聞が悪いそうだ。


「グレースは丁度聖女がダンスや演奏会に参加できる15歳の頃に婚約が決まっていたから、結局一度もそれらに参加はできなかった。 そうなると、周りの聖女ともそれらについての話ができず、どうしても距離が空いてしまう…… 本当に済まなかったね」

「お父様…… それについてはもう何度も謝罪を受けましたから」

「グレース、本当にごめんなさいね……」

「お母様まで……」


 やはりシュージが聞いていた通り、ヒノスクもアーネスもグレースに相当申し訳なさを感じているようで、グレースに対してしきりに謝ってきた。

 グレースはそれに対して、謝罪は必要ないと言うが、気を遣わせてしまっているとヒノスクとアーネスは感じてしまうようで、それに対しても申し訳なさそうにしていた。


「少しいいですか?」


 そんなグレース達家族を見かねて、シュージが間に入るようにして声をかけた。


「折角の訪問という事で、実はちょっとしたお菓子を作ってきまして。 良ければ皆さんで一緒に食べませんか?」

「あ、ああ、そうなんだね。 ありがとう、シュージ君。 ありがたくいただくよ」


 ヒノスクは暗くなってしまった雰囲気をなんとかしようと、努めて明るく振る舞い、お菓子を食べるためのお皿などを用意するよう、メイド達に指示を出していった。
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