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1 ヤリチンのはやちん
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久々に会った幼馴染みの羽生田崇史は、ドアを開けた途端に桑折早都の部屋の玄関に唐突に膝から崩れ落ちた。泣きそうな顔で眉をへの字にして今にも目からは涙が零れ落ちそうだ。イケメンが台なしになっていればよかったのだが、そんな顔をしていても悔しいけれどイケメンなのだから腹が立つ。
「女の子と遊ぶのは許せたけど、まさかちょっと仕事が忙しくて会わない間に男に掘られちゃうとは思わなかったぁぁぁ……」
挨拶も早々に崇史は言った。
「へあっ?! 掘らっ……?? 何てこと言うんだ! 掘られてない! 俺は乗っかられたの!」
我ながら何ちゅー発言だ、と思いながら早都は崇史の言葉に返した。
「よ、良かった……ヤリチンのはやちんの処女が奪われたわけじゃなくて……いや、でも男とのハジメテを奪われたわけで……」
床を見つめながら玄関先で膝をついてぶつぶつ言っている崇史の頭を、早都は思いっきりどついた。
「だからそのはやちんって呼び方やめろよ。俺その呼び方のせいで学生時代何も知らんやつに早漏だと思われてたんだからな!」
高校時代に変な噂になった恨みは忘れない。
早都と崇史はドがつく田舎の出身で、ずっとご近所さんで、更に高校で一緒に上京して、以降もずっと定期的に連絡し合っている腐れ縁ではあるのだが、かたや良家のイケメンお坊ちゃん、かたやただの田舎の一家族の平凡な男で、早都には勝ち目はないのだ。
「いや、はやちんはそんなにもたないだろ。はやちんとやった子が言ってた。はやちんは出したら終わりだって」
噂じゃなくて本当に言われていたのかと早都は崇史の言葉にあきれた。
「は? 何でそういう話してんだよ。サイアクだよ!」
長い息を吐いて、早都は崇史を立ち上がらせた。早都が怒ったと思ったのか、崇史は悲しげに眉を寄せて首を振った。
「向こうが勝手に喋っていったんだよー。何アピールかしらんけど。俺がはやちんにしか興味ないからはやちんの話してくるんじゃない?」
小さい頃はチビで鼻水をたらした近所のガキ大将っぽかった崇史は、いつの間にか身長も早都を軽く追い越してスラリと手足が伸びて女子にモテるようになった。女子が「口もとのほくろがエロい」だの「あのレベルのイケメンを連れて歩いたら自慢できる」だのと言うのを、早都は聞いて嫉妬した。
けれど、崇史はどんな女子にもなびかなかったので、早都は崇史狙いの女子を食いまくった。崇史に対する負けたくないという気持ちが、早都を遊び人にしたと言っても過言ではない。
崇史はもともとのイケメンだったが、早都は上京するにあたって田舎っぽく見えないように、少し無理して髪も明るめにしたし、メガネもやめてコンタクトにした。結果、早都もすごくモテるわけではないけれども、そこそこ悪くない部類には入っていたと思う。隣に天然のイケメンがいなければ早都だけを見てくれる子もいただろう。
けれど、女子たちは「早都くんは崇史くんと違って孤高のイケメンって感じはしないけど、愛嬌あって素直だからなー。軽く遊んでも許されそう」と言って、崇史にアピールしたけどダメだから、と早都の方に流れてきてくれた。崇史のことを好きだと言った女子を抱くのは崇史に勝っている感じがして、早都の嫉妬心を満足させた。
だが、お互いに「好き」とは違うベクトルで付き合うからか、その子たちとは長続きせず、それゆえ早都にはいつしか「ヤリチンの遊び人」との不名誉な称号がついていた。
女の子たちと不真面目に遊んだツケが今早都に返ってきていた。
「女の子と遊ぶのは許せたけど、まさかちょっと仕事が忙しくて会わない間に男に掘られちゃうとは思わなかったぁぁぁ……」
挨拶も早々に崇史は言った。
「へあっ?! 掘らっ……?? 何てこと言うんだ! 掘られてない! 俺は乗っかられたの!」
我ながら何ちゅー発言だ、と思いながら早都は崇史の言葉に返した。
「よ、良かった……ヤリチンのはやちんの処女が奪われたわけじゃなくて……いや、でも男とのハジメテを奪われたわけで……」
床を見つめながら玄関先で膝をついてぶつぶつ言っている崇史の頭を、早都は思いっきりどついた。
「だからそのはやちんって呼び方やめろよ。俺その呼び方のせいで学生時代何も知らんやつに早漏だと思われてたんだからな!」
高校時代に変な噂になった恨みは忘れない。
早都と崇史はドがつく田舎の出身で、ずっとご近所さんで、更に高校で一緒に上京して、以降もずっと定期的に連絡し合っている腐れ縁ではあるのだが、かたや良家のイケメンお坊ちゃん、かたやただの田舎の一家族の平凡な男で、早都には勝ち目はないのだ。
「いや、はやちんはそんなにもたないだろ。はやちんとやった子が言ってた。はやちんは出したら終わりだって」
噂じゃなくて本当に言われていたのかと早都は崇史の言葉にあきれた。
「は? 何でそういう話してんだよ。サイアクだよ!」
長い息を吐いて、早都は崇史を立ち上がらせた。早都が怒ったと思ったのか、崇史は悲しげに眉を寄せて首を振った。
「向こうが勝手に喋っていったんだよー。何アピールかしらんけど。俺がはやちんにしか興味ないからはやちんの話してくるんじゃない?」
小さい頃はチビで鼻水をたらした近所のガキ大将っぽかった崇史は、いつの間にか身長も早都を軽く追い越してスラリと手足が伸びて女子にモテるようになった。女子が「口もとのほくろがエロい」だの「あのレベルのイケメンを連れて歩いたら自慢できる」だのと言うのを、早都は聞いて嫉妬した。
けれど、崇史はどんな女子にもなびかなかったので、早都は崇史狙いの女子を食いまくった。崇史に対する負けたくないという気持ちが、早都を遊び人にしたと言っても過言ではない。
崇史はもともとのイケメンだったが、早都は上京するにあたって田舎っぽく見えないように、少し無理して髪も明るめにしたし、メガネもやめてコンタクトにした。結果、早都もすごくモテるわけではないけれども、そこそこ悪くない部類には入っていたと思う。隣に天然のイケメンがいなければ早都だけを見てくれる子もいただろう。
けれど、女子たちは「早都くんは崇史くんと違って孤高のイケメンって感じはしないけど、愛嬌あって素直だからなー。軽く遊んでも許されそう」と言って、崇史にアピールしたけどダメだから、と早都の方に流れてきてくれた。崇史のことを好きだと言った女子を抱くのは崇史に勝っている感じがして、早都の嫉妬心を満足させた。
だが、お互いに「好き」とは違うベクトルで付き合うからか、その子たちとは長続きせず、それゆえ早都にはいつしか「ヤリチンの遊び人」との不名誉な称号がついていた。
女の子たちと不真面目に遊んだツケが今早都に返ってきていた。
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