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20話 要するにレベルとコツの問題だな

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アレス式強化訓練2日目。

「アレス式強化訓練その2、今日は魔力の訓練を行う。」

「アレス君、私は剣を振るだけじゃダメなのか?」

「セリスよ、その振る剣に魔法を付与することで、大幅な火力アップが見込める。」

「な、なるほど。」

「ようやくこの時が来たわね!私の得意分野だわ!」

「ほほ~う。ではお前の訓練は他のやつの倍にしよう。」

「ちょっ、なんでよ!?」

「魔力....わたくしの治癒の力にも関係がありますね。」

「ああ、ヘレナには今よりも上位の治癒魔法を習得してもらう。」

俺は収納魔法で保管していたものをだす。
これで全部か。

「何よこれ?」

「これは俺特製の魔力増強剤だ。」

組織からパクってきたから、ばれたらボスに怒られる。
だから証拠隠滅のためにもこいつらにはたくさん飲んでもらわねば。

「諸君らにはこれを今から飲んでもらう。最低でも一人50杯は飲んでもらおう。」

俺がボスに怒られないためにがんばってくれ。

「50杯!?」

「そんなに飲むのか.....。」

「アレスさん、わたくしダイエット中でして....。」

「安心してほしい、こいつはゼロカロリーだ。なんなら50杯以上飲んでも構わないぞ?」

『........。』

「それでは、始め!」

なあに、安心しろ。
本来ならこのドリンク、くそマズいのだが....
ウォレンジジュィス風味にしておいたのでこいつらも飲みやすいはずだ。

「何これ、意外とおいしいわ。」

「ああ、爽やかで飲みやすいな。」

「もっと変な味がすると思っていました。」

「それは良かった。じゃあ50杯は余裕だな!」

『............。』


・・・・・・・・・・・・・・・・


1時間後.....

「これで102杯......どんなもんよ.....。」

「やるな、まあ俺の時は629杯飲んだが。」

「なっ!?悔しいけど負けよ....。」

ふっ、こいつの扱い方がわかってきたな。

「うっ、はぁ、はぁ、何とか飲み切ったぞ......。」

「流石だなセリス、ちょうど50杯だ。」

その根性は大したもんだ。

「あと1杯....ふん!ゴクッゴクッゴクッ、ぷはぁ、やりました!」

「よくやった、今ので50杯達成だ。」

流石勇者パーティーだな。
この程度は朝飯前か。

「では次のステップに行く。」

『休みは?』

「ん?欲しいのか?」

『お願いします!』

「では30分休憩とする。」


・・・・・・・・・・・・・・・


30分後.......

「これより魔力の実用編に移る。今からそれぞれに指示を出す。それをこなしてもらう。まずはセリス。」

「何だ?」

「お前にはまず剣に魔力を付与する練習をしてもらう。」

「わかった。やってみよう。」

「次にアリサ、お前は魔力の扱い方は充分できている。」

「ふん、当たり前でしょ。」

「そこでお前には複合魔法を習得してもらう。」

「複合魔法!?賢者クラスじゃないと習得できないといわれている、あの!?」

「そうだ、なに、お前はセンスがある、俺と同じように習得できるはずだ。」

「あんた既に習得してたのね.....。」

「最後にヘレナ。」

「何でしょうか?」

「君は今どこまでの回復魔法を使える?」

「そうですね、回復魔法だとヒール、ハイヒールと、状態異常回復魔法ですね。」

「なるほど、では君にはメガヒールを覚えてもらう。」

「今まで使えなかったのですが.....できるでしょうかわたくしに。」

「大丈夫だ。お前達は訓練中にレベルアップしている。現在大体30といったところか。人々の平均が9、10だからだいぶ強くなっているはずだ。今まで習得できなかったのはレベルの問題だな。」

レベルが上がった今、習得するのはコツさえつかめば難しくないはずだ。
あとはこいつら次第だが、まあ勇者パーティーだし何とかなるだろう。
しばらく自由に訓練をさせ、様子を見にいく。

さてと、まずはセリスから......

「セリス、どんな感じだ?」

「アレス君か、魔法は出せるんだが、付与がうまくいかなくてな。」

「なるほど、付与のコツは魔法と剣を一つのものとしてとらえることだ。剣に魔法を付与しようと考えているのがいけない。もしかしたら詠唱が邪魔をしているのかもな。魔法と剣を一つにすることを考えながらやってみろ。俺も剣を支えよう。」

「ありがとう、わかった。ふぅ、『ファイヤーブレード』。」

火が剣に収束していく。
ふむ、やはり詠唱が邪魔だったか。
やればできるじゃないか。

「その調子で続けてくれ。」

「ああ....、ありがとう。」

次はヘレナ.....

「光よ、我に癒しの祝福を、『メガヒール』。やはりだめですか.....。」

こいつもか。
どうやら根本的に使い方を間違えている。

「ヘレナ調子は?」

「アレスさん。すみません、なかなかうまくいかなくて......。」

「焦らなくていい。いいか、回復魔法で大事なのは詠唱じゃない、想いだ。」

「想い?」

「ああ、助けたいという想いに反応して回復量が変わる。詠唱はそのついでみたいなものだ。大切な誰かが怪我をして死にそう、そんなシチュエーションを想像しながらやってみろ。」

「わかりました!光よ、我に癒しの祝福を、『メガヒール』。」

フォォォォン

「アレスさん!できました!」

「良かったな。ちなみに誰をイメージしたんだ?」

「それはその......アレスさんです。」

「そうか。」

俺が死にそうになってるとこ想像したんか。
なんだかなあ。
切ないな。

「魔力の続く限りやり続けろ、そうすればコツをつかめるはずだ。」

「わかりました!」

あとは.....アリサか。

『コンポジットマジック、ファイヤーサンドウォール!』

「あーもう、なんでできないのよ!」

ふむ、なるほどな。
やはりそうか。

「アリサよ。」

「何よ?」

「前にも同じことを言ったな。発音だ。」

「発音?複合魔法にも関係あるの?」

「ああ、前半だけな。正しくは『コンポジィムァジィック』だ。」

「まさか.....!ちょっとやってみるわ。『コンポジィムァジィック、ファイヤーサンドウォール!』。」

ヒュゴオオオオォォォ

「やった!できたわ!」

「流石アリサだな、コツを教えただけで瞬時に習得するとは。」

「ふふん、まあね、魔法だけは自信があるの。」

良いこと思いついたぞ。
それ。

「なっ、ちょっ、何急に髪なでる訳!?やめてよね!」

「おお、すまんやめるわ。」

「いや、その、別に、嫌じゃないし、続けてもいいけど。」

「そうか、わかった。」

「こいつの髪やわらけぇ。小動物と戯れてるみたいだ。」

「聞こえてんのよ!それにあたしは人間だし!」

やべええ!素で声出てたあ!
まあ、こいつだからいいか。

「まあ、他の複合魔法も試してみろ。今のお前ならできるはずだ。」

「言われなくてもやってやるわよ。」



アレス強化訓練いよいよ最終段階へ。






セリス『剣を支えてもらった時、指が当たった.....。』




ヘレナ『わたくしの大切な人.....。』




アリサ『髪、なでられた.....へへっ。』



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