勇者パーティーの荷物持ちの俺、実は裏社会最強だったらしい～尚、パーティーメンバーと距離を置きたいのになぜか奴らは俺に絡んでくる～

19話 時は満ちた、あれをやる時だ

「あれをするしかないか。」

ついにこの日が来たか。
少々厳しいかもしれないが、これもみんなのためだ。
そうと決まれば早速.....


・・・・・・・・・・・・・・・

「何よ、急に呼び出して。」

「どうしたんだアレス君？」

「何か御用でも？」

ふっ、そんなにのんきにしていられるのも今のうちだぞ。
これより先は修羅、地獄の道だ。

「ゴホン、諸君らに集まってもらったのは他でもない。これより数日にわたり訓練を行う。」

「はぁ？なんであんたにそんな事指図されなくちゃいけないのよ。」

「訓練、ですか？」

「このタイミングでの訓練、何か理由があるのかい？」

こいつらにも現実を教えておいた方がいいだろう。

「実は最近魔族の動きが活発化していてな。なんでも四天王の一人が何かを企んでいると耳にした。」

「アレス君、まさかこの前の魔族も？」

「ああ、その四天王の部下だ。」

「いよいよ魔族が動き出したのですね....。」

「あたしたち仮にも勇者パーティーなんだから訓練なんていらないわよ。」

「断言する。今のお前たちが戦えば、確実に死ぬ。」

『っ！？』

こいつらには悪いが、それが現実だ。
勇者だから、勇者パーティーだからといって、神から多少の祝福は受けるが、決してその力だけでどうにかできるほど魔族は軟じゃない。

「俺とて正直こんな面倒なことはしたくないが、お前たちに今死なれては困る。よってここにアレス式強化訓練の実施を宣言する。」

「わかった、頼む。アレス君。」

「仕方ないわね、そこまで言うならやってあげる。」

「お願いしますね、アレスさん。」

ふっ、いい返事だ。
だがここから先は容赦しない。
これも世界、いや、お前たちのためだ。
悪く思うなよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「アレス式強化訓練その1、身体能力の向上。各自トレーニングを行ってもらう。状況を判断次第内容を変更する。」

「まず、セリス。」

「あ、ああ。」

「君はひたすらに剣を振ってもらう。いいな？」

「わかった。」

「次にアリサとヘレナ。」

「何よ？」

「はい。」

「君たちは圧倒的に運動不足だ。屋敷の周りを良いというまで走り続けろ。」

「え、ちょ、マジ？」

「あらあら....。」

「総員開始！」

さてと俺はっと。
みんなのトレーニングを観察して弱点でも探すか。
俺はサングラスをかけてウォレンジジュイスを飲みながらみんなの訓練を見る。

セリスは....

「やっ、はあっ！てぇい！」

うむ、構えは悪くないな。
しかし無駄な動きが多い。
実戦の経験が浅いからか。

次にアリサは......

「はぁ、はぁ、あーもう、どんだけ走ればいいのよ.....。」

弱音をはいてはいるが....
トレーニングにはしっかり向き合っているな。
負けず嫌いな性格がここで生きたか。

最後にヘレナは.....

「く、苦しいですが...これも減量のため！」

なるほど、目的がちょっと違う気がするが....
トレーニングを続けているな。
案外俺の体重が増えたって言ったこと気にしてんのか？

トレーニング開始から1時間か。
そろそろみんなを一度集めて状況と照らし合わせてトレーニング内容を変更するか。

「集合ー！」

「はぁ、はぁ、アレス君、この剣重くないか？」

「ああ、重力操作魔法で重さを3倍にしてある。」

「さ、3倍....。」

俺の時は確か10倍からスタートして、最終的には200倍だったなあ。

「はぁ、はぁ、はぁーっ、もう無理走れない.....。」

「はぁ、はぁ、はぁ、流石にキツいです.....。」

「だろうな、重力操作魔法でお前たちの重力を5倍にしてある。」

「はぁ、はぁ、あんたってやつは、はぁ、はぁ、なんてことをするのよ.....。」

「はぁ、はぁ、こ、これで減量できたかしら....。」

うーん、俺の時は20倍からスタートして最終的には300倍だったな。

「次のトレーニングはアリサ、ヘレナには剣を振り続けてもらう。セリスは俺が指示を出すからその通りに訓練だ。」

「なんで、魔法担当のあたしたちが剣を振らなきゃなんないのよ？」

「理由は簡単だ。物理攻撃しか聞かない敵がいたらどうする？」

「確かに、今のわたくしたちでは何もできませんね。」

「わかったのなら訓練開始ー！」


・・・・・・・・・・・・・・・・


「いいかセリス、今お前の剣には重力操作をかけていない。さっきより振りやすいはずだ。」

「これはっ！、確かにさっきまでより軽い.....。それに今までよりも剣が軽く感じる。」

「今回のお前の訓練は無駄な動きをなくすことだ。それができるようになれば一つの構えに執着しなくても、いろんな構えを駆使して戦えるようになる。」

「なるほど、そういうことか。確かに力任せに振っていたから無駄な動きが多かったような気がする。今度は速さを生かしてみよう。」

うむ、その意気だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


『セリス、君の剣の構えは美しい。しかしそれ以上に君の方が美しい。』

『ア、アレス君、そんな....私たちはパーティーの仲間で....。』

『何を言っているんだ、俺とお前はそれ以上の関係だろ？』

『アレス君.....。』

『好きだ、セリス！』

『ダ、ダメだ私たちは....！』


「って感じに今頃なってるわよきっと。」

「ふふっ、アリサは妄想力がたくましいですね。」

「ちょっ、妄想力って！言い方！」

「まあ、まあ、アリサがアレスさんのことが気になって仕方がないことはよく伝わりましたから。」

「ち、違うわよ！あいつの事なんか.....あいつん事なんか....。」

「あらあら、ふふっ。」


・・・・・・・・・・・・・・・

『ヘックシ！』

「どうしたアレス君、風邪かい？」

「いや、そんなはずはないんだが.....。そっちこそ風邪ひいてるんじゃないのか？」

「案外私たちが噂されてたりしてな。」

「うーむ、そんなことないと思うんだが....。おっと、無駄な動きが増えてるぞ。」

「す、すまない！ちょっと考え事をだな。」

「考え事をする余裕があるならまだいけそうだな。」




アレス式強化訓練は続く。







セリス『アレス君と私の噂....悪くない。』


アリサ『私だって魔法なら....。』


ヘレナ『ふふっ、負けませんよ。』