23 / 32
仲良し
しおりを挟む「ぷみゅ……にゅ?」
フォルが側にいる。ゼロは、どこにもいない。
ゼロを探さないと。
「……ゼロなら多分、帰ってるよ。迷わずいける?」
「ふみゅ。ありがと」
エレは、走って、ゼロのお家へ向かうの。
**********
ゼロのお部屋まで走る。
「……はぁ……はぁ」
「エレシェフィール」
ゼロいたの。ゼロに抱きつくの。
「ぎゅぅなの。エレは、ゼロがだいすきなの。さっきは、あんな事言ってごめんなさい。エレ、ゼロがいないとだめなの。何もできないの。ゼロは、エレのおにぃちゃんなの」
「分かったから、離れろ。今忙しいんだ。話なら後にしてくれ」
「ふぇ……やなの」
「はぁ……みんなには内緒だぞ。今、新しい紅茶の試飲中なんだ」
ふみゃ⁉︎
きて良かったの。ゼロが、紅茶を飲ませてくれたの。
「どうだ?」
「美味しい。飲みやすい。って、そうじゃなくて」
「その事なら気にしてねぇよ。つぅか、あれは俺も悪いからな。お前がいやがるって分かってながら言ったんだ。それより、こっちも飲んでみろ」
ゼロ、気にしてないみたい。でも、エレは……
「……美味しいの」
「これ、エレシェフィールにプレゼントしようと思っていたんだ。紅茶をじゃねぇが、これで作るクッキー」
「……いらない。紅茶のクッキーにがさんそう」
「苦くねぇよ。もしお前が気に入らなかったら、一日中お前の好きな事に付き合ってやる」
ゼロがそこまでいう時は、たいてい本当に自信がある時なの。
そうじゃなかったとしても、エレには損がないから、断らない選択肢なんて存在しないの。
「みゅ。ふみゅ。でも、エレは、みんなの愛姫なの。ゼロに独り占めされちゃだめなの……でも、でも……とっても魅力的なお誘い……ぷみゅぅ」
どうすれば良いんだろう。エレは、みんなの愛姫なの。でも、みんなに平等になんてできなくて。
みんながすきなのは変わりないんだけど。どう解決すれば良いのか、誰か教えて欲しいの。
「気にしなくて良いだろ。お前が笑ってくれていれば、みんな満足する。一緒にいてくれれば嬉しいんだ。なんでも相談してくれれば、安心するんだ。わがまま言ってくるのが、可愛いんだ」
わがまま……ゼロの邪魔したいっていうのも可愛いで済まされるのかな。具体的には、ゼロのお膝の上にちょこんと座っているの。
それも可愛いで済まされるのかな。
「……ゼロのお膝にちょこんなの」
「……エレシェフィールを抱いてると暖かいな」
「エレ、みんなに愛姫って呼ばれたくないの」
ちゃんと、呼んで欲しいの。
「エレシェフィールが言ってたって、俺の方から言っとく。他にして欲しい事は?俺ができる事なら、なんだってしてやる」
いっぱいあるの。一緒に暮らすようになるからこそ、いっぱいあるの。
「ご飯はみんな一緒に。忙しければ良いの。暇なら一緒に。エレにも畑さんとか手伝わせるの。お風呂と寝るのは、エレを一人にしない事なの。エレを妹……フォル以外は。って思って、妹のように扱うの。エレを愛姫って呼ばないの……これさっき言った」
エレは、愛姫の役割だからをなくすの。愛姫だからじゃなくて、エレだからなの。
愛姫として、言わないといけない事もあるかもしれないけど、それはそれなの。一緒にいるのは、エレだからなの。
「なら、俺からも良いか?毎回毎回、椅子で寝るのやめろ。最近は、フォルのところに泊まってたからなかったが。後、布団蹴ってベッドから落とすな。ちゃんときて寝ろ。つぅか、ベッドの上で寝てくれ」
あれ?
これって、もしかしなくても、エレは寝相が悪すぎるって言われてるのかな。なんだか、そんな気がするの。
ふみゃ⁉︎
寝相が悪いと、フォルにもきらわれるかもしれない。
早く直さないと。
「……全部顔に出てる。安心しろ。俺らが抱き枕にして寝てる時はおとなしいから」
「ふみゅぅ。それなら良いの」
ふみゅ?
一緒に暮らす。みんなで一緒にって事は、お泊まりとかじゃなくて、毎晩……夜も朝も関係ないの。毎日、フォルと一つ屋根の下……
そ、それは恥ずかしいの!
どきどきなの!
でも、嬉しい。
複雑なの。こんなに複雑なのを、ゼロに伝えたくても、どう伝えれば良いか分かんないの。
ふみゃ⁉︎
そういえば、共有があるから、エレのこの複雑さを、きっと気づいてくれるの。じっと見てれば気づくの。
「……ぷはっ……悪い、流石に我慢できなかった。ぷすっ……可愛すぎんだろ。見てれば共有で気づくって、見てなくても、使えてんだから、気づくだろ」
ゼロが笑ってるの。エレは、なんだか、嬉しくないの。ゼロが笑うのは嬉しいはずなのに、こんな事で笑うのは嬉しくない。
「そういえば、一緒に暮らすお家はどうなったの?進んでる?」
「ああ。今は、家具導入中だ。エレシェフィールも、選んでくれ」
ベッドはふかふかが良くて、椅子やソファもふかふかが良いけど、実物見ないと、ふかふか分かんないの。
「ぷにゅぅ」
エレの目を信じるの。エレの目なら、ふかふか度を実物がなくても分かるの。エレのふかぁ愛を甘く見ないで欲しいの。
「……これとかおすすめだな。可愛くて、広くて、ふかふか。エレシェフィールが大好きそうな要素がたっぷり詰まってる。これはいやか?」
「……これにするの。ふかふか度が高ければ良いの。ゼロのおすすめで良いの」
「分かった。それと、今日から少しずつ、荷造りしてくれ。向こうに持っていきたいものだけで良いから」
「みゅ。エレお片付けきらいだけどがんばるの」
エレは、ゼロからお片付けするなって言われてるの。エレは自分でできてるって思っても、ゼロは危なっかしいとか言ってくる。
「荷造りと片付けは違うだろ」
「ただいま。仲直りちゃんとできた?」
ゼムが帰ってきたの。
「喧嘩してねぇよ」
「エレシェフィール、お土産。ゼロも。今日は、二人が好きなご飯を作るよ」
ぬいぐるみなの。エレのぬいぐるみコレクションが増えていくの。
……エレのわがままもう一個言っちゃおうかな。流石にこれは、ゼロもだめって言うかもしれないけど。だめもとで言ってみるの。
「みんなのぬいぐるみが欲しいの。エレが離れていても、寂しくないように、みんなのぬいぐるみが欲しいの」
「エレシェフィールのぬいぐるみと引き換えになら」
「ぷみゅ。取引成立なの。でも、エレは、魔法でぬいぐるみ作る方法知らないの。魔力を入れるのは、覚えたけど」
「……」
ゼロが、エレのぬいぐるみを作ってくれるの。完成度がとっても高い。いつもエレを見ているのが出ているのかも。
「魔力は入れられるんだろ?」
「ふみゅ」
エレのぬいぐるみをゼロが作って、エレが魔力を入れるの。これで、離れていても、寂しくないの。
「これ、もしかしなくても、オレも」
「当然だろ。エレのぬいぐるみも作るんだ」
「……作るんだー」
「……分かったよ」
ゼムの方は……エレが可愛いの。エレ以上にぬいぐるみエレが可愛いの。ゼムにはそう見えていたのかな。
ついでに、ゼロとゼムのぬいぐるみを手に入れたの。エレの宝物。
「ふみゅみゅ」
「エレシェフィール様、嬉しそう。みゅにゃみゅにゃしてる。みゅにゃにゃのエレ」
「エレシェフィール様は、嬉しそうにしている時も、そうでない時も、可愛いんだよ。エレ」
「わぁぁぁぁぁ‼︎」
「やめろ!余計な事言うな!」
どうしたんだろう。突然出てきたにゅにゅとみゅにゅも謎だけど。それ以上に、突然叫び出すゼロとゼムが謎なの。
ゼロの余計な事ってなんなんだろう。
「エレシェフィール様。良かったですね。まさか、ぬいぐるみがきっかけになるとは思ってませんでした」
もしかして、小型龍の自我とかって言っていたの。エレが、愛姫じゃなくて、エレとして受け入れたから?
どんな理由だとしても、嬉しい。
「にゅにゅ、エレシェフィールには、そういう事言うな。本人の前では何も言うな」
「みゅにゅ、あまり余計な事は言わないで」
……ふみゅ。今日の一番の成果って、小型龍の事でも、エレが受け入れられた事でもないの。
ゼロとゼムって、性格が全然違うって思ってたけど、違わなかったの。双子だったの。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる