(仮)世界の名を持つ姫

碧猫 

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仲良し

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「ぷみゅ……にゅ?」

 フォルが側にいる。ゼロは、どこにもいない。

 ゼロを探さないと。

「……ゼロなら多分、帰ってるよ。迷わずいける?」

「ふみゅ。ありがと」

 エレは、走って、ゼロのお家へ向かうの。

      **********

 ゼロのお部屋まで走る。

「……はぁ……はぁ」

「エレシェフィール」

 ゼロいたの。ゼロに抱きつくの。

「ぎゅぅなの。エレは、ゼロがだいすきなの。さっきは、あんな事言ってごめんなさい。エレ、ゼロがいないとだめなの。何もできないの。ゼロは、エレのおにぃちゃんなの」

「分かったから、離れろ。今忙しいんだ。話なら後にしてくれ」

「ふぇ……やなの」

「はぁ……みんなには内緒だぞ。今、新しい紅茶の試飲中なんだ」

 ふみゃ⁉︎

 きて良かったの。ゼロが、紅茶を飲ませてくれたの。

「どうだ?」

「美味しい。飲みやすい。って、そうじゃなくて」

「その事なら気にしてねぇよ。つぅか、あれは俺も悪いからな。お前がいやがるって分かってながら言ったんだ。それより、こっちも飲んでみろ」

 ゼロ、気にしてないみたい。でも、エレは……

「……美味しいの」

「これ、エレシェフィールにプレゼントしようと思っていたんだ。紅茶をじゃねぇが、これで作るクッキー」

「……いらない。紅茶のクッキーにがさんそう」

「苦くねぇよ。もしお前が気に入らなかったら、一日中お前の好きな事に付き合ってやる」

 ゼロがそこまでいう時は、たいてい本当に自信がある時なの。

 そうじゃなかったとしても、エレには損がないから、断らない選択肢なんて存在しないの。

「みゅ。ふみゅ。でも、エレは、みんなの愛姫なの。ゼロに独り占めされちゃだめなの……でも、でも……とっても魅力的なお誘い……ぷみゅぅ」

 どうすれば良いんだろう。エレは、みんなの愛姫なの。でも、みんなに平等になんてできなくて。

 みんながすきなのは変わりないんだけど。どう解決すれば良いのか、誰か教えて欲しいの。

「気にしなくて良いだろ。お前が笑ってくれていれば、みんな満足する。一緒にいてくれれば嬉しいんだ。なんでも相談してくれれば、安心するんだ。わがまま言ってくるのが、可愛いんだ」

 わがまま……ゼロの邪魔したいっていうのも可愛いで済まされるのかな。具体的には、ゼロのお膝の上にちょこんと座っているの。

 それも可愛いで済まされるのかな。

「……ゼロのお膝にちょこんなの」

「……エレシェフィールを抱いてると暖かいな」

「エレ、みんなに愛姫って呼ばれたくないの」

 ちゃんと、呼んで欲しいの。

「エレシェフィールが言ってたって、俺の方から言っとく。他にして欲しい事は?俺ができる事なら、なんだってしてやる」

 いっぱいあるの。一緒に暮らすようになるからこそ、いっぱいあるの。

「ご飯はみんな一緒に。忙しければ良いの。暇なら一緒に。エレにも畑さんとか手伝わせるの。お風呂と寝るのは、エレを一人にしない事なの。エレを妹……フォル以外は。って思って、妹のように扱うの。エレを愛姫って呼ばないの……これさっき言った」

 エレは、愛姫の役割だからをなくすの。愛姫だからじゃなくて、エレだからなの。

 愛姫として、言わないといけない事もあるかもしれないけど、それはそれなの。一緒にいるのは、エレだからなの。

「なら、俺からも良いか?毎回毎回、椅子で寝るのやめろ。最近は、フォルのところに泊まってたからなかったが。後、布団蹴ってベッドから落とすな。ちゃんときて寝ろ。つぅか、ベッドの上で寝てくれ」

 あれ?

 これって、もしかしなくても、エレは寝相が悪すぎるって言われてるのかな。なんだか、そんな気がするの。

 ふみゃ⁉︎

 寝相が悪いと、フォルにもきらわれるかもしれない。

 早く直さないと。

「……全部顔に出てる。安心しろ。俺らが抱き枕にして寝てる時はおとなしいから」

「ふみゅぅ。それなら良いの」

 ふみゅ?

 一緒に暮らす。みんなで一緒にって事は、お泊まりとかじゃなくて、毎晩……夜も朝も関係ないの。毎日、フォルと一つ屋根の下……

 そ、それは恥ずかしいの!

 どきどきなの!

 でも、嬉しい。

 複雑なの。こんなに複雑なのを、ゼロに伝えたくても、どう伝えれば良いか分かんないの。

 ふみゃ⁉︎

 そういえば、共有があるから、エレのこの複雑さを、きっと気づいてくれるの。じっと見てれば気づくの。

「……ぷはっ……悪い、流石に我慢できなかった。ぷすっ……可愛すぎんだろ。見てれば共有で気づくって、見てなくても、使えてんだから、気づくだろ」

 ゼロが笑ってるの。エレは、なんだか、嬉しくないの。ゼロが笑うのは嬉しいはずなのに、こんな事で笑うのは嬉しくない。

「そういえば、一緒に暮らすお家はどうなったの?進んでる?」

「ああ。今は、家具導入中だ。エレシェフィールも、選んでくれ」

 ベッドはふかふかが良くて、椅子やソファもふかふかが良いけど、実物見ないと、ふかふか分かんないの。

「ぷにゅぅ」

 エレの目を信じるの。エレの目なら、ふかふか度を実物がなくても分かるの。エレのふかぁ愛を甘く見ないで欲しいの。

「……これとかおすすめだな。可愛くて、広くて、ふかふか。エレシェフィールが大好きそうな要素がたっぷり詰まってる。これはいやか?」

「……これにするの。ふかふか度が高ければ良いの。ゼロのおすすめで良いの」

「分かった。それと、今日から少しずつ、荷造りしてくれ。向こうに持っていきたいものだけで良いから」

「みゅ。エレお片付けきらいだけどがんばるの」

 エレは、ゼロからお片付けするなって言われてるの。エレは自分でできてるって思っても、ゼロは危なっかしいとか言ってくる。

「荷造りと片付けは違うだろ」

「ただいま。仲直りちゃんとできた?」

 ゼムが帰ってきたの。

「喧嘩してねぇよ」

「エレシェフィール、お土産。ゼロも。今日は、二人が好きなご飯を作るよ」

 ぬいぐるみなの。エレのぬいぐるみコレクションが増えていくの。

 ……エレのわがままもう一個言っちゃおうかな。流石にこれは、ゼロもだめって言うかもしれないけど。だめもとで言ってみるの。

「みんなのぬいぐるみが欲しいの。エレが離れていても、寂しくないように、みんなのぬいぐるみが欲しいの」

「エレシェフィールのぬいぐるみと引き換えになら」

「ぷみゅ。取引成立なの。でも、エレは、魔法でぬいぐるみ作る方法知らないの。魔力を入れるのは、覚えたけど」

「……」

 ゼロが、エレのぬいぐるみを作ってくれるの。完成度がとっても高い。いつもエレを見ているのが出ているのかも。

「魔力は入れられるんだろ?」

「ふみゅ」

 エレのぬいぐるみをゼロが作って、エレが魔力を入れるの。これで、離れていても、寂しくないの。

「これ、もしかしなくても、オレも」

「当然だろ。エレのぬいぐるみも作るんだ」

「……作るんだー」

「……分かったよ」

 ゼムの方は……エレが可愛いの。エレ以上にぬいぐるみエレが可愛いの。ゼムにはそう見えていたのかな。

 ついでに、ゼロとゼムのぬいぐるみを手に入れたの。エレの宝物。

「ふみゅみゅ」

「エレシェフィール様、嬉しそう。みゅにゃみゅにゃしてる。みゅにゃにゃのエレ」

「エレシェフィール様は、嬉しそうにしている時も、そうでない時も、可愛いんだよ。エレ」

「わぁぁぁぁぁ‼︎」

「やめろ!余計な事言うな!」

 どうしたんだろう。突然出てきたにゅにゅとみゅにゅも謎だけど。それ以上に、突然叫び出すゼロとゼムが謎なの。

 ゼロの余計な事ってなんなんだろう。

「エレシェフィール様。良かったですね。まさか、ぬいぐるみがきっかけになるとは思ってませんでした」

 もしかして、小型龍の自我とかって言っていたの。エレが、愛姫じゃなくて、エレとして受け入れたから?

 どんな理由だとしても、嬉しい。

「にゅにゅ、エレシェフィールには、そういう事言うな。本人の前では何も言うな」

「みゅにゅ、あまり余計な事は言わないで」

 ……ふみゅ。今日の一番の成果って、小型龍の事でも、エレが受け入れられた事でもないの。

 ゼロとゼムって、性格が全然違うって思ってたけど、違わなかったの。双子だったの。
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