(仮)世界の名を持つ姫

碧猫 

文字の大きさ
28 / 32

頼み

しおりを挟む

 お手紙って渡すまでが重要だと思う。書けたとしても、渡せなかったら意味ないから。

 誰かに渡してもらうのも良いけど、やっぱり、自分の手で渡したいって思うの。その方が、喜ぶ顔を間近で見られるから。

 だから、エレは、自分でフォルにお手紙を渡すってゼロに言ったんだけど、渡せてないの。

 フォルが帰ってきたのに、お手紙はエレが持っている。エレの元から離れてくれない。

 お手紙を渡すのって、こんなにどきどきするものだったんだ。初めてだから知らなかった。

「エレシェフィール?どうかしたの?」

「な、なんでもないの」

「そう?いつも以上に落ち着いていないから、何かあったんじゃない?なんでも相談に乗るよ?」

 フォルが優しいの。お手紙を渡せないだけなのに。心配されてる。このままじゃ、勘違いされて心配されたままになっちゃうの。

 がんばって、お手紙を渡せれば解決するんだけど。お手紙を渡せば全て解決なんだけど。

 それができないからこうやって悩んでいるの。

「お……て……なの」

「おて?おてがしたいの?」

 違うの。言えない。お手紙って言うだけなのに。簡単なはずなのに言えない。

「違うの。て……なの」

「て?」

「……ふ……ふぇ」

「……フォル、エレシェフィールが渡したいものがあるんだと。一生懸命頑張ったから、受け取って欲しいって」

 ゼロの援護なの。ゼロが援護してくれた。

 ここで渡すの。お手紙渡すの。

「ぷ、ぷにゅ。ぷにゅぷにゅにゃぁ」

「手紙を受け取って欲しい?僕のために書いてくれたの?ありがと。僕の可愛いお姫様」

 言った本人でさえ理解できない言葉で通じたの。知ってたんじゃないのかなってくらい通じたの。

 知っていたんじゃないかなって思うけど、それは考えない事にするの。お手紙受け取ってくれて良かったとだけ考える。

「え、エレは、ゼロで遊ぶ予定あるからー」

 お手紙を読まれるの恥ずかしいの。だから、ゼロを言い訳に使って逃げる。

      **********

「ぷみゅぅ。ここまで逃げれば良いの」

「手紙読まれるくらい良いだろ。読んでもらえてるんだから」

「エレの前では恥ずかしいの。読んで欲しいけど恥ずかしいの」

 エレは、ゼロのお部屋に避難したの。

「ゼロ、部屋の温度高いって言うから……エレシェフィールも一緒だったんだ」

 ゼムが来たの。このお部屋の温度は普通だと思う。暑くも寒くもないくらいの温度なの。

「ふみゅ。ゼロはこのお部屋ちょうど良くないの?暑いの?」

「俺らは、極寒地帯がちょうど良いって思う人種だからな。もう少し涼しくしたいって相談してたんだ。エレシェフィールがいる時は、このままで良いが、一人でいる時はな」

 エレがいると気を使われるの。エレの事は気にしないで欲しいのに。

 こうなったら、エレはとってもあったかぽかぽかなお洋服を着てゼロの部屋にいる事にするの。それならゼロはエレを気にせずにいられると思うから。

「エレは、あったかぽかぽかなお洋服着ておくから、気にしなくて良いの」

「その事だけど、エレシェフィールが寒くないように、この部屋に来る時だけ服を用意してあるんだ。ちゃんと可愛いデザインだから安心して」

 可愛いは重要じゃないと思うの。機能性の方が重要だと思う。可愛いデザインで安心は良く分かんないの。

「可愛いなら良いが、ゼムの趣味だからな……」

「オレの趣味じゃないよ。みんなにも聞いて用意したから」

「それなら……良いかもしれねぇが」

「可愛さより機能性なの」

「可愛さだ!」

「可愛さだよ!」

 仲良いの。同時に言われた。そんなに可愛さが重要とは思えないんだけど。ゼロとゼムは可愛さがとっても重要みたい。

「ぷにゅ」

「可愛かったら、フォルが喜んで抱き枕にしてくれるかもしれねぇぞ」

「その服可愛いねってフォルに言われたくない?」

 抱き枕に喜んで欲しい、可愛い言われたい。

 可愛いはとっても重要だったのかもしれない。

「可愛いなの!」

「うん。早速着てみる?」

「ぷにゅ」

 上着タイプなの。簡単に着脱できる。お部屋のお外でもこれなら大丈夫なの。

 しかも、ふりふりレースが可愛い。

「可愛いなの?」

「可愛いよ」

「ぷにゅ。フォルに見せびらかし行ってくる」

 早速フォルに見せびらかすの。フォルがどんな反応するのか楽しみ。

      **********

「エレだよ」

「エレシェフィール?帰ってきてくれたんだ」

「ぷにゅ。お手紙読んだ頃だと思うから帰ってきたの。ついでに、お洋服を見せびらかしにきたの」

 エレの可愛いお洋服姿を見ればきっと喜んで抱き枕にしてくれるの。

「……エレシェフィール、こっちきて」

「ふみゅ」

 フォルに呼ばれたら、どこへでも行っちゃうエレなの。

「ここ座って」

 ふみゃ⁉︎

 お洋服可愛くしたら、フォルからお膝ちょこんとお座り催促が来たの。

 やっぱり、可愛いお洋服はとっても重要。

「ふみゅ」

 フォルのお膝にちょこんとお座り。

「……可愛い」

 ぷみゃ⁉︎
 後ろからのぎゅぅまできた。

 可愛いお洋服でずっと過ごしていれば、ずっとこんな感じにやってくれるのかもしれない。

 ゼロに頼んで、とっても可愛いお洋服だけにしてもらおうかな。

「エレシェフィール、君に言わないといけない事があるんだ」

「みゅ?」

「でも、フィルに取られるみたいで、言いたくない。エレシェフィールの事を見込んで言っているのは分かってるけど」

 なんだろう。気になるけど、それ以上にフォルが可愛いの。

「……今、遠くにいても連絡できるようにとか、色々と便利なものがあって良いんじゃないかって話が出てるんだ。それを作るのに、君の力を借りたい」

「分かったの。エレができるならがんばるの」

「でも、僕は一人で簡単にできるから、エレシェフィールはフィルにあげないとなんだ。エレシェフィールは僕のなのに」

 ぷにゅ。やきもちでいつもは言わなさそうな事言ってるの。

「エレシェフィール、フィルのとこへ行く前に、僕のものと証明するちゅやって。いつものやって」

「ふみゅ。ちゅなの」

 ちゅってしてあげるの。フォルのほっぺに。

 これで満足してくれたのかな。エレは、満足なの。

「……これ持ち帰りたい」

「フィルのところ行かないとだからむりなの。でも、エレはフォルのだから、帰ってくるの。待っていれば帰ってくるから」

「……なぁ、ちょっとフィルの手伝いするだけだよな?離れるわけじゃねぇよな?部屋も向かいだし。なんでそんな長い間会えない二人みたいな事になってんだ?毎日会えるのに」

 それは気持ちの問題なの。ゼロが呆れてるの。

 フォルは、エレを独り占めできないのが寂しいんだと思う。フィルに取られちゃうんじゃって不安なんだと思うの。

 だから、エレはフォル一筋なのって伝えておかないと。

「うん。僕のエレシェフィール。らぶ」

「らぶ。ところで、お手伝いって何をするの?エレができるって言うけど、エレよりフィルの方がいっぱいできる事多いよ?」

「設計図を描いて欲しいんだ。フィルはその、そういう作業は得意じゃないらしくて。君はそういうのは教えればできそうだから、手伝って欲しいんだ」

 絵を描くのはできるけど、そんな、設計図なんてなると、できるか分かんないの。ちょっぴり不安があるの。お役に立てなかったらって。

「ちなみに、君に任せるっていうのは、僕が言ったんだ。君は学ばせれば、そういうのもできるって思って」

「ふみゅ。できるの。フォルができるって思ってくれていたなら、エレはできる気がするの」

「うん。じゃあ、フィルのものになる前に、描き方とかは教えるよ」

「ふみゅ」

 フォルができるって言ってくれているなら、エレはフォルを信じてやるだけなの。自分を信じてやるよりも、とっても、できそうって思うの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...