喫茶アジフライ

四宮 あか

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オカルトボーイ 寺島 たくと

第2話 もしもしおばさん編

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「よし、もしもしおばさんって知ってるか?」
 今日もドヤっという顔をして寺島 たくとは話し始めた。
 毎回話を始めるときドヤ顔をしてしまうのが彼の悪いところだと思う。
「知らないわ」
 バッサリと答える。
「駄目だよしのぶちゃん。こういうのは雰囲気も大事なんだからノッてやらないと」
「これは私とたくと君のやりたくもない勝負なのだからこれでいいのです」


 雨脚は強く、喫茶アジフライの窓にも容赦なく雨粒が打ちつけられる。
 外のバス停など見えないし。
 ごろごろという雷の音が不気味だ。


「まぁまぁ、それが姉ちゃんの作戦なんだからいいんだおっちゃん。15時~17時の間に子供だけがいる家にかかってくる電話なんだ」
「ふーん」
 もうこの段階で大体見当がつきそうだ。
「まぁ、いいよ。そんで、電話に出ると。お父さんかお母さんがいる? っておばちゃんが聞いてくるんだ。それが、『いるよかわる?』 って聞くと……電話が切れちまうんだよ」
「それって、子供だけが在宅か親がこの時間もいるかを調べる確認電話じゃ……」
 私にもっとノッてやれと言う癖に葉山のじいさんが思わず突っ込んだ。
 犯罪の香りのする別の意味で怖い話である。


「いつのまにか子供たちの間で不気味なおばさんからの電話が噂になってさ。とうとう先生の耳に入ってすぐに全校集会が行われたんだ。そんで、集会で『お父さんかお母さんがいますか?』って電話がかかってきたことがある生徒は挙手するように言われたんだよ」
「学校側は真っ当な対応ですね」
「ほんと、大人の在宅確認だなんて不気味だな。少年少女を狙った犯罪が昨今多いから学校側も大変なもんだ」
 子供の世界の話は実に興味深い。
 全校集会まで行われたと言うのに、同じ地区にある喫茶店で働いている私も金持ちそうな葉山のじいさんもこの事件をしらなかったのだから。
 子供がいない世代といない世代では同じ町でも見えている物が違うのかもしれない。
「どのくらいの生徒の家に電話がかかってきているかの把握と注意喚起もできるしな」
 葉山のじいさんはアイスブレンドを飲む。

「そしたらさ、30人近くも手を挙げたんだ。1年から6年までで」
「えっと、全校生徒は何人でしたっけ?」
「一クラス40人の2クラスずつだから……」
「480人ほどですか」
「ねえちゃん、ちゃんと計算まで俺にさせろよ!」
「しのぶちゃん大人げないぞ」
 このやり取りがすでにめんどくさい……。


「結構かかってきてたんだなぁ。それでおしまいかい?」
 葉山のじいさんが早くも話を終わりにしようとする。
 在宅確認の電話が30人ほどのところに……、まぁこれではハーゲンはのせれない。
「まってまって、まだ話には続きがあるの最後までちゃんと聞いてよいつもいつも! 学校側は保護者に手紙を持たせて注意喚起しておしまいだったんだけど……」
 寺島 たくとは再びドヤ顔をした。

「これは独自に調べたんだけど。調べたやつ全員この街に住んでるんだよ」
「30人全員?」
 思わず私も聞き返した。
「いや……あの半分くらい……まぁ12人くらいかな」
「半分じゃないだろそれ」
 葉山のじいさんが相変わらず突っ込む。
「もう、大体半分だからいいの!! まったく大人はいちいち細かいんだから。ほら、ゾッとしただろ」
「ふーん。じゃぁ次の話にいってみようか」
「くそ……、まだあるんだからな!」

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