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第18話 嘘だろおい
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「さて、もう夜も遅い。君はいつまでもここにいても平気なのかい?」
ノアにそう言われて、私は我にかえった。
いろいろ聞きたいことはあるけれど、私が抜け出してきた時間は夜。
屋敷に戻らないといけない。
ノアは明日一度家に戻ると言っていた。
だから、今夜は引くことにしたのだ。
「そうですね、聞きたいことはございますが、話はまた日を改めましょう」
この判断がよくなかった。
ノアに屋敷まで転移魔法で一瞬で送ってくれたときに気が付くべきだったのだ。
でも私はまさかの人物からのストレートな告白? に動揺してしまっていた。
次の日の朝。
メイドからノアこれから王都に戻るときいてすぐに駆け付けたというのに、部屋はすでにもぬけの殻だった。
「なんでいないのよ!?」
「お嬢様、お気持ちはわかりますが、口調をもう少々気を付けてくださいませ。……おそらく、転移魔法を使われたのではないかと思われます」
そうだった、スクロールを買う側の私と違って、彼は作る側……昨夜だって、急遽借りた屋敷から私の部屋の前までという短い距離ですら魔法で移動したのだ。
転移魔法を自分が使えるなど想定していなかった。
私はノアに連絡をとれる手段は手紙しかない。
マクミラン領から王都までは、徒歩60日、馬車45日もかかる。
それも、これはあくまで寄り道などせずまっすぐいけばだ。
でも、手紙はあちこちの中継地点で目的地ごとに仕分けられ、人によって運ばれるから。
60日でつくかどうか――
一応かなり金はかかるがスクロールで王都に行くという手もあるけれど。私はノアと従者のヴィンセントとは面識があっても。
私はヴィスコッティ家と親しい間柄の貴族ではない。
ノアは奇人ではあるが、あの容姿で沢山の縁談がきたとのことだから、女性である私が訪ねてもお茶を出されて歓迎されている風に装われても、うまくあしらわれてノアに会うことはできないという可能性がある。
というか、会えない可能性のほうが高い。
だって実際に会えば意識しえもらえるかもと夢をみた令嬢たちがヴィスコッティ家にノアと約束もせずに行った場合どういった対応を取られるかが噂になっていたのだ。
爵位が低ければ、当然門前払い。
同格であっても、本人に話がいったのかどうかわからずノア本人は決して出てこないことは有名な話しだ。
あーもう。私は気になることは先にさっさと潰しておきたいタイプなのよ。どうしてこんな話を聞きたいようなことを残して、挨拶もせずにいなくなるの。
イライラしている私に、セバスが1通の手紙を差し出してきた。
「テーブルにお嬢様宛てのお手紙が」
手紙には、一度家に戻ることになった。
すぐに戻る。
だけしか書かれていなかった。
手紙の文字からは、それが嘘か本当かは見抜けない。
でも、私からノアに連絡する手段などもうないに等しい。
次に彼に会えるとしたら、せいぜい2カ月後の王都でのパーティーくらいだ。
それも、辺境地に領地をもつ私が王都の中心貴族の傍で話すことなど不可能だ。
好きには2種類ある。
愛しているという意味と友達や家族として好いているという意味だ。
私は好きなの? と聞いた。
これじゃ、どっちなのかわからないのだと今更気がついた。
となると、手紙のすぐ戻るなど、加護を使わなくても嘘だとわかる。
私はゴシップが大好きだ。
占い師をやって庶民のゴシップにまで首を突っ込むほどに。だから、わかる。
連絡の手段がないのだから、後日丁寧なわび状がきて終わるのだ。
ノアは占い師の正体を知って、目的を達してしまった。
彼がもうマクミラン領にとどまる理由も、訪問する理由もない。
ノアが帰ったことがわかると、屋敷もこれまでの来客対応モードから、通常モードへと切り替わる。
メイドたちは何も口に出さない。
でも婚約の話が何一つ具体的に進んでいないうちに、ノアが自分の家へと戻る前に私に挨拶もせずに去ったのだ。
皆どういうことかわかっているのだろう。
私がノアが使っていた客室からでると、メイドたちが別の客がきてもいいように、すぐに片付けを始めた。
寝室に入り、いつもより早くベッドに横になった私はけたたましいノックで起こされたのだ。
一体何事かと思うと扉の前にセバスが立っていた。
「こんな時間に一体何事?」
「お譲様大変でございます」
セバスが深刻そうに言うので、ノアがマクミラン領に長期滞在したことでヴィスコッティ家から何か言われたのだろうかと震えた。
「まさか、ヴィスコッティ家から――」
「はい、お戻りになられました」
「え?」
予想していなかった返しに、変な顔になってしまう。
「このような時間帯で、メイドの多くは家に戻っております。うちは住み込みのメイドがほとんどおりません。しかし、今朝まで使われていた部屋は、てっきり帰られたのだと片付けてしまっていて。すぐに使える状態ではありません。とりあえずシーツ類だけでも、準備しないと寝れません」
「ちょっと、待って、待って、戻っていらしたの?」
「はい。部屋の準備が整っておりませんので」
ウソでしょ……
とりあえず、最低限眠れるようにシーツ類は新しくかけないといけないらしく。それまで、不自然にならないように場を繋いでくださいとセバスは言い残して行ってしまうし。
応接室には、本当にノアがいたのだ。
ノアにそう言われて、私は我にかえった。
いろいろ聞きたいことはあるけれど、私が抜け出してきた時間は夜。
屋敷に戻らないといけない。
ノアは明日一度家に戻ると言っていた。
だから、今夜は引くことにしたのだ。
「そうですね、聞きたいことはございますが、話はまた日を改めましょう」
この判断がよくなかった。
ノアに屋敷まで転移魔法で一瞬で送ってくれたときに気が付くべきだったのだ。
でも私はまさかの人物からのストレートな告白? に動揺してしまっていた。
次の日の朝。
メイドからノアこれから王都に戻るときいてすぐに駆け付けたというのに、部屋はすでにもぬけの殻だった。
「なんでいないのよ!?」
「お嬢様、お気持ちはわかりますが、口調をもう少々気を付けてくださいませ。……おそらく、転移魔法を使われたのではないかと思われます」
そうだった、スクロールを買う側の私と違って、彼は作る側……昨夜だって、急遽借りた屋敷から私の部屋の前までという短い距離ですら魔法で移動したのだ。
転移魔法を自分が使えるなど想定していなかった。
私はノアに連絡をとれる手段は手紙しかない。
マクミラン領から王都までは、徒歩60日、馬車45日もかかる。
それも、これはあくまで寄り道などせずまっすぐいけばだ。
でも、手紙はあちこちの中継地点で目的地ごとに仕分けられ、人によって運ばれるから。
60日でつくかどうか――
一応かなり金はかかるがスクロールで王都に行くという手もあるけれど。私はノアと従者のヴィンセントとは面識があっても。
私はヴィスコッティ家と親しい間柄の貴族ではない。
ノアは奇人ではあるが、あの容姿で沢山の縁談がきたとのことだから、女性である私が訪ねてもお茶を出されて歓迎されている風に装われても、うまくあしらわれてノアに会うことはできないという可能性がある。
というか、会えない可能性のほうが高い。
だって実際に会えば意識しえもらえるかもと夢をみた令嬢たちがヴィスコッティ家にノアと約束もせずに行った場合どういった対応を取られるかが噂になっていたのだ。
爵位が低ければ、当然門前払い。
同格であっても、本人に話がいったのかどうかわからずノア本人は決して出てこないことは有名な話しだ。
あーもう。私は気になることは先にさっさと潰しておきたいタイプなのよ。どうしてこんな話を聞きたいようなことを残して、挨拶もせずにいなくなるの。
イライラしている私に、セバスが1通の手紙を差し出してきた。
「テーブルにお嬢様宛てのお手紙が」
手紙には、一度家に戻ることになった。
すぐに戻る。
だけしか書かれていなかった。
手紙の文字からは、それが嘘か本当かは見抜けない。
でも、私からノアに連絡する手段などもうないに等しい。
次に彼に会えるとしたら、せいぜい2カ月後の王都でのパーティーくらいだ。
それも、辺境地に領地をもつ私が王都の中心貴族の傍で話すことなど不可能だ。
好きには2種類ある。
愛しているという意味と友達や家族として好いているという意味だ。
私は好きなの? と聞いた。
これじゃ、どっちなのかわからないのだと今更気がついた。
となると、手紙のすぐ戻るなど、加護を使わなくても嘘だとわかる。
私はゴシップが大好きだ。
占い師をやって庶民のゴシップにまで首を突っ込むほどに。だから、わかる。
連絡の手段がないのだから、後日丁寧なわび状がきて終わるのだ。
ノアは占い師の正体を知って、目的を達してしまった。
彼がもうマクミラン領にとどまる理由も、訪問する理由もない。
ノアが帰ったことがわかると、屋敷もこれまでの来客対応モードから、通常モードへと切り替わる。
メイドたちは何も口に出さない。
でも婚約の話が何一つ具体的に進んでいないうちに、ノアが自分の家へと戻る前に私に挨拶もせずに去ったのだ。
皆どういうことかわかっているのだろう。
私がノアが使っていた客室からでると、メイドたちが別の客がきてもいいように、すぐに片付けを始めた。
寝室に入り、いつもより早くベッドに横になった私はけたたましいノックで起こされたのだ。
一体何事かと思うと扉の前にセバスが立っていた。
「こんな時間に一体何事?」
「お譲様大変でございます」
セバスが深刻そうに言うので、ノアがマクミラン領に長期滞在したことでヴィスコッティ家から何か言われたのだろうかと震えた。
「まさか、ヴィスコッティ家から――」
「はい、お戻りになられました」
「え?」
予想していなかった返しに、変な顔になってしまう。
「このような時間帯で、メイドの多くは家に戻っております。うちは住み込みのメイドがほとんどおりません。しかし、今朝まで使われていた部屋は、てっきり帰られたのだと片付けてしまっていて。すぐに使える状態ではありません。とりあえずシーツ類だけでも、準備しないと寝れません」
「ちょっと、待って、待って、戻っていらしたの?」
「はい。部屋の準備が整っておりませんので」
ウソでしょ……
とりあえず、最低限眠れるようにシーツ類は新しくかけないといけないらしく。それまで、不自然にならないように場を繋いでくださいとセバスは言い残して行ってしまうし。
応接室には、本当にノアがいたのだ。
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