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第19話 なんで?
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セバスから戻ってきたとの報告を受けているけれど信じられない。
セバスはそういっているけれど、中は誰もいないはずと思いつつ扉をノックしたけれど。
それは入室を許可する声で本当に本当なのだとわかってしまった。
すでに屋敷の主のようなくつろぎっぷりでノアはいた。
ただ、今回は単独でヴィンセントがいない。
「あぁ、ティアか」
「ティア!!」
これまで一度たりとも呼ばれていないファーストネームを呼ばれて驚き思わず復唱してしまった。
名前で呼ぶのは親しいか間柄だけで、私とノアはそのような関係ではない。
戻ってこないと思っていたのに戻ってくるし、極めつけは『ティア』ですって!!
嫌な予感がする。
「遅い時間だったから、わざわざ顔をみせにこなくてもよかったんだが」
ノアがさらに話を続ける言葉に加護により文字が浮かび上がりホントホントとしつこくまとわりつく。
「顔くらい見せます。そんなことよりも一体なぜお戻りに……ご自分の家に帰るのではなかったのですか?」
「あぁ、家には戻ったよ。あれほど私に結婚しろと連日言っていたくせに、あんなに怒るなんて意味がわからないと思わないかい?」
そういうと、ノアは優雅にうちのお客様用の高級茶葉を使った紅茶を口に運ぶ。
あ~ぁ、ひと月の滞在だけで茶葉だけで地味にお金がかかっているとかの問題では済まないことになってる。
そのお話の流れでヴィスコッティ公爵様が怒ったですって!?
ゴクリと思わず唾を飲み込んだ。
「な、何をおっしゃったらそんなに怒らせてしまいましたの?」
嫌な予感に変な汗が背中をつたう。
私はとても丁寧にノアにその理由を問いただした。
悪い顔をしてノアは立ち上がるとドアの前に立ち尽くしている私のところにゆっくりとやってくる。
そして私の目の前で立ち止まると、子供に言い聞かせるときのように、私に目線の高さを合わせてこういったのだ。
「ティアと結婚すると言っただけだよ」 と。
ノアの言葉が宙に浮かび上がりまとわりつくホントホントの文字。
「はいぃぃぃ?」
思わず目を見開いて変な返事をしてしまう。
「そんなに驚くことではないだろ? もともと私の滞在は君との婚約前のお試しのため。もう1ヶ月以上こちらに滞在して毎日会っていたじゃないか、お試し期間としてはもう十分時間をとっただろう」
まるで何をおかしなことをおっしゃいますやらと言わんばかりの口調でそういうと、ハハっとノアは爽やかに笑った。
いやいやいや、ちょっと待ってよ。
「十分に時間をって……あなた私に賭けを持ちかけてきたことをお忘れになりましたの?」
「賭け? はて、なんのことだろう?」
きょとんっという顔をしてノアは白々しくそういうけれど、加護のお掛けで彼は忘れてないことはこっちはお見通しなのよ。
「ヴィスコッティ様がお忘れでも、私とセバスが忘れておりませんから」
私一人をどうこうすればいい話ではないのだとノアに釘を刺した。
「ノアでかまわないよ。結婚するんだからそんな堅苦しい呼び方で呼ばないで」
話をそらそうとしてもそうはいかないんだから。
「今は呼び名の話をしているわけではございません。お話を意図的にそらすのはおやめください」
「うーん、困ったな。ということはアレは私がみた夢ではないと?」
「そうですね。残念ながら……」
「まぁ、夢だったほうが好都合なのは君のほうだと思うが……。夢じゃなかったとして、婚約の話を進めて何か不都合でも?」
そう、ノアは私の秘密を知っているのだ。占い師という趣味、人のゴシップが大好き……荒稼ぎした金。いったいどこまで知っているのかと生唾を飲み込んでしまった。
不都合……不都合な点。
私の領地は僻地でなまじ爵位が高いのもあって、普通の人物は婿入りなど考えてくれない。
私のところに来るのは裏があったり、なるほどと理由に納得してしまうような人物ばかりだった。
「あなたはもともと占い師を探しに来たのであって、私に婚約を申し込みにきたのではないのでは?」
「そうだね。でも、以前パーティーで私は言われたんだ。『出会い方は大事ではない、その後どのような関係を結んでいくかが大事なのです』と。この意味が私はようやくわかったよ」
一体誰よパーティーで余計なことをノアに吹き込んだ令嬢は!!!!
いや、でも問題は私と婚約をすることじゃない。ヴィスコッティ公爵様が怒ったということだ。
「パーティーでいただいた名言についてはおいおいお話を聞くことといたしまして。えっとヴィスコッティ様、公爵様とはどのようなお話を?」
恐る恐る聞いてみる。
「ノア」
「……」
「ノア」
もうほんと折れる気がない性格とかなんなのよもう。
「ノア様……こ、公爵様はなんと」
私は妥協した。状況を把握するために。
「様はいらない。婚約をするのだから『ノア』と。この前が君の素だろう、なぜシレっと猫を被ろうと思ったのかとても興味深い」
まじめな顔で私が猫を被っていることを追求されて流石に恥ずかしくなる。
「ノア、ノア、ノア! これでいいでしょう。公爵様にはだからなんて話をしてきたの?」
「『あちらから是非にと請われて結婚をすることに決めました。だから婿に行きます。これで、私が結婚しないことにやきもきしなくて済みますね父上』と言ったら『何を考えているんだ!』と言っていたね」
確かに私の父はくいぎみだった……だったけど。
なんてこと言ってくれてんだ!!! とホント、ホントと浮かぶ文字をみて私は頭を抱えた。
ジーザス……
「心配することはない。私はどこに婿に行くとは一言も言っていない。父に見つかる前に既成事実だけ作ってしまえば問題ないだろ」
めちゃくちゃいい笑顔でそう言い切られてしまうけれど。
「アンタほんとなんてことしてくれてんのよぉぉぉ」
セバスはそういっているけれど、中は誰もいないはずと思いつつ扉をノックしたけれど。
それは入室を許可する声で本当に本当なのだとわかってしまった。
すでに屋敷の主のようなくつろぎっぷりでノアはいた。
ただ、今回は単独でヴィンセントがいない。
「あぁ、ティアか」
「ティア!!」
これまで一度たりとも呼ばれていないファーストネームを呼ばれて驚き思わず復唱してしまった。
名前で呼ぶのは親しいか間柄だけで、私とノアはそのような関係ではない。
戻ってこないと思っていたのに戻ってくるし、極めつけは『ティア』ですって!!
嫌な予感がする。
「遅い時間だったから、わざわざ顔をみせにこなくてもよかったんだが」
ノアがさらに話を続ける言葉に加護により文字が浮かび上がりホントホントとしつこくまとわりつく。
「顔くらい見せます。そんなことよりも一体なぜお戻りに……ご自分の家に帰るのではなかったのですか?」
「あぁ、家には戻ったよ。あれほど私に結婚しろと連日言っていたくせに、あんなに怒るなんて意味がわからないと思わないかい?」
そういうと、ノアは優雅にうちのお客様用の高級茶葉を使った紅茶を口に運ぶ。
あ~ぁ、ひと月の滞在だけで茶葉だけで地味にお金がかかっているとかの問題では済まないことになってる。
そのお話の流れでヴィスコッティ公爵様が怒ったですって!?
ゴクリと思わず唾を飲み込んだ。
「な、何をおっしゃったらそんなに怒らせてしまいましたの?」
嫌な予感に変な汗が背中をつたう。
私はとても丁寧にノアにその理由を問いただした。
悪い顔をしてノアは立ち上がるとドアの前に立ち尽くしている私のところにゆっくりとやってくる。
そして私の目の前で立ち止まると、子供に言い聞かせるときのように、私に目線の高さを合わせてこういったのだ。
「ティアと結婚すると言っただけだよ」 と。
ノアの言葉が宙に浮かび上がりまとわりつくホントホントの文字。
「はいぃぃぃ?」
思わず目を見開いて変な返事をしてしまう。
「そんなに驚くことではないだろ? もともと私の滞在は君との婚約前のお試しのため。もう1ヶ月以上こちらに滞在して毎日会っていたじゃないか、お試し期間としてはもう十分時間をとっただろう」
まるで何をおかしなことをおっしゃいますやらと言わんばかりの口調でそういうと、ハハっとノアは爽やかに笑った。
いやいやいや、ちょっと待ってよ。
「十分に時間をって……あなた私に賭けを持ちかけてきたことをお忘れになりましたの?」
「賭け? はて、なんのことだろう?」
きょとんっという顔をしてノアは白々しくそういうけれど、加護のお掛けで彼は忘れてないことはこっちはお見通しなのよ。
「ヴィスコッティ様がお忘れでも、私とセバスが忘れておりませんから」
私一人をどうこうすればいい話ではないのだとノアに釘を刺した。
「ノアでかまわないよ。結婚するんだからそんな堅苦しい呼び方で呼ばないで」
話をそらそうとしてもそうはいかないんだから。
「今は呼び名の話をしているわけではございません。お話を意図的にそらすのはおやめください」
「うーん、困ったな。ということはアレは私がみた夢ではないと?」
「そうですね。残念ながら……」
「まぁ、夢だったほうが好都合なのは君のほうだと思うが……。夢じゃなかったとして、婚約の話を進めて何か不都合でも?」
そう、ノアは私の秘密を知っているのだ。占い師という趣味、人のゴシップが大好き……荒稼ぎした金。いったいどこまで知っているのかと生唾を飲み込んでしまった。
不都合……不都合な点。
私の領地は僻地でなまじ爵位が高いのもあって、普通の人物は婿入りなど考えてくれない。
私のところに来るのは裏があったり、なるほどと理由に納得してしまうような人物ばかりだった。
「あなたはもともと占い師を探しに来たのであって、私に婚約を申し込みにきたのではないのでは?」
「そうだね。でも、以前パーティーで私は言われたんだ。『出会い方は大事ではない、その後どのような関係を結んでいくかが大事なのです』と。この意味が私はようやくわかったよ」
一体誰よパーティーで余計なことをノアに吹き込んだ令嬢は!!!!
いや、でも問題は私と婚約をすることじゃない。ヴィスコッティ公爵様が怒ったということだ。
「パーティーでいただいた名言についてはおいおいお話を聞くことといたしまして。えっとヴィスコッティ様、公爵様とはどのようなお話を?」
恐る恐る聞いてみる。
「ノア」
「……」
「ノア」
もうほんと折れる気がない性格とかなんなのよもう。
「ノア様……こ、公爵様はなんと」
私は妥協した。状況を把握するために。
「様はいらない。婚約をするのだから『ノア』と。この前が君の素だろう、なぜシレっと猫を被ろうと思ったのかとても興味深い」
まじめな顔で私が猫を被っていることを追求されて流石に恥ずかしくなる。
「ノア、ノア、ノア! これでいいでしょう。公爵様にはだからなんて話をしてきたの?」
「『あちらから是非にと請われて結婚をすることに決めました。だから婿に行きます。これで、私が結婚しないことにやきもきしなくて済みますね父上』と言ったら『何を考えているんだ!』と言っていたね」
確かに私の父はくいぎみだった……だったけど。
なんてこと言ってくれてんだ!!! とホント、ホントと浮かぶ文字をみて私は頭を抱えた。
ジーザス……
「心配することはない。私はどこに婿に行くとは一言も言っていない。父に見つかる前に既成事実だけ作ってしまえば問題ないだろ」
めちゃくちゃいい笑顔でそう言い切られてしまうけれど。
「アンタほんとなんてことしてくれてんのよぉぉぉ」
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