古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか

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私と恋

第3話 都合のいい子卒業

 数日はブロックしたことに相手が気が付いて別の子経由で連絡がきたらどうしようってドキドキしたり、ブロックしないほうがよかったんじゃとか思っていたけれど。
 もともと雑談したり遊ぼうと誘われることもなくて、唯一連絡がくるときは、授業のことで困った時だけということもあり。
 春休みに私に連絡などする理由もなかったのだろう、ブロックされたことにも気づきもしなかったようだ。

 私はというと、連絡がつかないことを突っ込まれたらどうしようと考える時間は新学期まで十分すぎるほどあった。
 それに私の頭の中は、普段全く連絡をとらない子よりも。
 新学期はもともと仲良くしていた希と裕美のいるグループからぬけ。
 春休みの間旅行をしたり、遊びに行った麗奈たちのグループに移動することにしていたから、そっちの方が緊張する大問題だった。



 課題でも出されない限り私に連絡をしようと思わないだろうし。
 課題の締め切りの数日前にいつも連絡がきていたから、その時になってやっと私が既読すらつけないことに気が付いて、ブロックしていることに気が付くだろうと、相手がいつ気づいて動くかもわかっていたのも大きい。

 案の定、課題提出の1日前に、麗奈、白雪ちゃん、朋ちゃんが私から離れたのを見計らったかのように、私を都合よく友達扱いしてきた伊藤いとう 優菜ゆうなは、大して仲良くもない私に不機嫌な表情を隠しもせず、強い口調で呼び止めてきた。

「ちょっと、石井さん!」
 今までの私だったら相手の表情や口調で怒らせたことに気が付いて、おろおろしてしまっただろうけれど。
 こういう態度をとってくることは想定済みだった。

 そりゃ、夜道で一人でいるときにそういう態度で突っかかってこられたら怖いけれど。
 麗奈たちがいないとはいえ、ここは大学の中だ。
 私の仲いい子は傍にいなくても、あえて人が少ないところにでも行かない限り、名前は知らなくとも誰かしらか生徒とすれ違う。

 そして私は、今日は表情を取り繕わなかった。
 イライラすることがあっても、基本それを表に出さないように私はいつもしていた。
 上手くやっていくための術だと思っていたけれど、理不尽に感情を出してくる相手で、かつ私にとって利用価値が特にない人にまで無駄に愛想よくする理由はない。

「何?」
 いつもだったら、それでもグッとがまんするけれど。私は不機嫌な顔のまま伊藤 優菜に聞き返した。

 私が表情を取り繕わなかったことは、相手にとっては予想外のようで、ちょっとした動揺を見せていたが。
 自分のペースに持ち込むために相手は話を切り出してきた。

「ちょっと場所うつそう?」
 麗奈は結構おかしいことははっきり言うタイプだし、もし戻ってきたらと思っているのだろう。
 いつも教えては、他の人といる時ではなく、私に個別連絡でのみ頼まれていたし。
「なんで?」
 でも、相手に合わせて場所を移動する理由は私にはない。
「なんでって……」
「私に話があるなら、私の移動についてきて話してもらえる?」
 はっきりと言った私の言動とは裏腹に、普段しない行動をしたことで心臓の音うるさいくらい聞こえた。
 そして私は相手の返答を聞かずに、人がより多い食堂へと足を勧める。


 店長の時もそうだった。
 私がこういう事情があるからと断っても無駄だ。
 こういうことをする相手は、初めから私の話をまともに取り合う気はなくて、自分の納得する答えを私が折れて言うまで続けるだけ。

 ここで足を止めて話したところで、相手は今回の謝罪やまた困ったときに私が課題をみせるというまで納得しないだろう。
 だから取り合うだけ無駄だ。



「ちょっと」
 私が相手の話を無視して歩き出すとは思わなかったのか、呼び止めてくる。。
 でも、私はそれに何のリアクションもせずに目的地に向かって足を勧める。
 呼び止めても止まらないとは思わなかったようで、優菜は私の前に割り込むようにはいってくると。
「私何かした?」
 とまるで自分が被害者のように私を問い詰めた。
 流石にぽつぽつといる生徒たちがなんだと目線をやってくる。こんな見られたらたまったものじゃないといつもなら思うことだけれど。
 気まずい視線に私は耐えて不思議そうに聞き返した。


「何かしたって言われても……? そもそも私たちプライベートで遊んだりどころか、雑談とかもしないし。同じ授業を受けることもあるくらいの顔見知りってだけじゃない? 逆に何もしてないのに、なんで私が問い詰められるのか意味が解らないんだけど」
 友達じゃないよねと私ははっきりと自分からいった。


 人に嫌われるのはいまだに怖い。
 それも、親しい人だけじゃなくて。他の人にも変に都合よくつかわれてでも嫌われたくなかった。
 でも、私は十分時間があった。
 彼女とは友達ではないことを認める時間が。


 目の前に立ちふさがる、優菜を普通によけて私は進む。
 私の背中に優菜が言葉をかけた。

「そんなことしてると友達無くすよ!」
 そう言われたら、確実にこれまでの私だったら嫌われたらと思って相手の機嫌を取っていただろうけれど。
 私は歩みを止めて、振り返ると。
「えっと……少なくとも私たちは今も昔も友達じゃないよね? 友達扱いされた覚えないし。じゃぁね」

 これ以上話しても無駄と思った私は、言いたいことをはっきりといって人の多い食堂にはいった。


 優菜はそれ以上おいかけてこなかった。
 私ははっきりとここまでいったことがなくて。強がっていたけれど、手がすごく震えていたのを今も覚えている。
 

 後日優菜も選択している授業を受けたときに、私に聞こえるように名前こそだしてなかったけれど。
 優菜の仲良しの子たちに悪口を言っているのが聞こえた。
 モヤモヤして傷ついた。
 だけど、都合よく困った時だけ友達面して、私ががんばったのを努力せずもっていかれるのが気に入らなかったし。
 嫌いなのはお互い様と無視をして、優菜のブロック解除もしなければ、優菜の機嫌を取ることもなかった。


 優菜のグループとは特に関わることもなかったし、大学生になるとあの子気に入らないから皆でって空気もほぼなくて。
 優菜は相変わらず私が気に入らないようだけど、グループの他の子が私に対してどうかするということもなく、モヤモヤは残るけれど。
 特に困ることもなく、たまにすれ違えば優菜ににらまれる程度でことは終わった。

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