13 / 31
ぬらりひょんと学校
第13話 封印
しおりを挟む
残り1mまでちなみちゃんを引きづけてキツネが投げた札は、ちなみちゃんの額にめがけてまっすぐ飛んでいく。
しかし、札に気がついたちなみちゃんは首をくねらせて札を避けようとした。
ダメだよけられちゃうと思った。その時だ。
「はい、そっち向かないの」
グキッとシュカがむりやりちなみちゃんの首を札のほうに向けたのだ。
そのおかげで札がちなみちゃんの額に張り付いた。
すると、うつろな目が閉じた。
そのとたん、宙をうねうねと漂っていた首が地面にどすりっと音を立てて落ちた。
ひょいっと、シュカはその前に器用に飛び降りると、頭が地面に落ちないように持ち上げた。
「よかった」
私はホッと胸をなでおろした。
「ふんっ僕の札なのだから、こうなるのはあたりまえだ」
「あの~今回一番身体はって頑張ったの俺だからね。それにしても首長いままなんだけど……これ駄目じゃない?」
確かに、ちなみちゃんは動かなくなったけれど、首が屋上ににゅるにゅると伸びたままだ。
「こんなものはだな。こうだ」
キツネはそういうと、ちなみちゃんの身体に触れて何かブツブツとやり始める。
すると、ちなみちゃんの首はするすると、まるで掃除機のコンセントを収納するボタンを押されたときのように短くなっていく。
あっというまに、長い首は元通りになった。
「とりあえず人が来そうだから、場所をかえるよ」
そうってシュカが指をはじいた。
ちなみちゃんをキツネがなんで僕がといいながらもおんぶしてくれたので。人のあまりこない第二校舎の音楽室に連れてきた。
「ほら、妖怪ありがたく受け取るがいい」
キツネはちなみちゃんを床に下ろすとそう言って、小さな軟膏を取り出した。
「なにこれ?」
シュカは怪訝な顔で差し出された物を見つめた。
「あ……主様は優しいお方だ。妖怪のお前にも情けをかけられている。神域に長くとどまれば、いくらぬらりひょんといえども身体に害をなす。あれからまだ日も経っていないのに術を何度も使い身体をあれほど動かしたのだ。平気そうなフリをしているだけで、無理をしているのが神の使いである僕にはわかるからな」
キツネは偉そうにそう言う。
シュカは受け取るとじろじろと眺める。
「あのさ、キツネ。これ俺にくれたってことでいいの?」
「キツネではない、僕には風月という名がある。先ほどは緊急事態ゆえ非常識な呼び方をしていても大人の対応をしたが」
白いキツネはこんこんと説教を始める。
「これさ、もっと早く俺に渡すように託されたんじゃないの?」
シュカがそう言うと、耳としっぽが現れて耳はピーンと、尻尾はぼふっと膨れてピーンとなった。
「ぼ……僕にだって、いろいろ事情が……あって、その」
「じいさんにお礼しにいってもいい?」
じーっとシュカがキツネ風月の目を見てそういうと。
「主様には僕からお前の分もお礼をきちんとしておく」
しどろもどろになりながら、風月はそう言った。
それだけで、なんとなーく風月が軟膏を渡すように託されたけれど、シュカのところにまっすぐ持って行ってやるのが癪だからと今日まで頼まれたのに持ってこなかったのかな? ってことがわかってしまってクスっと笑ってしまう。
「シュカ、わかってて虐めているでしょ。もうおしまい。ところちなみちゃん、私に何か話したいことがあったみたいだったけど。どうして突然あんなことに……」
そう、ちなみちゃんのほうから私に話しかけてくれたのだ。
だから、何か私に話しかける用事があったはずだ。
でも、ちなみちゃんは、途中で目がもうろうとして首が伸びて話しかけても通じなくなっちゃったのだ。
「そんなこともわからないのかお前たちは。しかたあるまい、僕が教えてやろう。それは、ろくろっ首が弱い妖怪だからだ」
いつの間にか制服姿にもどったキツネがフンッと偉そうに咳払いをしてはっきりとそう言った。
首は伸びるし、噛みつこうと攻撃してくるし、かなり強かったと思うのだけれど、あれで弱い妖怪なの?
「いや、さっき二人でかなり苦戦していたじゃない」
どっちが頭を捕まえるかでもめていたし、シュカも頭を捕まえるほうは危ないと言っていたと思う。
「あれは、ちなみちゃんを殺さず止めることが目的だったからだよ。倒すのは、首が伸びて無防備になった身体を狙えばいいから簡単なの」
シュカにそう言われて思い出した。
「確かに首があっという間に伸びたけれど、身体はその場に残っていた」
シュカはちなみちゃんの身体を残しておけないとおんぶして屋上に向かったくらいだ。
「でしょ~。身体を隠しておいても、首の根元を追っていけば身体のところにたどり着けちゃうから、ろくろ首は弱いの。悔しいけど、なんで急にこうなったのか俺にはわかんないんだよね……」
シュカにはやっぱりわからないらしく、教えてもらうのが悔しいけれど理由は知りたいようで不機嫌な表情でキツネをみた。
「ぬらりひょんには弱い妖怪の性などわからにだろう」
ふうっとため息をつくとやれやれと言わんばかりに風月はそう言った。
「しずく、俺ちょーっとじいさんに軟膏のお礼言ってくる」
ニコッとシュカが振り返って私にそう言うと、風月の態度は慌ててシュカを止めた。
「話す、話すから。まったくなんて妖怪だ、神の使いの私を脅すとは……。ただ、一つ聞きたい。先日は聞けなかったことだ。とても大事なことなのだ。ぬらりひょんよ、お前はなぜこの娘に名をやり連日学校にくるのだ?」
「それはキツネのアンタには関係ないでしょ」
シュカはそういってそっぽをむいた。
「いや、このろくろっ首の娘にも関係深いことだ。聞かないわけにはいかない。このしずくという娘にお前が名をやらねばならない事態が起こったのではないか? ちょうどお前が学校にその娘と出入りするようになってくらいだ。稲荷の結界を越えて学校の敷地に何かが入ったと思われるのだ」
風月はまじめな顔で私とシュカの顔を見つめてそう聞いてきた。
しかし、札に気がついたちなみちゃんは首をくねらせて札を避けようとした。
ダメだよけられちゃうと思った。その時だ。
「はい、そっち向かないの」
グキッとシュカがむりやりちなみちゃんの首を札のほうに向けたのだ。
そのおかげで札がちなみちゃんの額に張り付いた。
すると、うつろな目が閉じた。
そのとたん、宙をうねうねと漂っていた首が地面にどすりっと音を立てて落ちた。
ひょいっと、シュカはその前に器用に飛び降りると、頭が地面に落ちないように持ち上げた。
「よかった」
私はホッと胸をなでおろした。
「ふんっ僕の札なのだから、こうなるのはあたりまえだ」
「あの~今回一番身体はって頑張ったの俺だからね。それにしても首長いままなんだけど……これ駄目じゃない?」
確かに、ちなみちゃんは動かなくなったけれど、首が屋上ににゅるにゅると伸びたままだ。
「こんなものはだな。こうだ」
キツネはそういうと、ちなみちゃんの身体に触れて何かブツブツとやり始める。
すると、ちなみちゃんの首はするすると、まるで掃除機のコンセントを収納するボタンを押されたときのように短くなっていく。
あっというまに、長い首は元通りになった。
「とりあえず人が来そうだから、場所をかえるよ」
そうってシュカが指をはじいた。
ちなみちゃんをキツネがなんで僕がといいながらもおんぶしてくれたので。人のあまりこない第二校舎の音楽室に連れてきた。
「ほら、妖怪ありがたく受け取るがいい」
キツネはちなみちゃんを床に下ろすとそう言って、小さな軟膏を取り出した。
「なにこれ?」
シュカは怪訝な顔で差し出された物を見つめた。
「あ……主様は優しいお方だ。妖怪のお前にも情けをかけられている。神域に長くとどまれば、いくらぬらりひょんといえども身体に害をなす。あれからまだ日も経っていないのに術を何度も使い身体をあれほど動かしたのだ。平気そうなフリをしているだけで、無理をしているのが神の使いである僕にはわかるからな」
キツネは偉そうにそう言う。
シュカは受け取るとじろじろと眺める。
「あのさ、キツネ。これ俺にくれたってことでいいの?」
「キツネではない、僕には風月という名がある。先ほどは緊急事態ゆえ非常識な呼び方をしていても大人の対応をしたが」
白いキツネはこんこんと説教を始める。
「これさ、もっと早く俺に渡すように託されたんじゃないの?」
シュカがそう言うと、耳としっぽが現れて耳はピーンと、尻尾はぼふっと膨れてピーンとなった。
「ぼ……僕にだって、いろいろ事情が……あって、その」
「じいさんにお礼しにいってもいい?」
じーっとシュカがキツネ風月の目を見てそういうと。
「主様には僕からお前の分もお礼をきちんとしておく」
しどろもどろになりながら、風月はそう言った。
それだけで、なんとなーく風月が軟膏を渡すように託されたけれど、シュカのところにまっすぐ持って行ってやるのが癪だからと今日まで頼まれたのに持ってこなかったのかな? ってことがわかってしまってクスっと笑ってしまう。
「シュカ、わかってて虐めているでしょ。もうおしまい。ところちなみちゃん、私に何か話したいことがあったみたいだったけど。どうして突然あんなことに……」
そう、ちなみちゃんのほうから私に話しかけてくれたのだ。
だから、何か私に話しかける用事があったはずだ。
でも、ちなみちゃんは、途中で目がもうろうとして首が伸びて話しかけても通じなくなっちゃったのだ。
「そんなこともわからないのかお前たちは。しかたあるまい、僕が教えてやろう。それは、ろくろっ首が弱い妖怪だからだ」
いつの間にか制服姿にもどったキツネがフンッと偉そうに咳払いをしてはっきりとそう言った。
首は伸びるし、噛みつこうと攻撃してくるし、かなり強かったと思うのだけれど、あれで弱い妖怪なの?
「いや、さっき二人でかなり苦戦していたじゃない」
どっちが頭を捕まえるかでもめていたし、シュカも頭を捕まえるほうは危ないと言っていたと思う。
「あれは、ちなみちゃんを殺さず止めることが目的だったからだよ。倒すのは、首が伸びて無防備になった身体を狙えばいいから簡単なの」
シュカにそう言われて思い出した。
「確かに首があっという間に伸びたけれど、身体はその場に残っていた」
シュカはちなみちゃんの身体を残しておけないとおんぶして屋上に向かったくらいだ。
「でしょ~。身体を隠しておいても、首の根元を追っていけば身体のところにたどり着けちゃうから、ろくろ首は弱いの。悔しいけど、なんで急にこうなったのか俺にはわかんないんだよね……」
シュカにはやっぱりわからないらしく、教えてもらうのが悔しいけれど理由は知りたいようで不機嫌な表情でキツネをみた。
「ぬらりひょんには弱い妖怪の性などわからにだろう」
ふうっとため息をつくとやれやれと言わんばかりに風月はそう言った。
「しずく、俺ちょーっとじいさんに軟膏のお礼言ってくる」
ニコッとシュカが振り返って私にそう言うと、風月の態度は慌ててシュカを止めた。
「話す、話すから。まったくなんて妖怪だ、神の使いの私を脅すとは……。ただ、一つ聞きたい。先日は聞けなかったことだ。とても大事なことなのだ。ぬらりひょんよ、お前はなぜこの娘に名をやり連日学校にくるのだ?」
「それはキツネのアンタには関係ないでしょ」
シュカはそういってそっぽをむいた。
「いや、このろくろっ首の娘にも関係深いことだ。聞かないわけにはいかない。このしずくという娘にお前が名をやらねばならない事態が起こったのではないか? ちょうどお前が学校にその娘と出入りするようになってくらいだ。稲荷の結界を越えて学校の敷地に何かが入ったと思われるのだ」
風月はまじめな顔で私とシュカの顔を見つめてそう聞いてきた。
0
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる