24 / 31
私たちと市街地
第24話 心の隙間
しおりを挟む
わかっているの。
このままじゃ他の誰でもない人間の私が危ないってことを。
皆が私のために頑張っていることを。
シュカとの別れがそう遠くない間に来てしまうことを。
わかっているの。でもそれを私はうまく受け入れられなかった。
ちなみちゃんは私のためにしてくれている、でもそれに対して、そんなことしなければ、まだもう少しシュカの傍に入れるのにって思ってしまう自分がいる。
そんなことを考える私を罰するかのように、私の心がずきずきと痛んだ。
電気を消してベッドに横になった。いつもは割とすぐに寝るシュカのほうから珍しく話しかけてきた。
「俺さ、ここでお世話になってどれくらいたったっけ?」
「えっと、四……いや、もう五カ月近くたってるよ」
「もうそんなに経ってる? 確かにもう夏服じゃないもんね。そんな長い間お世話になってたか。まぁ、それももう少しなんだと思うと、ちょっとさびしい……かな」
シュカの口からさびしいって言葉が出て以外だった。
「あーしずく、俺がさびしいとか言うの以外とか失礼なこと思ってない? ぬらりひょんはさ孤独なの。人の輪には入れるけれど、人は俺がいたことを忘れるし。妖怪はさ、あのカッパみたいに畏れて絶対に近づいてこない。明日は何するって話できるのすごい新鮮だったなぁ。ミチのご飯も毎日おいしいしね。ここんちの子になろうかな俺」
恥ずかしくなったのか、いつものようにシュカは冗談でごまかそうとする。
「なってもいいよ。最初は漫画勝手に読むし、私の家で私よりくつろぐところ気になってたけどさ。今はシュカがいなくなったら凄くさびしいんだろうなって思うもん」
私がシュカにそういうと。
「あーそういうの俺本気にしちゃうタイプなんだけど。まぁ、しずくはこのままじゃ危ないからそれを何とかしてから考えるかな。気付いてもらえたことで俺の術がまだまだだってこともわかったし、めんどいこともあったけど、俺は割と楽しんでるから」
そう、シュカとの毎日は楽しかった。
学校の七不思議を調べに行ったり、神様の社に招待されたり、知っていた子がまさかのろくろっ首っていう妖怪だったことがわかったり、ろくろっ首の友達が私にできたり。
そう言えばカッパも見えたし私って妖怪見えるようになってる……思い出してクスっと笑ってしまった。
「うーん、本当に普通に生活していたら一生できないような経験したかも」
「まぁ、人間は妖怪とか普通は見えないからねー。明日もう一回カッパのところに行ってみよ。もしかしたら、もう誰か知り合いの妖怪見れるかも」
「えっ、もう明日?」
そんな早くにカッパのところに行くの?
「うん、なんかよくわからない妖怪がうろついているし。勝負できるかできないかは聞いてみるまでわかんないけど。なるべく早く蹴りをつけたほうがいいかなって思ってんの」
「そっ、そっか~」
シュカの言うことはもっともだ……でも気持ちの折り合いが付けられない。
「さて。明日も頑張るから寝ますか~おやすみ、しずく」
「うん、おやすみシュカ」
すぐにシュカのほうからは寝息が聞こえてきた。
私は明日でシュカが弱い妖怪に勝つのでは……そしたらお別れって思うとなかなか眠れなかった。
横を向いたり、上を向いたり、反対側を向いてみたりといろいろいてみるけれど。いろいろ考えいる私は一向に寝れない。
受け入れなきゃ、シュカは私が危ない目にこれ以上合わないためにしてくれているんだから。
私が寝れたのは、お日様がでてきて辺りがほんのり明るくなってからだった。
「ふわぁあーー」
寝不足であくびをしてしまう。
「ちょっと、あんま寝れなかったの?」
「うん」
眠くて目を思わずこすってしまう。
「まぁ、この前あんなことがあったからね。そりゃ寝付けないか。でも、心配しないでよ。それも今日で終わりかもしれないから。ほら、しずく早く学校に行こう」
シュカの言葉にうなづいたけれど、複雑だった。
なんとか授業をこなしたけれど、眠い。
「あーもうしょうがないな」
私は思わず机に突っ伏した。
「もう、どんだけ眠いの? ちゃんと夜はねなよ……もう、しょうがないなぁ」
そういって、シュカは後ろを向いてかがむ。
私は意味がわからなくてシュカの背中を見つめた。
「ほら、乗るの? 乗らないの? 大サービスなんだから。ほら、さっさと行くよ」
そう言うシュカの背中に私は飛び乗った。
「うわっ、勢い考えてよもう。前に倒れるじゃん」
そういいながらもシュカは私をおんぶして歩き出す。
「なんだその姿は……」
おんぶされている姿に風月は眉をひそめた。
「しずく、あんなことに巻き込まれてから日が経ってないでしょ。あんまり寝れなかったらしくてさ」
「あっあ、あんなことがありましたから。しょしょうがないですよ。早く解決して、もう怖い目にあわないようにしないとですね」
「そうなんだよね、んじゃ行こう~」
そういって、歩き始める。
歩く振動が心地よくて、妖怪も心臓があるのか、くっつくと心臓の音がするのに安心して眠くなる。
こうしていると、人間の男の子とちっとも変らない。
ちなみちゃんは、明らかに首が伸びるっていう妖怪らしい特徴があったし。
風月は妖怪じゃないけれど、キツネだし、人間の姿で耳としっぽだけポンッと出る姿はやっぱり人とは呼べないだろう。
その点シュカは完全に見た目が人なのだ。
人の家を渡り歩くだけあって、人らしく振舞うその姿は、妖怪ということを忘れそうになる時がある。
ちょっとめんどくさがりなところはあるけれど、頼りがいがあって、いざという時かっこいい。
シュカが人間の男の子だったらよかったのに。
そしたら、私は……私は……
「おい、しずく。なんだその首のあざは!?」
その時、風月が大きな声を出したのだ。
大きな声なのはわかる、そんなことより眠い。
『見つけ申した……見つけ申した……心の隙間』
私の頭に先日の妖怪の言葉が急に響く。それでも私は眠くて仕方ない。
シュカがかがんでちなみちゃんと風月が私を地面に横にする。
そんな扱いをされているのに私は眠い。
あぁ、眠い。眠い。
「もう…………遅い」
昨日の奴の声だった。
私の頭がフカッとしたものに触れる。
あっ、枕だ。
私、凄く眠くてそれで。
その枕はクルンっとひっくり返される。
「しまった」
風月が急いで札を取り出そうとする姿、ちなみちゃんがおろおろとしている姿。
ゆっくりと閉じられる瞼、私が最後に見たのは、私に慌てて手を伸ばす焦ったシュカの顔だった。
あぁ、シュカ……どうしてあなたは妖怪だったの?
……人間の男の子だったらよかったのに。
このままじゃ他の誰でもない人間の私が危ないってことを。
皆が私のために頑張っていることを。
シュカとの別れがそう遠くない間に来てしまうことを。
わかっているの。でもそれを私はうまく受け入れられなかった。
ちなみちゃんは私のためにしてくれている、でもそれに対して、そんなことしなければ、まだもう少しシュカの傍に入れるのにって思ってしまう自分がいる。
そんなことを考える私を罰するかのように、私の心がずきずきと痛んだ。
電気を消してベッドに横になった。いつもは割とすぐに寝るシュカのほうから珍しく話しかけてきた。
「俺さ、ここでお世話になってどれくらいたったっけ?」
「えっと、四……いや、もう五カ月近くたってるよ」
「もうそんなに経ってる? 確かにもう夏服じゃないもんね。そんな長い間お世話になってたか。まぁ、それももう少しなんだと思うと、ちょっとさびしい……かな」
シュカの口からさびしいって言葉が出て以外だった。
「あーしずく、俺がさびしいとか言うの以外とか失礼なこと思ってない? ぬらりひょんはさ孤独なの。人の輪には入れるけれど、人は俺がいたことを忘れるし。妖怪はさ、あのカッパみたいに畏れて絶対に近づいてこない。明日は何するって話できるのすごい新鮮だったなぁ。ミチのご飯も毎日おいしいしね。ここんちの子になろうかな俺」
恥ずかしくなったのか、いつものようにシュカは冗談でごまかそうとする。
「なってもいいよ。最初は漫画勝手に読むし、私の家で私よりくつろぐところ気になってたけどさ。今はシュカがいなくなったら凄くさびしいんだろうなって思うもん」
私がシュカにそういうと。
「あーそういうの俺本気にしちゃうタイプなんだけど。まぁ、しずくはこのままじゃ危ないからそれを何とかしてから考えるかな。気付いてもらえたことで俺の術がまだまだだってこともわかったし、めんどいこともあったけど、俺は割と楽しんでるから」
そう、シュカとの毎日は楽しかった。
学校の七不思議を調べに行ったり、神様の社に招待されたり、知っていた子がまさかのろくろっ首っていう妖怪だったことがわかったり、ろくろっ首の友達が私にできたり。
そう言えばカッパも見えたし私って妖怪見えるようになってる……思い出してクスっと笑ってしまった。
「うーん、本当に普通に生活していたら一生できないような経験したかも」
「まぁ、人間は妖怪とか普通は見えないからねー。明日もう一回カッパのところに行ってみよ。もしかしたら、もう誰か知り合いの妖怪見れるかも」
「えっ、もう明日?」
そんな早くにカッパのところに行くの?
「うん、なんかよくわからない妖怪がうろついているし。勝負できるかできないかは聞いてみるまでわかんないけど。なるべく早く蹴りをつけたほうがいいかなって思ってんの」
「そっ、そっか~」
シュカの言うことはもっともだ……でも気持ちの折り合いが付けられない。
「さて。明日も頑張るから寝ますか~おやすみ、しずく」
「うん、おやすみシュカ」
すぐにシュカのほうからは寝息が聞こえてきた。
私は明日でシュカが弱い妖怪に勝つのでは……そしたらお別れって思うとなかなか眠れなかった。
横を向いたり、上を向いたり、反対側を向いてみたりといろいろいてみるけれど。いろいろ考えいる私は一向に寝れない。
受け入れなきゃ、シュカは私が危ない目にこれ以上合わないためにしてくれているんだから。
私が寝れたのは、お日様がでてきて辺りがほんのり明るくなってからだった。
「ふわぁあーー」
寝不足であくびをしてしまう。
「ちょっと、あんま寝れなかったの?」
「うん」
眠くて目を思わずこすってしまう。
「まぁ、この前あんなことがあったからね。そりゃ寝付けないか。でも、心配しないでよ。それも今日で終わりかもしれないから。ほら、しずく早く学校に行こう」
シュカの言葉にうなづいたけれど、複雑だった。
なんとか授業をこなしたけれど、眠い。
「あーもうしょうがないな」
私は思わず机に突っ伏した。
「もう、どんだけ眠いの? ちゃんと夜はねなよ……もう、しょうがないなぁ」
そういって、シュカは後ろを向いてかがむ。
私は意味がわからなくてシュカの背中を見つめた。
「ほら、乗るの? 乗らないの? 大サービスなんだから。ほら、さっさと行くよ」
そう言うシュカの背中に私は飛び乗った。
「うわっ、勢い考えてよもう。前に倒れるじゃん」
そういいながらもシュカは私をおんぶして歩き出す。
「なんだその姿は……」
おんぶされている姿に風月は眉をひそめた。
「しずく、あんなことに巻き込まれてから日が経ってないでしょ。あんまり寝れなかったらしくてさ」
「あっあ、あんなことがありましたから。しょしょうがないですよ。早く解決して、もう怖い目にあわないようにしないとですね」
「そうなんだよね、んじゃ行こう~」
そういって、歩き始める。
歩く振動が心地よくて、妖怪も心臓があるのか、くっつくと心臓の音がするのに安心して眠くなる。
こうしていると、人間の男の子とちっとも変らない。
ちなみちゃんは、明らかに首が伸びるっていう妖怪らしい特徴があったし。
風月は妖怪じゃないけれど、キツネだし、人間の姿で耳としっぽだけポンッと出る姿はやっぱり人とは呼べないだろう。
その点シュカは完全に見た目が人なのだ。
人の家を渡り歩くだけあって、人らしく振舞うその姿は、妖怪ということを忘れそうになる時がある。
ちょっとめんどくさがりなところはあるけれど、頼りがいがあって、いざという時かっこいい。
シュカが人間の男の子だったらよかったのに。
そしたら、私は……私は……
「おい、しずく。なんだその首のあざは!?」
その時、風月が大きな声を出したのだ。
大きな声なのはわかる、そんなことより眠い。
『見つけ申した……見つけ申した……心の隙間』
私の頭に先日の妖怪の言葉が急に響く。それでも私は眠くて仕方ない。
シュカがかがんでちなみちゃんと風月が私を地面に横にする。
そんな扱いをされているのに私は眠い。
あぁ、眠い。眠い。
「もう…………遅い」
昨日の奴の声だった。
私の頭がフカッとしたものに触れる。
あっ、枕だ。
私、凄く眠くてそれで。
その枕はクルンっとひっくり返される。
「しまった」
風月が急いで札を取り出そうとする姿、ちなみちゃんがおろおろとしている姿。
ゆっくりと閉じられる瞼、私が最後に見たのは、私に慌てて手を伸ばす焦ったシュカの顔だった。
あぁ、シュカ……どうしてあなたは妖怪だったの?
……人間の男の子だったらよかったのに。
0
あなたにおすすめの小説
ママのごはんはたべたくない
もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん
たべたくないきもちを
ほんに してみました。
ちょっと、おもしろエピソード
よんでみてください。
これをよんだら おやこで
ハッピーに なれるかも?
約3600文字あります。
ゆっくり読んで大体20分以内で
読み終えると思います。
寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。
表紙作画:ぽん太郎 様
2023.3.7更新
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
先祖返りの姫王子
春紫苑
児童書・童話
小国フェルドナレンに王族として生まれたトニトルスとミコーは、双子の兄妹であり、人と獣人の混血種族。
人で生まれたトニトルスは、先祖返りのため狼で生まれた妹のミコーをとても愛し、可愛がっていた。
平和に暮らしていたある日、国王夫妻が不慮の事故により他界。
トニトルスは王位を継承する準備に追われていたのだけれど、馬車での移動中に襲撃を受け――。
決死の逃亡劇は、二人を離れ離れにしてしまった。
命からがら逃げ延びた兄王子と、王宮に残され、兄の替え玉にされた妹姫が、互いのために必死で挑む国の奪還物語。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる