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夢と現実のはざま
第27話 望んだ世界②
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シュカは私の家の近所に引っ越してきた私と同い年の男の子で。
席が隣になってから急に仲良くなったの。
お父さんとお母さんは帰りが遅いらしくて、私の母親とシュカの母親が友達だったから、結構な頻度で家でご飯とお風呂まではいって夜になれば帰っていく。
朝になると、シュカが私のことを呼びに来て、学校に行て放課後になれば、ちなみちゃんも一緒になって遊ぶ。
ちなみちゃんの首は伸びるはずもなく、夢の話をちなみちゃんにしたら怯えさせてしまい、シュカはどん引きした表情で私を見つめていた。
もう大丈夫。
これでずっと、このまま楽しい時間を私も一緒にすごせる。
それでも、不安でこっちの世界が、本当の世界なのだと確かめたくて、私は夢の中でシュカと回った学校の七不思議を見て回ることにした。
あの時と同じ、シュカと二人で。
第二校舎の3階は誰もいなくてそれが不気味だった。
「でっ、どっち? 音楽室の目の光るベートーベンと上りは12段、下りは13段の振り返ったら駄目な階段とあるけど」
シュカはなんだかんだいって、私の確認作業について来てくれて、腕を組んで私を見た。
最初に調べたのは階段だった。
夕方、第二校舎の三階から屋上に続く音楽室横の階段。
上る時は12段なんだけど、降りるときは13段になる。
それで数がおかしいって階段の数をちゃんと数えようと後ろを振り返るとってやつだ。
「階段にする」
「よし、それじゃぁ数えよう」
シュカはそういって、私の手を引いた。
私はそれにうなずいて二人で手を繋ぎながら1歩踏み出す。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
「12段だね」
確認するかのようにシュカが声に出してそう言った。
「次はいよいよ下りね……本当に13段あったらどうしよう」
「そんときは、そんときで考えればいいの~」
シュカと手を繋いで、上りと同じように数を二人で声に出しながら階段を下りる。
13段目はある? 13段目があったらどうしょう。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうにー」」
十二段だったことにホッと心の中で一息をついたその時だ。
「じゅうさーん」
後ろからそう聞こえたのだ。
聞き慣れた声で。
「振り向くな」
手を繋いでいるほうのシュカが私にそう制止の言葉をかける。
けれど、あの時とは違い、今度はシュカではなく私が思わず振り返った。
階段の数を数えるためじゃない、十三段目を数えた人物を見るために。
そこには学校には不釣り合いなチャイナ服を着た夢の中で会っていたシュカが立っていた。
「しずく探した」と。
見慣れたシュカが現れたことで、私は手を繋いでいるほうのシュカのことが急に怖くなる。
それでも、手を繋いでいるほうのシュカが私のことを夢の中のように背にかばって、突然現れたもう一人のシュカの前に立ちはだかり口を開く。
「何、ドッペルゲンガーってやつ?」と。
でも、今回私の前に立っているのが、見慣れた格好のシュカだったから私はちっとも怖くなかった。
二人は何も言わない。
ただ、目の前に立っているチャイナ服のシュカのほうは、私達をじーっと見つめていた。
そして、こういった。
「帰ろう」と。
その言葉を聞くと、急に私は帰らなきゃって気持ちになって、見慣れたチャイナ服姿のシュカのほうに歩きだそうとする。
「ちょっ、しずく。何やってんの」
そういってシュカ止められる。
「あれ、私普通にそっちに帰ろうって言われてそっちいきそうだった」
「気をつけてよ。ここに現れる妖怪ってそう言う妖怪でしょ」
『俺、こういう妖怪なんで』
シュカのセリフが夢とだぶる。
「ねぇ、しずく落ち着いて聞いて。しずくは妖怪に術をかけられて眠ってる。これはしずくの夢の中の世界なんだ。迎えに来た、一緒に帰ろう」
チャイナ服を着たシュカがゆっくりと階段を下りてきて、こっちにおいでって手を伸ばす。
こちらの世界のほうが夢……
やっぱりシュカは妖怪ぬらりひょん。
じゃぁ、今この世界にいるのって危ないじゃない、早く戻らなきゃそう思ったその時だ。
「しずくしっかりしろ。人間と妖怪がいつまでも一緒にいれるわけないだろ」
そういって、人間のシュカが私の手をギュッと握って私を見つめてきた。
私は人間でシュカは妖怪、だからずっと一緒には入れない。
もし戻ったら、今はシュカが隣にいても、いずれシュカはいなくなる。
その手をずっと私が握っていることはできないのだ。
ギュッと抱きしめられた。
こっちのシュカは人間。
人間のシュカは私の前から消えたりしない。私が彼のことを忘れたりしない。
「しずく、逃げるよ」
人間のシュカに手を引かれて私は走った。
「ちょっ、待って」
制止の声がかけられる、でもシュカが妖怪だったら。いつか別れの時が必ず来てしまう。
そんなの嫌だ……
席が隣になってから急に仲良くなったの。
お父さんとお母さんは帰りが遅いらしくて、私の母親とシュカの母親が友達だったから、結構な頻度で家でご飯とお風呂まではいって夜になれば帰っていく。
朝になると、シュカが私のことを呼びに来て、学校に行て放課後になれば、ちなみちゃんも一緒になって遊ぶ。
ちなみちゃんの首は伸びるはずもなく、夢の話をちなみちゃんにしたら怯えさせてしまい、シュカはどん引きした表情で私を見つめていた。
もう大丈夫。
これでずっと、このまま楽しい時間を私も一緒にすごせる。
それでも、不安でこっちの世界が、本当の世界なのだと確かめたくて、私は夢の中でシュカと回った学校の七不思議を見て回ることにした。
あの時と同じ、シュカと二人で。
第二校舎の3階は誰もいなくてそれが不気味だった。
「でっ、どっち? 音楽室の目の光るベートーベンと上りは12段、下りは13段の振り返ったら駄目な階段とあるけど」
シュカはなんだかんだいって、私の確認作業について来てくれて、腕を組んで私を見た。
最初に調べたのは階段だった。
夕方、第二校舎の三階から屋上に続く音楽室横の階段。
上る時は12段なんだけど、降りるときは13段になる。
それで数がおかしいって階段の数をちゃんと数えようと後ろを振り返るとってやつだ。
「階段にする」
「よし、それじゃぁ数えよう」
シュカはそういって、私の手を引いた。
私はそれにうなずいて二人で手を繋ぎながら1歩踏み出す。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうに!」」
「12段だね」
確認するかのようにシュカが声に出してそう言った。
「次はいよいよ下りね……本当に13段あったらどうしよう」
「そんときは、そんときで考えればいいの~」
シュカと手を繋いで、上りと同じように数を二人で声に出しながら階段を下りる。
13段目はある? 13段目があったらどうしょう。
「「いーち、にーい、さーん、しーい、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう、じゅういち、じゅうにー」」
十二段だったことにホッと心の中で一息をついたその時だ。
「じゅうさーん」
後ろからそう聞こえたのだ。
聞き慣れた声で。
「振り向くな」
手を繋いでいるほうのシュカが私にそう制止の言葉をかける。
けれど、あの時とは違い、今度はシュカではなく私が思わず振り返った。
階段の数を数えるためじゃない、十三段目を数えた人物を見るために。
そこには学校には不釣り合いなチャイナ服を着た夢の中で会っていたシュカが立っていた。
「しずく探した」と。
見慣れたシュカが現れたことで、私は手を繋いでいるほうのシュカのことが急に怖くなる。
それでも、手を繋いでいるほうのシュカが私のことを夢の中のように背にかばって、突然現れたもう一人のシュカの前に立ちはだかり口を開く。
「何、ドッペルゲンガーってやつ?」と。
でも、今回私の前に立っているのが、見慣れた格好のシュカだったから私はちっとも怖くなかった。
二人は何も言わない。
ただ、目の前に立っているチャイナ服のシュカのほうは、私達をじーっと見つめていた。
そして、こういった。
「帰ろう」と。
その言葉を聞くと、急に私は帰らなきゃって気持ちになって、見慣れたチャイナ服姿のシュカのほうに歩きだそうとする。
「ちょっ、しずく。何やってんの」
そういってシュカ止められる。
「あれ、私普通にそっちに帰ろうって言われてそっちいきそうだった」
「気をつけてよ。ここに現れる妖怪ってそう言う妖怪でしょ」
『俺、こういう妖怪なんで』
シュカのセリフが夢とだぶる。
「ねぇ、しずく落ち着いて聞いて。しずくは妖怪に術をかけられて眠ってる。これはしずくの夢の中の世界なんだ。迎えに来た、一緒に帰ろう」
チャイナ服を着たシュカがゆっくりと階段を下りてきて、こっちにおいでって手を伸ばす。
こちらの世界のほうが夢……
やっぱりシュカは妖怪ぬらりひょん。
じゃぁ、今この世界にいるのって危ないじゃない、早く戻らなきゃそう思ったその時だ。
「しずくしっかりしろ。人間と妖怪がいつまでも一緒にいれるわけないだろ」
そういって、人間のシュカが私の手をギュッと握って私を見つめてきた。
私は人間でシュカは妖怪、だからずっと一緒には入れない。
もし戻ったら、今はシュカが隣にいても、いずれシュカはいなくなる。
その手をずっと私が握っていることはできないのだ。
ギュッと抱きしめられた。
こっちのシュカは人間。
人間のシュカは私の前から消えたりしない。私が彼のことを忘れたりしない。
「しずく、逃げるよ」
人間のシュカに手を引かれて私は走った。
「ちょっ、待って」
制止の声がかけられる、でもシュカが妖怪だったら。いつか別れの時が必ず来てしまう。
そんなの嫌だ……
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