嘘の私が本物の君についたウソ

四宮 あか

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第13話 水着

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『俺の部屋ソファーとかない。ベッドに座ってもらうのはありだと思う?』
 質問が全部ヤバい。それは水着姿ででもってこと? いや、そんなことないよね。おかしいおかしいって私、水着のせいでかなり思考回路がおかしくなっている。
『適当に座ってとかいって自由に座らせたら?』
『そっか……少しくらい触ってもいいと思う?』
 触ってって…………何を? どこを?
 ショウの大きくて骨ばった手がこちらに伸びてきたのを想像してしまって私は頭を横に振った。
『それは私にきかないでよ』
『ムラっときたらどうしたらいい?』
『そんなもん適当な理由つけてトイレ籠ってろ。私に聞くなバカ!』
 そこで私は話を打ち切ったというか、これ以上きけなかった。


 そんなこんなで、ショウの悩みに回答していたこともあって、私はいろんなパターンを考えてしまっていた。



 当日ショウは待ち合わせ時間より早く駅に来た。
 私はそれにヒラヒラと手を振ってこたえる。
 彼の家までの道のりは何回通っただろう。
 今日はゲームをする楽しい日のはずなのに、こんなに足取りが重いなんてこと今までなかったわ。
 荷物の大半はショウが持ってくれたから明らかに足取りが重いのは、メンタルのせいなんだけれど。


 今日のことを、あらぬことまで妄想してしまった結果。おばさん家にいろ! って気持ちになっていた。
 そうすれば、万が一部屋で水着姿でいるのをみられたら困る殻などと、いいわけをすることで水着自体着なくてすむと思ったけれど。
 その願いはむなしく、こんなにおばさんに会いたくて仕方ない日に限って、おばさんはいなかった。
「あれ~誰もいないの?」
 軽い感じで口に出したけれど、心の中ではウソだろおばさーんっと叫んでいた。
「あー、うん」
 ショウはちょっとヤバいという顔をした後、それを隠すのが長い付き合いでわかってしまう。
「これ、一応お邪魔するからってお菓子買ってきてたの。よかったら後で食べてね」
 私の願いはむなしく、最大の逃げ道になりそうなおばさんはいなかった。


 何度もお邪魔した彼の部屋。今日はいつもより片付いてて、その辺にいつも積んであるジャンプもきちんと号順に並んでた。
 友達に見せる部屋ではなく、彼女に見せる部屋になっていた。
「飲み物持ってくるから、適当なところに座ってて」
 いつもの私の愛用のクッションが今日はベッドの上によけられている。
 荷物を隅に置いて、テーブルの近くに適当に座り、お菓子をテーブルに並べてみた。

 そうしているとショウが4種類ものペットボトルを持って部屋に来た。
「何が好きかわかんなくていろいろ買っちゃってさ。好きなの選んで」
 いつものコーラとカルピス以外にお茶とオレンジジュースがある。いつもはたいてい一種類を先に出して、文句をいいつつ2本目を出すスタイルなのに。


 とりあえず、今日のメインであるゲームが始まる。
 ショウのプレイするのをまずは見てたんだけど、わかる、わかるぞ。これ面白い奴だよ。即買いだったかもこれは……
 こうやって、ショウの部屋でゲームをしていると、いつも遊んでる時のようだ。

 次は私の番って順番が来るのを待ちながら、相手のプレイを参考に私の番になったらショウよりうまくやるんだからって向きになっちゃうんだよなぁ。



 遂に順番は回ってきて、コントローラが差し出される。
 受け取ろうと手を伸ばしたけれど、もう少しのところでコントローラをショウは自分のほうに戻した。
 もったいぶって、早く貸してよと思ってついつい不満げな顔をしそうになって、違う!? 今日ユウキじゃないと思いとどまる。


「あの……」
 ショウが口を開いた。
「何?」
「み……ずぎは……」
 そういってチラリとこちらを見てきた。

 やっぱり着なければいけないのね。
 楽しく遊んでいたし何も言わないから、このまま水着のくだりはなかったことになるかと思ったのに。

「持ってきてます……ょ。着ればいいですか?」
 着なくていいよ、あれは承諾するとおもってなかったからとか言うかと思ったけれど。
「はい」
 耳まで真っ赤にしつつショウは『はい』と答えた。
 アカン――もう、着るしかないじゃん。
 オワッタ。


「どこで着替えればいい? トイレとかかな?」
「俺が部屋をでます。着替え終わったら呼んでください」
 ショウは敬語でそういった後、部屋からさっさと出ていってしまった。


 私は観念して着替えることにした。
 水着を着るためとはいえ、ショウの部屋で服を脱ぐことになるなんてこれまで考えたことなかった。

 当然水着だから下着も脱ぐんだけど、ショウの部屋で私今、上半身なーんにもつけてない。
 片想いしてはや10年……何度もお邪魔したこの部屋で、パンツを脱ぐことになるだなんてつい最近までだったら、絶対考えられなかった。
 そんなことを思いつつも、実にあっさりと私はパンツをするりと脱げてしまった。


 水着に着替えたけれど、ショウの部屋には姿鏡などはない。
 さて、念入りにチェックしたけど、多分見えては駄目な物は見えてないと思う。
 ただ、水着って部屋で着たらだめだわ。
 下着姿とどう違うの? 状態だもん。
 着替え終わったけれど、ショウに着替え終わったなど言えない。
 恥ずかしすぎる。


 終わったよといつまで経っても言えずにいるとショウが扉越しに話しかけてきた。
「もう、いいですか?」
 廊下にはクーラーはないから暑いと思う。


 ダメだどうしよう、このままではショウが部屋に入ってきてしまう。
 ベッドの上に置いてあったタオルケットが目に入って思わず掴んでしまう。
「ショウ君、タオルケット借りるね。もう、いいよ」
 タオルケットを頭からかぶり座った。


 扉がゆっくりと開いた。
 タオルケットの塊となった私にずるい、約束と違うとか言うだろうか……
 というか隠さなきゃって思ってタオルケットを被ったのはいいけど、普段ショウが愛用してるだろうものをかぶったら香りがヤバい。
 ショウの匂いに包み込まれてしまってる。


 すぐ隣にショウが座った。近いって、私このタオルケットの下ほぼ下着姿と変わらないんだよ。
 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
「本当に着てる?」
「キテイマス」
 片言で答える。
「見てもいいですか?」
 普段手くらいしか握ってこないのに! なぜ今日に限ってグイグイくるのか、これが水着の力なのか……水着の力なのか!!
「えっと……少しだけ、ね」



 ショウはアクションを起こさない、これは私が自らタオルケットとるの待ちか!
 自分のタイミングで自分の意思ではだけさせるとかもう、もう、もう!!
 それでも、約束を破るわけにはという思いから、ぎゅっと握っていたタオルケットを意を決して少しずつ開いていく。
 15センチほど開くと、タオルケットの下の様子がショウにも絶対確認できるよねってほどあらわになる。
 胸元もウェストも部屋できていると下着にしか見えない水着もしっかりと確認できるようになったと思う。


 やっぱり、見せると約束したのだから、もう少し開いたほうがいいだろうか?
 その時ショウの手がタオルケットを掴んだ。
「えっ」
 思いっきり剥がされると思ったけれど、逆に最初のようにしっかりと中を見えなくされた。
「ちょっとたんま」

 


 
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