嘘の私が本物の君についたウソ

四宮 あか

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第20話 紹介

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『友達のほうが案外いろいろあいつのこと見てたのかも』
『そっか、ならショウ君的には、一つ紹介するのに悩んでたこと解消したんじゃないかな? ごめん、私今からちょっと友達と出かけるから少し返事できないね』
 嘘である。
 こう言っておくことで、ラインがきても返せなかったとき予防だ。
『了解\(゜ロ\)(/ロ゜)/』

 ジュースを持って、部屋へと向かう。
 念の為ユウの携帯は隠しておこう。


 自分の部屋の扉を開けるのってこんな緊張しただろうか。深呼吸をしてゆっくりと扉を開けた。
「ごめん、お待たせ。どっち飲む?」
 そう言って私はカルピスとコーラをショウに見せた。


 さて、紹介の話を一つもしないまま、モンハンの時間が始まってしまった。いや、モンハンはモンハンで楽しいからいいんだけどね。
 いや、それにしても一体いつ切りだすんだよ。何回狩り行くんだよと思うけれど、紹介のことを私は知らないことになっているから切りだせないのがもどかしい。


 そろそろ帰る時間に差し掛かったころようやくショウが口を開いた。
「お前さ彼氏とか考えてる?」
「そりゃ年頃ですからね」
 それらしく返してみる。
「そっか、えっと……俺の友達がさ。ユウキのことを紹介してほしいって言ってて」

 一番好きな人に、とうとう男を紹介される瞬間がやってきてしまった。
 男紹介とか完全に脈なしのやつ。あたまのなかにオワタの顔文字が沢山浮かんだ。
 いいやつだとか、そこそこかっこいいぞとかそれらしいことをショウは言う。
 わかっていたけど、やはり好きな人から、いいやつがいるって紹介を受けるだなんてちょっとキツイなぁ。


「どうする?」
 ショウはそういって私の出方を伺う。
 私も次に進まないといけないのだ。
「……うーん。それじゃ、紹介してもらおうかな」
「あっ、そっか。うん」
 なんだよその反応。
 お前が持ちこんできたんだぞこの話。
「いい人なんでしょ。夏休みもこれからだし会ってみようかな」
「おう……」
 後で私の連絡先をショウから相手に送るということで話はあっさりとついた。


 いつものバイバイの時間だ。
 モンハンのソフトがはいったDSを握り締めたままショウは家に帰る。
「あのさ、なんかあったらすぐ言えよ」
「えっ、そういう人紹介しようとしてるの?」
「そうじゃないけど。こういうので知り合い同士でこじれると嫌じゃん」
 そう言い残してショウは帰って行った。


 なんかあっても、最後私を選んだりしない癖にそういうの言うのはずるいよなぁって思う。
 次に行かなきゃとかこっちは思ってんのになぁ。
 絞められた玄関の扉をぼんやりと眺めた。


 自分で選んでこの立ち位置にいたにも関わらず思わずため息が出た。
 近いくせに遠いなぁ、これからどんどん遠くに行っちゃうんだろうなと考えると寂しくてつらい。


 さてとユウのほうのスマホを取り出す。
『会いたいなぁ』
 絶対ユウキのほうでは言えない一言をユウはあっさりと送れてしまう。
『俺も会いたい、今どこ?』
 即レスで返事がきた。


 返事どうしようと思っていると電話がかかってきた。

「もしもし?」
「今どこ」
「家だよ」
 家といってアッとなる。だって家は家でもユウキの姿で自分の家にいるのだから。
「近くまで行くから会いたい」
 私が欲しかった言葉をいとも簡単にユウはもらえてしまう。
「ごめん、私から言ったんだけどもうすぐご飯なんだ。明日はどうかな?」
 私がそう断るとショウはあっさりとひいて明日会うこととなった。



 隣の市の駅で待ち合わせることにした。
 突然と言うこともあってノープランだ。
 ユウキだったらきっとノープランだと部屋でダラダラゲームかジャンプを読むこととなっていただろう。
 私の視界にショウが入る、思わず顔がほころんで手をひらひらと振ってしまう。いつかウソの私は消えないといけない。だけど今くらいはこのまま傍で甘い夢を見ていたいのだ。


「遅れた?」
 ヤバいという顔でショウは言う。
「遅れてないよ、私が早く着いただけだよ」
 私がそういうと、ショウはヘラっと笑う。
 ぎこちなくこちらに差し出された手が愛しい。
 私も緊張しながら手を伸ばして指をからめた。

「暑いね、今日はどうしようか?」
「図書館いかない?」
「うん」
 そんなやり取りをして図書館へと向かう。

 勉強した時いらいだなぁとか思いながら歩いた。
 何をするのだろう? と思えば、ショウはノートを1冊とまさかのるるぶを取りだしたのだ。
 どうやらこのノートに今日は筆談するつもりのようだ。
 こんなやりとりが楽しい……


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