嘘の私が本物の君についたウソ

四宮 あか

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第30話 楽しむ

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 とりあえず、私は今を楽しむことにした。ユウとしてもユウキとしても。
 ショウの彼女でずっといることはできないし。
 かといって、ショウに本物の彼女ができたら、私はきっと友達でいることがつらくなって、友達としてもショウの傍に入れなくなると思う。


 あれだけ、ヒロインは無理でも友達ならと努力してきたのに、いざ彼にヒロインが現れたらと考えると。
 私は彼の友達Aではいられないのだ。

 こればっかりは、私の気持ちの問題だから、ショウがその後私が避けていることがわかって歩み寄ってきたとしても、落とし所というのが昨日あれからいくら考えても浮かばなかった。


 夏の最後に別れを切り出すかどうかはとりあえず保留。
 とりあえず、ユウがショウの彼女としている間は、同時にユウキもショウの友達として今まで通りメンタル的に傍にいれる。

 だから、この大事な時間を惜しむことにしたのだ。
 どうするかというと、ユウでもユウキでも時間が許せば遊ぼうと思ったのだ。
 といっても、バイトのシフトが入っているのでユウのほうで遊ぶ頻度のほうが、着替えを別の駅まで行ってすることを考えると難しくて。
 ショウの友達ユウキとして、どんどん遊んだ。

 幸いショウが紹介してくれたハルキは部活動にはいっており、夏休みは合宿もあって、なかなか休みらしいものはなく、ラインのやりとり程度続けていればよかったのも功を奏した。
 ショウが好きなのにキープするのはどうなのって思ったけど、どうせ、ショウに私は告白する勇気ないし。
 ショウに本物の彼女がいたらショウから離れるしかないと、ずるく立ち回った。
 リサ姉のアドバイスの影響は少しあるかも。


 友達としてショウと遊ぶのは楽しい。好きは好きだけど、ショウと友達として仲いいからこそ友達として遊ぶのも楽しい。
 気を使わなくてもいいし、ゲームとか漫画のことを長く一緒にいるせいでお互いの好みやプレイスタイルがわかっているのがいいのかもしれない。
「よーし、もう一狩りいくから準備して、すぐ!」
「お前なぁ……」
 とかいいながらも、ショウは準備をしてゲームに付き合ってくれる。
 そんな時だ。ぽつりとショウが私にきりだしてきたのだ。
「ハルキとどうなってる?」
「ん? 連絡は小まめにとってるかな、でもあっち部活で忙しいみたいでショウの家でモンハンした日以降一度も会えてない。ところでショウはいつも家にいるけど彼女は?」
「バイト……結構シフト入れてるみたい。なぁ、今度一緒に様子見に行かない? ほら、ユウキにも紹介したいし」
「カフェでお茶するようなお金はない」
 奢るといわれたところで、ユウと私は同一人物だからどちらか片方しか存在できないし。


「前にも話したけど、本当にバイト先にものすごいイケメンがいて不安なんだって。割と仲良さそうだったし……」
 あぁ、そういえば玲さんは実は女性ですって未だにネタばれしていなかった。
 それに、私はユウと会えるはずがないし何とかしておかないといけない。
 何か……何かショウがぶつぶつ言ってる間に上手いことそれらしい、私がユウのバイト先に一緒に行けない理由がいる。


「彼女さん、普通は嫌がるんじゃないかな……」
「いや、バイト先には来てもいいって本人が言ってたんだって」
「ショウがバイト先に来るほうじゃないよ。彼女からしたら私の存在ってあんまり良く思われないんじゃないかなって」
 ショウに彼女ができた時。もし私が友達としてでもいいと割り切れたとしても、彼氏のところを彼女のようにほいほい出入りできる女の子の幼馴染の存在とか絶対嫌だと思うもん。
 ハルトだって、やんわりショウと私の仲の良さについて聞いてくるときもあったし、そう言うことなんだと思う。
「何言ってんだよ。お前とは赤ちゃんの時からの幼馴染だし……」
「私はショウの幼馴染で、これまでもちろん私達にはそんな男女的な空気になったことは一度たりともないけど。心の中って相手には見えないじゃない」
 私がショウのことをずっと好きだったから、友達の枠に収まろうとしていたことにショウが気がつかなかったように。
 人の心の中というのは見えない。だからこそ、人は不安になるんだと思う。


 ショウは私にそう言われて複雑そうな顔をしている。幼馴染の私の存在が彼女にはどう見えるかとか、ショウは考えたこともなかったのかもしれない。
 だって、私はずっと男の子みたいに髪もベリーショートにしていたし、服装だって男の子よりだったし、読む漫画なんかも全部全部男の子よりだったもんな……
「そりゃ、私が少し前見たく男の子みたいな恰好していれば話は違ってくるかもだけど。オシャレって楽しいし、これからは髪も少し伸ばして女らしさも楽しもうと思ってるからさ……そう言うのもあって、遊び納めって意味もあって遊びに来てるのかもね私」
 そういって、私は自分の髪に触れたけれど、ベリーショートだった髪は今はショートカットくらいの長さになった。
 もう私がベリーショートにする理由がないし、長い髪も一度くらいは経験したいから伸ばすつもりだし。
 女の子らしい恰好をした彼の女友達とか絶対目障りだと思うもん。


「なんだよ、遊び納めって。俺たちは恋人ができたら終わるような友情だったのかよ」
 ムッとした顔でショウがそういった。
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