【R18】剣と魔法とおみ足と

華菱

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入学①

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『-暖かな春の日差しの下、私たち200名、今日この日を無事に迎えることができ、嬉しく思います』



講堂の四隅に置かれた拡声魔道具から鈴の音のような美しい声が響く。

全校生徒の視線を一身に集め、美しい声を響かせるのは、アルミ=セレソ=ユナイト。このユナイト王国の第2王女にしてこの王立魔導騎士養成学園の主席入学者である。



淡い桜色の長髪に切れ長の瞳。透き通った目鼻立ちは上品さの中に力強さも感じさせる。

たが何よりも俺の視線を釘付けにしたのは胸元に主張する美しき双丘である。



「……ねぇ、トーノは王女様のような人が好みなの?」

そう小声で話しかけてきたのは、オトハ=イズミ、俺の幼馴染だ。



「なんだよ、式の最中だろ、後にしろよ」

「わかった、じゃあ後でね」



俺の名前はトーノ=マガネ、ちなみに前世の記憶がある。所謂、転生者である。オトハとは、家が隣同士で、ガキの頃からよく遊んでいた。

彼女は活発な女の子でよく男子に混じって遊んでいたのだ。彼女は喧嘩も強くガキ大将であった。当時、俺は中身が成人男性だとバレないように町の子供たちと遊んでいたためによくパシりにされたものだ。



そんな彼女であったが、今ではとても綺麗になった。当時は短かった栗色の髪を肩口にかかるまで伸ばし、女の子らしさがましていた。その栗色の前髪に見えるのは瑠璃色の髪飾りだ、それはかつて俺が贈ったものであった。



当時、男勝りで喧嘩っぱやい彼女は仲間内から男女やオーガ等と呼ばれていた。それは子供ながらの気になる女の子にいじわるしてしまうものだったのだろう。しかし、それは彼女を傷つけていた。



そんな中、身体は子供、中身は大人であった俺は、オトハを女の子として扱い優しく接していた。髪飾りも男っぽいことを気にしていた彼女を元気付けたくて贈ったものであった。今でも使ってくれているのはとても嬉しい。



髪飾りをプレゼントしてから彼女は、どんどん可愛らしく成っていったように思う、喧嘩をするのをやめ、スカートを履き、彼女の母が言うには家事もよく手伝うようになったらしい。ある日、頬を赤らめながらも髪飾りのお礼だって言って手作りのクッキーをくれたときは不覚にもドキッとしてしまった。……ロリコンじゃないのに。



俺が王立魔導騎士養成学園を目指すと言って勉強を始めた時も、椅子に座ってじっとしてることなんて苦手だろうに、私も一緒に入学すると言って勉強を始めた。



そんなこんなで、今日はその王立魔導騎士養成学園の入学式だ。

この学園は王国1の教育機関で、第2王女が挨拶をしていることからわかるように貴族の子女も多く通っているが、試験にさえ受かれば平民も受け入れている。

二人とも無事に合格して本当によかったと思う。



と、まあ、昔に想いを馳せていると入学式が終了していた。







「トーノ!同じクラスになれて良かったね!」

「ああ、嬉しいよ」

入学式が終わり生徒は各教室へと分かれていった。俺とオトハはAクラスに振り分けられた。なんでも入試の成績順に上から40人一クラスとなっているらしい。俺は次席で、オトハは28位であったために同じクラスになれたようだ。



ということはつまり、主席であるアルミ第2王女も同じクラスなのでは?と辺りを見渡すと、人だかりを見つけた。その中心にいるのはアルミ嬢であった。



アルミ嬢の淡い桜色の髪を中心に、金髪、青髪、翠髪等と様々な色が群がりなんだかカラフルで目がチカチカした。

貴族と平民を見分けるのは簡単だ、髪の色を見ればいい。貴族は大抵、カラフルな髪色をしている。対して平民は俺のような黒髪やオトハのような栗色をしている。



何故、貴族がカラフルな髪色をしているかと言うと、それは体内に流れる精霊の血が影響している。

貴族とはその昔、この世界が異形の怪物に支配されていた折りに精霊と血の契約を交わし怪物どもと闘い、人類の生存領域を拡大していった英雄たちの子孫である。契りを交わした精霊の特性が髪に現れているのだ。



平和になったこの時代において、貴族はかつての英雄ほどの力はないが平民よりかは強い魔力を持っていることが多い。

また、この国において、優秀であれば平民でも官僚にも騎士にもなれるが依然として王を頂点とした階級社会がある。

異形の怪物に立ち向かったものとして、各騎士団長は大貴族が歴任している。



そう、人類がこの世界の支配者となった現代であっても依然として異形の怪物は存在している。そんな脅威に対抗するために組織されたのが魔導騎士団であり、一人前の魔導騎士を育成するのがこの学園の意義である。





「アルミ様、主席挨拶素晴らしかったです」

「2年前、お姉さまの第一王女殿下も新入生主席だったのですよね?」

「姉妹揃って主席だなんてすごいですわ」



皆、口を揃えてアルミ嬢を褒め称えていた。





「―ええ。ありがとう」



アルミ嬢は、桜色の長髪をいじりながら、つまらなそうに答えていた。



俺はそんな彼女たちの様子をぼうっと眺めていたら、ふとアルミ嬢と目があった。

―ん?今、睨まれた?



気のせいかな?アルミ嬢に睨まれた気がした。

彼女に目をつけられるようなことはしてないよな、と心当たりを考えていると担任教師が入室してきた。



担任の指示のもと自己紹介をし、その後、担任から授業説明等を受け入学初日は終了した。







放課後、俺は1人、教室に残っていた。

窓から外の景色を眺めていると、扉が開き、桜色の髪を靡かせて彼女が入室してきた。そう、アルミ=セレソ=ユナイトその人である。



「待たせたわね」

俺を呼び出した彼女はそう言って教卓に座り足を組んだ。



そして、いくつか言葉を交わした後に、アルミ嬢は俺に対しこう言い放った。



「―跪ひざまづいて足を舐めなさい!」









ーーーその言葉に、俺は……
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