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桜色の髪の王女Another side①
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『-暖かな春の日差しの下、私たち200名、今日この日を無事に迎えることができ、嬉しく思います』
―私は今、何をしているのだろう?本来、この場所にたっているのは私ではありませんでした。
新入生代表挨拶をするのは主席入学者の役割です。私は次席でした。私たちの代で主席だったのは同じ年の平民の青年でした。
私は王女であるという理由で彼を押し退けてこの場にいる。
私には2つ年上の姉がいる。姉も2年前にこの学園に入学していた。
姉は私とは違い優秀でした。
当然のごとく主席入学をして、自らの実力のみでこの壇上にたっていました。
―それに比べて私は、平民に敗北したのだ。きっと彼はものすごく努力をしたのでしょう。しかし私は王女で彼は平民です。当然、享受できる環境がちがいます。私は王女として最高の環境で学んでいたのです。この差はちょっとの努力で追い抜かれるようなものではありません。私自身も努力を怠ったことはありませんでした。しかし結果は、私は主席になれなかったのです。
―ああ、きっと私はダメな人間なのだろう。
スピーチをしながらもそんな事を考えます。
ダメな私だけれど一通り王族としての教育は受けています。大勢の前で決められた文章を読み、時おり微笑むことなど、身体に染み付いています。
頭の中で別のことを考えるなど容易いのです。
―ふと、私が栄誉を奪った彼は今どのような顔をしているのだろう?怒っているのだろうか?悔しさに涙を浮かべてるのだろうか?
壇上から探してみます。まだ彼の顔は知らないけれど、皆一様にこれから始まる輝かしい学園生活に思いを馳せる中で1人だけ暗い顔をしていたら気づくはずです。
しかし、そんな生徒はいませんでした。
そうこうしているうちに私の出番は終わり、いつの間にか式も終わっていました。
◇
教室に入り、席につくと、私の周りに貴族達が集まってきます。皆私を称賛しています。ですが、この中に心の底から私を讃えてくれている人は如何程でしょう?
……皆が私を通して姉様を見ているようにしか思えない。
そんな教室の中で、私への称賛ではない言葉が聞こえてきました。
「トーノ!同じクラスになれてよかったね!」
トーノ、その名前には覚えがあった。主席であったはずの青年の名前です。
ならば、きっとあの黒髪の彼がトーノ=マガネなのだろう。
―彼はどんな表情を浮かべているのだろう?
気になって彼に視線をむけます。
彼はぼけっとしたマヌケ面で私の方を見ていました。
何故!怒りでも悲しみさえも浮かべていないのか!
私はこんなに悩んでいるのに、彼はそんな事、気にもとめていなかったのです。
彼と目があったとき、思わず睨んでしまいました。
彼は不思議そうな顔をしていました。
その顔に余計に腹が立ち一言彼に文句を言ってやろうと放課後呼び出しました。
―わかっています。こんなのただの八つ当たりです。
―私は今、何をしているのだろう?本来、この場所にたっているのは私ではありませんでした。
新入生代表挨拶をするのは主席入学者の役割です。私は次席でした。私たちの代で主席だったのは同じ年の平民の青年でした。
私は王女であるという理由で彼を押し退けてこの場にいる。
私には2つ年上の姉がいる。姉も2年前にこの学園に入学していた。
姉は私とは違い優秀でした。
当然のごとく主席入学をして、自らの実力のみでこの壇上にたっていました。
―それに比べて私は、平民に敗北したのだ。きっと彼はものすごく努力をしたのでしょう。しかし私は王女で彼は平民です。当然、享受できる環境がちがいます。私は王女として最高の環境で学んでいたのです。この差はちょっとの努力で追い抜かれるようなものではありません。私自身も努力を怠ったことはありませんでした。しかし結果は、私は主席になれなかったのです。
―ああ、きっと私はダメな人間なのだろう。
スピーチをしながらもそんな事を考えます。
ダメな私だけれど一通り王族としての教育は受けています。大勢の前で決められた文章を読み、時おり微笑むことなど、身体に染み付いています。
頭の中で別のことを考えるなど容易いのです。
―ふと、私が栄誉を奪った彼は今どのような顔をしているのだろう?怒っているのだろうか?悔しさに涙を浮かべてるのだろうか?
壇上から探してみます。まだ彼の顔は知らないけれど、皆一様にこれから始まる輝かしい学園生活に思いを馳せる中で1人だけ暗い顔をしていたら気づくはずです。
しかし、そんな生徒はいませんでした。
そうこうしているうちに私の出番は終わり、いつの間にか式も終わっていました。
◇
教室に入り、席につくと、私の周りに貴族達が集まってきます。皆私を称賛しています。ですが、この中に心の底から私を讃えてくれている人は如何程でしょう?
……皆が私を通して姉様を見ているようにしか思えない。
そんな教室の中で、私への称賛ではない言葉が聞こえてきました。
「トーノ!同じクラスになれてよかったね!」
トーノ、その名前には覚えがあった。主席であったはずの青年の名前です。
ならば、きっとあの黒髪の彼がトーノ=マガネなのだろう。
―彼はどんな表情を浮かべているのだろう?
気になって彼に視線をむけます。
彼はぼけっとしたマヌケ面で私の方を見ていました。
何故!怒りでも悲しみさえも浮かべていないのか!
私はこんなに悩んでいるのに、彼はそんな事、気にもとめていなかったのです。
彼と目があったとき、思わず睨んでしまいました。
彼は不思議そうな顔をしていました。
その顔に余計に腹が立ち一言彼に文句を言ってやろうと放課後呼び出しました。
―わかっています。こんなのただの八つ当たりです。
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