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第十九話 断罪の舞台
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茶会で殿下の逆襲を受けたあと、社交界の噂はさらに過熱した。
――公爵令嬢クラリッサは殿下に背いた。
――第二王子に庇護され、今や悪役の立場を隠そうともしない。
――やがて公開の場で断罪されるに違いない。
悪役令嬢。人々はその言葉を甘美な毒のように囁く。断罪の瞬間を待ち望んでいるかのように。
「お嬢様……」
メアリが青ざめた顔で手紙の束を抱えてきた。
「王宮で、近々大規模な舞踏会が開かれるとのことです。……殿下が、何かを発表なさるのではと」
「そう……」
予想していた。殿下はついに舞台を整えたのだ。公開の場で、わたしを断罪し、エミリアを持ち上げるための舞踏会を。
「メアリ」
「はい」
「どんな舞台でも、俯かないと決めたの。檻に戻らないために」
◇
舞踏会当日。王宮の大広間は眩い光に包まれ、百を超える貴族たちが集まっていた。黄金のシャンデリアが輝き、床は鏡のように磨かれている。わたしが入場すると、視線が一斉に注がれた。
――断罪の悪役令嬢。
――今日こそ終わりだ。
囁きが波のように広がる。だが、わたしは歩みを止めなかった。深紅のドレスを纏い、扇を握りしめて堂々と進む。
やがて殿下が壇上に現れた。隣には、やはりエミリアが立っている。彼女は白いドレスに身を包み、可憐に微笑んでいた。
「皆の者、集ってくれたことを感謝する」
殿下の声が響く。
「今宵、王家の未来を示すために、ここに一つの真実を告げよう」
会場が息を呑む。これが断罪の口火だ。
◇
「クラリッサ」
殿下の声がわたしを呼ぶ。
「君は王太子妃としての品位を欠き、弟と軽率な行動を取ったと噂されている。今ここで弁明せよ」
人々の視線が一斉に突き刺さる。公開の断罪。これこそが物語に記された運命。けれど、わたしは檻に戻らない。
「殿下」
扇を下ろし、真っ直ぐに答えた。
「弁明はいたしません。なぜなら、噂は噂にすぎないから」
「何だと」
「わたしは悪役令嬢と囁かれようとも、自分の心を偽るつもりはございません。檻に閉じ込められる未来を選ばない――それだけです」
広間にざわめきが走る。殿下の微笑が凍りつく。
◇
その時――。
「それが彼女の答えです、兄上」
低い声が会場を切り裂いた。レオンハルトが人々の間から歩み出る。深い緑の軍装に身を包み、堂々とした足取りで壇上へ。
「彼女は罪を犯してはいない。ただ、自らの意思で未来を選んだだけだ」
「レオンハルト!」殿下の声が怒りに震える。
「兄上こそ、人を檻に閉じ込めることで愛を示そうとしている。その鎖こそ恥だ」
会場が揺れる。囁きは怒涛のように広がり、殿下の硝子の微笑にひびが走る。
◇
「クラリッサ」
レオンハルトがわたしの名を呼ぶ。その声は広間のすべての人々に届いた。
「ここで皆に示してください。あなたが檻ではなく、自由を選ぶことを」
息を整え、わたしは扇を閉じた。
「……わたしは檻を拒みます。そして、わたしの未来を、共に歩む方を選びます」
レオンハルトの瞳が光を宿し、会場の空気が震えた。
◇
断罪の舞台は、殿下が用意したはずだった。だがその場で示されたのは、悪役令嬢の破滅ではなく――新たな選択。
――クラリッサは檻に戻らない。
その誓いは、国中に響くほどの重みを持っていた。
――公爵令嬢クラリッサは殿下に背いた。
――第二王子に庇護され、今や悪役の立場を隠そうともしない。
――やがて公開の場で断罪されるに違いない。
悪役令嬢。人々はその言葉を甘美な毒のように囁く。断罪の瞬間を待ち望んでいるかのように。
「お嬢様……」
メアリが青ざめた顔で手紙の束を抱えてきた。
「王宮で、近々大規模な舞踏会が開かれるとのことです。……殿下が、何かを発表なさるのではと」
「そう……」
予想していた。殿下はついに舞台を整えたのだ。公開の場で、わたしを断罪し、エミリアを持ち上げるための舞踏会を。
「メアリ」
「はい」
「どんな舞台でも、俯かないと決めたの。檻に戻らないために」
◇
舞踏会当日。王宮の大広間は眩い光に包まれ、百を超える貴族たちが集まっていた。黄金のシャンデリアが輝き、床は鏡のように磨かれている。わたしが入場すると、視線が一斉に注がれた。
――断罪の悪役令嬢。
――今日こそ終わりだ。
囁きが波のように広がる。だが、わたしは歩みを止めなかった。深紅のドレスを纏い、扇を握りしめて堂々と進む。
やがて殿下が壇上に現れた。隣には、やはりエミリアが立っている。彼女は白いドレスに身を包み、可憐に微笑んでいた。
「皆の者、集ってくれたことを感謝する」
殿下の声が響く。
「今宵、王家の未来を示すために、ここに一つの真実を告げよう」
会場が息を呑む。これが断罪の口火だ。
◇
「クラリッサ」
殿下の声がわたしを呼ぶ。
「君は王太子妃としての品位を欠き、弟と軽率な行動を取ったと噂されている。今ここで弁明せよ」
人々の視線が一斉に突き刺さる。公開の断罪。これこそが物語に記された運命。けれど、わたしは檻に戻らない。
「殿下」
扇を下ろし、真っ直ぐに答えた。
「弁明はいたしません。なぜなら、噂は噂にすぎないから」
「何だと」
「わたしは悪役令嬢と囁かれようとも、自分の心を偽るつもりはございません。檻に閉じ込められる未来を選ばない――それだけです」
広間にざわめきが走る。殿下の微笑が凍りつく。
◇
その時――。
「それが彼女の答えです、兄上」
低い声が会場を切り裂いた。レオンハルトが人々の間から歩み出る。深い緑の軍装に身を包み、堂々とした足取りで壇上へ。
「彼女は罪を犯してはいない。ただ、自らの意思で未来を選んだだけだ」
「レオンハルト!」殿下の声が怒りに震える。
「兄上こそ、人を檻に閉じ込めることで愛を示そうとしている。その鎖こそ恥だ」
会場が揺れる。囁きは怒涛のように広がり、殿下の硝子の微笑にひびが走る。
◇
「クラリッサ」
レオンハルトがわたしの名を呼ぶ。その声は広間のすべての人々に届いた。
「ここで皆に示してください。あなたが檻ではなく、自由を選ぶことを」
息を整え、わたしは扇を閉じた。
「……わたしは檻を拒みます。そして、わたしの未来を、共に歩む方を選びます」
レオンハルトの瞳が光を宿し、会場の空気が震えた。
◇
断罪の舞台は、殿下が用意したはずだった。だがその場で示されたのは、悪役令嬢の破滅ではなく――新たな選択。
――クラリッサは檻に戻らない。
その誓いは、国中に響くほどの重みを持っていた。
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