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第二十九話 危機の足音
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学院での討論会から数日。王都はますます分裂の色を濃くしていた。
――王太子殿下とエミリア嬢こそ国を導く光。
――第二王子殿下とクラリッサ嬢は秩序を乱す存在。
街角で、広場で、貴族の館で、人々は二つの陣営に分かれ、声を荒げるようになっていた。わたしの名は「悪役令嬢」として繰り返し囁かれ、そのたびに胸が痛む。けれど同時に、もう俯くことはなかった。
◇
その日、父の執務室に呼ばれた。机の上には幾通もの書簡が散らばっている。
「クラリッサ……王太子派からの圧力が強まっている。商会との取引も一部凍結され、屋敷への物資すら減り始めた」
「……殿下は、家を締め上げて」
「そうだ。お前を折らせるために、家族を人質にしているのだ」
父の顔には疲労の色が濃い。母も心労で痩せ、メアリは不安げにわたしを見つめていた。
「お嬢様……もし、もし再び王太子殿下に従うとおっしゃれば――」
「いいえ」わたしは首を振った。「それでは全てが無駄になる。わたしは檻には戻らない」
◇
その夜、屋敷の庭園でレオンハルトと会った。彼の表情も険しい。
「兄上はついに公爵家を直接追い詰め始めた。取引を止め、同調しない家を脅し、孤立させている」
「……父も母も、苦しんでいます」
「それでもあなたが檻に戻れば、すべてが思惑通りになる。だからこそ、私は必ず守る」
彼は強い声で言い切り、わたしの手を取った。
「クラリッサ。あなたが望む未来を、共に作る。例え国全体を敵に回しても」
「レオン……」
胸の奥が熱くなる。孤独ではない。その確信が力となった。
◇
数日後、王宮から新たな布告が出された。
――「公爵家の令嬢クラリッサは、王家に仇なす言動を繰り返している。これ以上の反逆を許すことはできない」
断罪の言葉が国中に広まった。広場に集う人々はその布告を読み上げ、ざわめきが渦を巻いた。
「やはり悪役令嬢だ」
「いや、勇敢に檻を拒んだのだ」
賛否が入り乱れ、街全体が揺れる。
◇
夜、わたしは机に白いハンカチと写しの地図を広げた。布告は檻に戻すための最後の鎖。それを打ち破らなければならない。
「……嵐は本格的に始まった」
囁いた声は、冷たい冬の風に溶けた。
――悪役令嬢クラリッサは、もはや社交界の娘ではなく。
――国全体を巻き込む戦いの渦中に立たされていた。
――王太子殿下とエミリア嬢こそ国を導く光。
――第二王子殿下とクラリッサ嬢は秩序を乱す存在。
街角で、広場で、貴族の館で、人々は二つの陣営に分かれ、声を荒げるようになっていた。わたしの名は「悪役令嬢」として繰り返し囁かれ、そのたびに胸が痛む。けれど同時に、もう俯くことはなかった。
◇
その日、父の執務室に呼ばれた。机の上には幾通もの書簡が散らばっている。
「クラリッサ……王太子派からの圧力が強まっている。商会との取引も一部凍結され、屋敷への物資すら減り始めた」
「……殿下は、家を締め上げて」
「そうだ。お前を折らせるために、家族を人質にしているのだ」
父の顔には疲労の色が濃い。母も心労で痩せ、メアリは不安げにわたしを見つめていた。
「お嬢様……もし、もし再び王太子殿下に従うとおっしゃれば――」
「いいえ」わたしは首を振った。「それでは全てが無駄になる。わたしは檻には戻らない」
◇
その夜、屋敷の庭園でレオンハルトと会った。彼の表情も険しい。
「兄上はついに公爵家を直接追い詰め始めた。取引を止め、同調しない家を脅し、孤立させている」
「……父も母も、苦しんでいます」
「それでもあなたが檻に戻れば、すべてが思惑通りになる。だからこそ、私は必ず守る」
彼は強い声で言い切り、わたしの手を取った。
「クラリッサ。あなたが望む未来を、共に作る。例え国全体を敵に回しても」
「レオン……」
胸の奥が熱くなる。孤独ではない。その確信が力となった。
◇
数日後、王宮から新たな布告が出された。
――「公爵家の令嬢クラリッサは、王家に仇なす言動を繰り返している。これ以上の反逆を許すことはできない」
断罪の言葉が国中に広まった。広場に集う人々はその布告を読み上げ、ざわめきが渦を巻いた。
「やはり悪役令嬢だ」
「いや、勇敢に檻を拒んだのだ」
賛否が入り乱れ、街全体が揺れる。
◇
夜、わたしは机に白いハンカチと写しの地図を広げた。布告は檻に戻すための最後の鎖。それを打ち破らなければならない。
「……嵐は本格的に始まった」
囁いた声は、冷たい冬の風に溶けた。
――悪役令嬢クラリッサは、もはや社交界の娘ではなく。
――国全体を巻き込む戦いの渦中に立たされていた。
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