啼いて僕らは息をする

白雪 鈴音

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禿編

自己紹介

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次にやってきたのは大広間と呼ばれる花魁たちの憩いの場だ。
夜見世の支度を済ませた花魁たちが花札やらトランプで暇を潰していた。

「皆さん、聞いてください。本日からここに住むことになった朝霧と夕霧です」

水無月が人声かければ花魁達の視線は僕らに集まった。
二十人ほどいる人間の視線を集めるのは初めてのことで朝霧はどうしていいのかわからず俯いた。

「よろしく、お願いします……」

恐る恐る頭を下げれば朝霧も慌てて頭を下げた。
するとその場がワッと盛り上がった。

「ねぇねぇ!君たち何歳?双子?!」

馴れ馴れしく……もとい、フレンドリーに話しかけて来た男に視線を合わせる。
黄緑の瞳が印象的な金髪の青年だ。

「全く……葵。いきなり聞いたら驚いてますよ


「あ、ごめんごめん。俺、葵って言うんだ。これからよろしくね?」

しゃがみこんで笑顔で手を差し出され、握手を断るのもここで生きるのなら得策ではないと思い手を握る。
朝霧も反対の手で握手を交わしており、葵と名乗った花魁は”両手に子ウサギちゃんだ~!”と頬をだらしなく緩めている。

「じゃあ、後は葵に任せますよ。お部屋は貴方と同じでいいでしょう。それと……」

水無月は部屋を見渡せば、探していた人物がいたのだろう。
その男に声を掛けた。

「葉月花魁!後ほどお話があります。私の部屋まで来てください」

水無月の視線の先には窓枠に身体を預け格子の外を眺める黒髪のガタイのいい黒髪の男だった。
わかった、と言うかのようにこちらを一度も見ずに手をひらりと舞わせる。
水無月は、はぁ、とため息を着いてよろしくお願いしますよ。と言うと大広間から出ていった。
残された俺ら二人はあっという間に他の花魁達にも囲まれ、質問攻めにあっていた。
僕はともかくグイグイ来られることに慣れていなかった朝霧も暖かい雰囲気に緊張も解けてきたのか自分の言葉で答えられていた。

だから気づかなかった。
数人はこちらを怪訝な顔で見ていた事に。
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