啼いて僕らは息をする

白雪 鈴音

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禿編

質疑応答

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質問攻めから解放されたのは夜見世の始まる少し前だった。
ほとんどの花魁達は張見世へと降りていった。
張見世とは、位の低い男娼たちが赤い格子の中から外の客を誘惑する商売方法で、今日挨拶に行った霜月花魁や先程水無月に葉月と呼ばれた花魁は、どうやら太夫と呼ばれるこの花街最高峰の花魁らしい。
その為、張に出ることはなく客を自室へ通すのだ。
一方今僕ら二人を自身の部屋へと連れてきてくれた葵花魁はどうやら座敷持と言われる部屋を二つ持った花魁で、こちらも太夫同様指名制なのだという。

葵に部屋に通されて数分。
僕達三人は膝を突合せていた。
というのも布団を敷く位置をどうするか、と言う問題が浮上した為だ。
葵の今日の指名は二十五時から明け方まで。
そして現時刻は十八時だった。

「隣のお部屋は俺が客を通す部屋にしてるから二人がこの部屋を使うといい」

そう言い張る葵だが、朝霧はどうにもそれを良しとしない。
幾分か慣れてきた朝霧は俺の影に隠れながらもそれだと葵兄様の迷惑になる、と主張しているのだ。
兄様、というのはここに来て真っ先に葵に教わったことだ。
あまり関わりの無い花魁にも年上には敬意を払い、そしてもう同じ宿の下暮らす家族としてそう呼ぶように、と。
この部屋に来る途中教わったためまだ照れも混じっているも、僕以外に家族と思えるような相手がいなかったためかどこか嬉しそうだ。

「僕も、朝霧と同じ気持ちです。葵兄様がお仕事までは占領してしまうことになる。だから……」

「全く!君達二人はもう俺の弟なんだからそんな遠慮いらないんだよ?それに君ら、ちっちゃいから全然場所も取らないでしょ?」

葵は笑顔で僕らを抱きしめる。
葵の言った言葉と、ほんのりと香る柑橘系の香り、優しい温かさに包まれれば朝霧は肩を揺らした。
かくいう僕も目の奥が熱くなり目を閉じる。
それを感じとった葵はポンポンと背中を叩き、頭を撫でてくれた。
隣から朝霧の安定した寝息が聞こえてきた事で、僕も安心して思わず欠伸がこぼれた。

「眠っていいんだよ。ここにはもう君達に意地悪をする人はいないから」

着物の隙間から見え隠れする無数の青あざにここに連れてこられる前の生活を察した葵は優しく、まるで母のように告げる。
そのあまりの温もりに僕も自然と意識は落ちていった。
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