忘れられた青年(仮タイトル)

剣斗

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第一章 忘れられた青年

第四話

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 さて、昨日は訓練をしたから、今日はダンジョンを探索する。今日は10階層までの探索だ。

 確か、10階層ごとにボスが居るんだったな。ここまでずっとスライムしか居ないし、ボスもスライムなのか?

 5階層にセーブポイントはなかったので、今日も1階層からの探索だ。少々面倒くさいが、諦めて進むしかない。浅い階層は簡単だし、今は全然いいのだが。

「一回通ったところだし、前回よりも時間をかけずに行けるように頑張らないとな。前回の時間は約1時間40分。今回は、前回までの範囲を1時間20分くらいで攻略して、3時間ピッタリぐらいに探索を終わらせるか」

 独り言が多いって?一ヶ月の間に寂しさ紛らわそうとしたらこうなってたんだよちくしょう。はぁ、話し相手すらいないのは結構心に来るものがあるな……

「よし、早速攻略を始めるか」

 とりあえず歩こう。何も考えずに行けばいい。まだモンスターは弱いし、普通に倒していけば、目標時間内に10階層まで行けるはずだ―――


「―――予想よりも、少しだけ早く10階層についたな」

 2時間40分くらいで到着して、20分でボス戦を終わらせようとしていたのだが、現在の経過時間は2時間30分前後。予想より少し早く帰れそうだ。

 モンスターは、6~9階層まですべてスライム。階層と同じ数でまとまって出てきたが、一体ずつは相変わらず弱いので、ほとんどダメージを受けることなくここまで来た。

 そして、ここまでスライムを倒し続けてきたことで上がった、現在のレベルはこんな感じ。


―――――――――――――――――――――――――――
月城柊羽:18歳
種族:人間 Lv5
性別:男
職業:探索者 Lv5
ランキング:圏外

体力:33/33
魔力:29/29
攻撃:15(+5)
知力:11
防御:7(+4)
精神:7
速度:12
器用:9

スキル:『風魔法:F』、『料理:E』
SP:10《取得可能なスキル一覧▼》
―――――――――――――――――――――――――――

 レベルは2だけ上がった。やっぱり、スライムを倒してレベル上げは無理があるな。なんと、ここまで150体以上倒しても2レベルしか上がっていない。経験値がかなり少ないんだろうな……いや、ここのダンジョンが特殊な可能性もあるか?

「このでかい扉がボス部屋……なんかな?」

 そして、目の前にあるのは俺の身長の2倍はありそうな巨大な扉。木製だからぎりぎり押せそうだけど……これが金属製だったら開けなくて詰むよ?

「ポーションよし、短剣も持ってる……必要なものはすべて揃っているかな?さて、行きますか!ボス戦!」

 少しの緊張を大声でかき消し、俺は巨大な扉へと手を掛け、少しづつ力を入れる。かなりおもそうだと思っていた扉は、案外軽い力で開いていく。

 そして、その先に居たのは……

「……銀色のスライム……メタルスライムか?」

 その姿は、ゲームでたびたび見るメタルスライム……最近は見なくなった気がするけど、まぁそこはいい。

「ゲームで言えば、かなり硬い敵だったよなぁ。正直、あんまり戦いたくはないな……」

 一見ポヨポヨとして柔らかそうだが、本当に硬いのだろうか?とりあえず……

「……先手必勝!」

 相手はこちらを見ているものの、攻撃してくる気配はない。であれば、こちらから攻撃して、あわよくば倒したい。

 そう思い、俺のできる全力で近づき、普段スライム相手には片手で振るっている薙刀を、両手で振るって斬りつける。しかし……

 ガンッ!

「っ痛ぇ……!」

 予想以上の硬さに薙刀が跳ね返され、俺の手に衝撃が来る。手が痺れて、薙刀もまともに持てない。序盤の硬さじゃねぇだろこんなの。というか、刃こぼれしてないよな?ただの鋼鉄製だとしても、安くはないんだぞ。

「表面がこんな硬かったら、コアなんてどうやって壊すんだよ……」

 相変わらず、メタルスライムは攻撃をしようとしては来ない。特殊なボスなのか?とはいえ、こんな硬い防御力をどうやって突破しろと?

 あのぷよぷよとした見た目で、どうやってあんな防御力を実現してるんだ?普通のスライムと同じだったら、コアの粉砕くらいはしてそうな威力でやってるんだが。

 うーん、とりあえず何回か殴ってみるか。突破方法わかるかも知れないし。

 そう考え、石突を使って何回か殴ってみる。強さや力の向きを変えたり、色々工夫してみても、全く効いている様子がない。いや、むしろ攻撃する瞬間に固くなっているような気が……

……もしかして、そういうことか?

 実験1、石突で少し強めに叩いてみる。先程よりも抵抗は少ないが、まだ硬い。けど、このくらいならば切れそうだ。

 実験2、石突をゆっくり沈み込ませてみる。ほとんど抵抗もなく、コアにコツンとぶつかった。しかし、威力が弱すぎるせいか、ダメージはなさそうだ。

……やはり。こいつの体は、ダイラタンシー現象のようなもので構成されているのか。だからこそ、俺が全力でやった攻撃も、ダイラタンシー現象により硬化して跳ね返されたということだ。

 しかし、そうだと分かったとしても、こいつを倒すのはかなり難しい。コアがその中に入っている以上、コアを引きずり出すか、武器を沈み込ませて、なんとかしてダメージを与えるか……

 後者は少し難しそうだな。やるなら、前者のほうが圧倒的に楽。しかし、どうやってコアを引きずり出すか。

……とりあえず、コアを鷲掴みにして引っ張ってみるか。

 袖をまくり、ダイラタンシースライムの体に少しづつ手を入れていく。体力が減っているわけでもないし、これで死ぬことはなさそうだな。

 肘の手前くらいまで腕をいれると、なにか硬いものにぶつかる。それを握ってぐっと引っ張ると、案外簡単にコアを取り出すことができてしまった。

「……スライムのコアってこんなに簡単に取れるんだ……普通のスライムでもそうなんかね?」

 ダイラタンシースライムは、コアが無くなったはずの体をうねうねさせて、まるで「返して~」と言っているかのようだ……ちょっとかわいい。

 しかし、探索者である以上、このモンスターを倒さないと先に進むことはできない。もう少し見ていたい気持ちを抑えつつ、コアを上に投げ、薙刀で破壊する。

 普通のスライムと同じように、ダイラタンシースライムも、コアを破壊したことで消滅する。しかし、普通のとは違ってドロップがあった。

 全く、どうしてスライムにはドロップアイテムがないんだ。まぁ、主なドロップ品である魔石……コアを破壊しているのだし、仕方ないことか。

 ちなみに、スライムのコアのサイズは大体直径10cmくらいの丸い玉。これが魔石とも言えるものなのだが、これよりも上位の魔物であるゴブリンが落とす魔石の5倍くらいのサイズだ。

 なぜ上位の魔物のほうが小さくなっているのか。完全には解明されていないのだが、モンスターの強さは、魔石の魔力含有量で決定されるのだと予想されているらしい。俺が知ったとしても意味はないことだが。まぁ、ただの雑学だ。

「来た方向と逆には階段ができて、ダイラタンシースライムが消えたところには……宝箱だな」

 そう、宝箱だ。しかも2個!序盤だからあまり強いものは出ないだろうが、2個出るのはものすごく嬉しい。ドロップボーナスが付くと言っていたし、その御蔭か?

「んじゃ、早速開けるか。それにしても、1つじゃなく2つも出るとは。運が良かったんかね?」

 そう言いつつ、俺は同時に2つの宝箱を開ける。同時に開ける意味?ないよそんなの。

 宝箱の中に入っていたのは、スライムのコアに似た丸い玉に、銀色の腕輪。

 丸い玉は……まさか、スキルオーブ?鑑定してもらわんとわからんが、もしそうだとしたら、かなり貴重なものだぞ?

 銀色の腕輪は……今はあまり触れないでおこう。時々、呪いの装備なんてものもあるしな。安易に装備して、呪われたりでもしたら、たまったものではない。一応、見た目は何の変哲もないリングなのだが。

「お、セーブポイントもあるな。次回からはここから始めよ」

 11階層に入ると同時に、セーブポイントである緑色の魔法陣が目に入る。いかにも安置という色だな。

 さ、今日はこれで終わりにして、明日も訓練場にこもるか。鑑定は……訓練中にやってもらえばいいか……
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