忘れられた青年(仮タイトル)

剣斗

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第一章 忘れられた青年

第五話 

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いつもの8時間の訓練の後、事前に頼んであった鑑定の結果を受け取り、鑑定料金を支払う。一つのアイテムで5万円とずいぶんと高い鑑定料だ。だが、俺は鑑定のスキルを持っていないのだから、依頼をするしかない。

 異世界モノでは初期装備みたいなものだが、実際には鑑定って結構珍しいスキルだからな。確か、数万人に1人とかだったっけ?

 まぁそんな事はいい。今優先すべきは、鑑定結果を確認することだ。渡された紙の束の表紙をめくり、内容を確認する。一枚目は、あの丸い玉の鑑定結果だ。

―――――――――――――――――――――――――――
スキルオーブ『鑑定:F』

 スキル『鑑定:F』を入手することができるスキルオーブ。使用するには、このオーブを砕くだけでよい。

 レア度:D
 査定額:1000万円
―――――――――――――――――――――――――――

……えぇ?嘘でしょう?貴重なスキルだったはずだけど……何で低いランクとはいえピンポイントで来るんですか?

 とりあえず、これを使うのは確定として、次の鑑定結果を確認しよう。あの銀の腕輪だ。呪いの品だったら速攻で売る。

―――――――――――――――――――――――――――
変装の腕輪

 装備をすれば、自身の服装を3つまで登録・収納し、瞬時に切り替えることができる腕輪。収納された服は洗浄されるため、汚れの心配は不要である。

 レア度:D
 査定額:500万
―――――――――――――――――――――――――――

 使える……のか?いや、よく考えたらこれ、洗濯いらずの優れものじゃん。しかも、服装を瞬時に変更できるおかげで更衣室もあまりいらないし。やったな

 さて、早速装備して、今着ている訓練用の服を……収納はやめたほうがいいな。登録だけして帰ろう。

 それじゃあ、家に帰ってご飯を作るか。最近は筋トレもやっているし、頑張ってメニューを考えないと―――


―――翌日。今日はダンジョン探索をする日だ。第0階層で適当に準備をし、ワープを使って第11階層に転移する。

 ワープした地点から少し歩くと、これまた有名なゴブリンが出てきた。最弱ではないが、運動神経の良い子供ならぎりぎり勝てるというラインだ。

……まぁ、大人だったら、普通に組み伏せられるんだけどね?あくまでも、子供なら勝つことが難しいだけだ。俺?俺の場合、手を伸ばしてきたところを石突で上に弾いて、そのままの流れで脳天をかち割るだけだよ?

 しかし、そうはいかない状況というものもある。それは、ゴブリンを統率しているモンスターがいる場合だ。

 こうなると、ゴブリンの連携力は高くなり、一気に厄介な敵へと化ける。ランクで表せば、単体でFランク、団体のゴブリンがEランクで、統率者がいる団体のゴブリンがDだな。一段階ずつ上がっていく感じだ。

 けれど、そんな状況なんてめったに起こることはない。ゴブリンの上位種が発見された例は、この世界にダンジョンが出現してから100件ほど。それも、日本に限って言えば、5件だけ。それがこんなところで起こるわけがない。

 よっしゃ、さっと5階層分の探索を終わらせて、家に帰って、ゆっくりしますか!―――


「―――お、もう15階層か。早いもんだな」

 ゴブリンとかなり遭遇したはずなのに、なぜかいつも以上に早く行けてしまったような気がする。時間を確認してみると、入ってから約3時間が経過している。いつもとあまり変わらないし、集中してただけだな。

 それにしても、本当に寂しい。最後、まともに人と話したのっていつだっけか?少なくともここ2、3週間は事務的な会話しかしていない気がする。

 今までは、昼に学校があったし、家でも向こうの家の夜ご飯の時間までは紫苑が家にいたからな……両親がいなくても、そこまで寂しくはなかったんだが。

……久々に、誰かと話したいな。そういえば、しばらく人と話さなかったら、鬱とかの精神病になることがあるんだっけか?

 うーん……まだ全然そんな兆候はないけど、本当なのかな?本当なら、俺はおそらく精神病になるな。まぁ、手遅れになる前に、なんとかすればいいか。

 そんな事はいいんだ。先に夕飯の準備でもしよう。今日は昼からダンジョンに潜ってたから、ダンジョンから出る頃には17時くらいか。今から準備すればちょうどだな。

……あー、でも冷蔵庫に何かあったっけ?3日前に買い物行ったから、もうなにもない気がするな……仕方ない、買いに行くか―――


「―――えーっと、欲しいのは、各種野菜と、鶏肉と……果物もいくつか買っておくか。他は特になかったよな?」

 スーパーまで自転車で行き、小声でつぶやきながら、頭の中に欲しいものをメモしていく。腹を満たすだけなら、インスタント麺で済ませても良いところだが……いくら一人とはいえ、栄養バランスは気をつけないといけないだろう。

 でなければ、最悪な体調でダンジョンに潜らないといけなくなる。そんな理由で死ぬのは流石に嫌だ。

 それにしても、今日はいつもより人が多いな。普段はこんなに多くはないと思うんだけど。今日って平日だよね?

 家から少し遠めのスーパーに来ているし、知り合いがいることは少ないだろうから、そこんところは安心なんだけど……え?会ってもどうせ相手は気づかないだろって?俺は気まずいんだよ。話せたらいいけど、それすらできないしな。

 そんなくだらないことを考えつつ店の中を歩くと、不意にお菓子のコーナーが目に入った。そういえば、ここ最近はずっとお菓子を食べていない……久々に食べるか。

 そう思い、俺が好きなグミとチョコを手に取り、かごの中へ放り込む。ついでにポテチを手に取り、かごに入れようとしたところで……手を止めた。

「……そっか、もう買う必要ねぇじゃん。何してんだ?俺」

 俺は、基本ポテチを食べない。食べるのは、俺の家に来る友人たちだけだ。特に紫苑がよく来ていたため、今も紫苑が好きなものを買おうとしていた。

 今これを買っても、食べる人がおらずに腐るだけだ。少なくとも、俺の家にあるものがなくなるまでは買わないでいい。まぁ、消費する予定がないし、いずれ捨てるんだろうけど。

 持っていたポテチを棚に戻し、レジに向かい、会計を済ませて外に出る。時間は既に18時。夏なら良い夕焼けが見えているような時間だが……現在は冬であるため、真っ暗な道に街頭が等間隔に点々と灯っている。

……なんで、俺はこんな目にあっているんだろう。はっきり言って、一人はものすごく寂しい。誰でもいいから、一緒にいてほしい。誰か、話し相手になってほしい。たった一人で訓練をして、たった一人でダンジョンに潜って、たった一人でご飯を食べて……

……下手な一人暮らしより厳しいんじゃないのか?これ。まぁ、事務的な会話が出来たり、食料を買ったりできる点を考えれば、無人島よりかは遥かにマシか。

 そう考えると、少し気が楽になってきたな。まぁ、少し位寂しさを紛らわすためのものは欲しかったけどね……システム許すまじ。

 よし、明日からも、また頑張りますか!
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