婚約者の様子が(かなり)おかしい。

西藤島 みや

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私にまつわる日常的な困難について

幼馴染を皇太子にひきあわせました

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ともかく、目眩のするようなひとときを終え、皇太子と私はエリーゼの待つ場所へと戻った。


「コーデリア伯爵令嬢。お会いできて光栄だ」
皇太子が微笑むと、エリーゼは
「エリーゼ・レスター・コーデリアでございます殿下。こちらこそ素晴らしいものをみせて下さりありがとうございます!わたくしはクロユリ派ですが、雑食ですので解釈違いも美味しく……」

何を言い出したのか全くわからない。

手打ちにされまいかと困惑して皇太子をみると、やはりというか知らない外国語をきいたときのような、曖昧な表情をしていた。チラリとこちらを見るのはやめてほしい、私も通訳など出来ない。

「つまり、お目通りかないましてこの上なく嬉しい…ということだね、エリーゼ?」
そう言ってやるとエリーゼは頬を染めて幾度もうなづき、皇太子は満足そうにそのエリーゼをみおろした。

「君は『おとないびと』だときくけれど、ほんとうか」
皇太子が突然訳のわからぬことを口走った。

いや、単に私が勉強不足なだけで、みなは分かるのかもしれないけれど…と、周囲を見回すけれど、どうやら周囲の貴族たちも、先程の皇太子同様の表情になっている。

「いいえ、わたくしはただ見てきただけですの。実際の『おとない人』はユーリという少年ですわ」
私は滝のような汗が額から吹き出すのを感じた。いま、いつもの云々を言われたら、私は死ぬだろう。いいや、確実にいま死ぬ。




もはや半分死んだつもりだった私に、エリーゼが片手を差し出した。いつの間にか皇太子は別の令嬢と話をしており、フロアには私とエリーゼだけになっている。立ったまま失神していたのかな私は?

「エリーゼ、踊ってくれるかい?」
声をかけると、エリーゼはうなづき、私と共にフロアへでた。

エリーゼのダンスは完璧だ。くるくると彼女が回る度、可憐な花のようにドレスの裾が開き、まるで意志があるように彼女の動きについてゆく。

「きみはとても綺麗だよ、エリーゼ」
私が言うと、エリーゼは頬をそめながら
「クローディアス様は今日も素敵です」
と返してくれた。ゆるやかな三拍子にのってフロアを十分に駆け回る。

まるで特別な魔法にでもかけられているようだ、とエリーゼをみると、少し疲れているのか息があがってしまっていた。しまった、少々加減がわからなくなっていた。
「すまない、疲れたかい?」
曲がおわり、ふう、と息をついたエリーゼに声をかけると、エリーゼははい、とうなづいた。

手をとってテラスから中庭へとでてゆく。ここならゆっくり座って休める筈だ。
「何か飲み物を持ってくるよ、まっていて?」
そう言うと、上着の肘のあたりをつままれた。

「いいえ、一緒に座って?」
エリーゼはそっと囁く。一気に心臓が跳ねるのを感じた。エリーゼに手をひかれるままに、私はエリーゼの側にすわり、見つめあった。

いけない、絶世の美少女だが彼女は時限爆弾だ、いつどのように爆発するかわからないんだぞ、という心の声が聞こえるけれど、美しいエリーゼといっときの幻でも一緒にすごせるのに、それを無下にするなんてもったいない、という気持ちもある。

エリーゼは私の左手に彼女の右手をかさねたまま、庭の中程にある美しい噴水に気をとられているようだ。

なにか、会話。そうだ、なにか会話をしなくては。


「エリーゼ、きみは噴水が好きなのかい?」
魔法ではなく、あれは確か遥か遠いレストラドスの堰との水位の差で吹き上がっていると聞いたことがある。話して聞かせたら感心してもらえるだろうか?

それとも、まだあまり上手くはないが、噴水に魔法で美しい灯りを浮かべた方がロマンティックかな?

「え?いいえ?あの噴水からユーリが現れたと読んだので、ついじっくりみておりました…噴水のあの石像部分が砕け散って、一糸まとわぬ姿のユーリが姿を現しますのよ?素敵です」
彼女をどつかなかった私を誉めてほしい。

というか、全裸の男が王宮殿の庭の噴水を粉砕して現れて、衛兵は何をしていたんだ。捕まえて牢へぶちこめよ……いけない、つい気持ちがすさんだ。

私はエリーゼのやわらかな手のひらから左手を取り返し、膝の上で握りしめた。いまはもう、エリーゼの話は聞きたくなかった。
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