3 / 38
私にまつわる日常的な困難について
幼馴染を皇太子にひきあわせました
しおりを挟む
ともかく、目眩のするようなひとときを終え、皇太子と私はエリーゼの待つ場所へと戻った。
「コーデリア伯爵令嬢。お会いできて光栄だ」
皇太子が微笑むと、エリーゼは
「エリーゼ・レスター・コーデリアでございます殿下。こちらこそ素晴らしいものをみせて下さりありがとうございます!わたくしはクロユリ派ですが、雑食ですので解釈違いも美味しく……」
何を言い出したのか全くわからない。
手打ちにされまいかと困惑して皇太子をみると、やはりというか知らない外国語をきいたときのような、曖昧な表情をしていた。チラリとこちらを見るのはやめてほしい、私も通訳など出来ない。
「つまり、お目通りかないましてこの上なく嬉しい…ということだね、エリーゼ?」
そう言ってやるとエリーゼは頬を染めて幾度もうなづき、皇太子は満足そうにそのエリーゼをみおろした。
「君は『訪いびと』だときくけれど、ほんとうか」
皇太子が突然訳のわからぬことを口走った。
いや、単に私が勉強不足なだけで、みなは分かるのかもしれないけれど…と、周囲を見回すけれど、どうやら周囲の貴族たちも、先程の皇太子同様の表情になっている。
「いいえ、わたくしはただ見てきただけですの。実際の『訪い人』はユーリという少年ですわ」
私は滝のような汗が額から吹き出すのを感じた。いま、いつもの云々を言われたら、私は死ぬだろう。いいや、確実にいま死ぬ。
もはや半分死んだつもりだった私に、エリーゼが片手を差し出した。いつの間にか皇太子は別の令嬢と話をしており、フロアには私とエリーゼだけになっている。立ったまま失神していたのかな私は?
「エリーゼ、踊ってくれるかい?」
声をかけると、エリーゼはうなづき、私と共にフロアへでた。
エリーゼのダンスは完璧だ。くるくると彼女が回る度、可憐な花のようにドレスの裾が開き、まるで意志があるように彼女の動きについてゆく。
「きみはとても綺麗だよ、エリーゼ」
私が言うと、エリーゼは頬をそめながら
「クローディアス様は今日も素敵です」
と返してくれた。ゆるやかな三拍子にのってフロアを十分に駆け回る。
まるで特別な魔法にでもかけられているようだ、とエリーゼをみると、少し疲れているのか息があがってしまっていた。しまった、少々加減がわからなくなっていた。
「すまない、疲れたかい?」
曲がおわり、ふう、と息をついたエリーゼに声をかけると、エリーゼははい、とうなづいた。
手をとってテラスから中庭へとでてゆく。ここならゆっくり座って休める筈だ。
「何か飲み物を持ってくるよ、まっていて?」
そう言うと、上着の肘のあたりをつままれた。
「いいえ、一緒に座って?」
エリーゼはそっと囁く。一気に心臓が跳ねるのを感じた。エリーゼに手をひかれるままに、私はエリーゼの側にすわり、見つめあった。
いけない、絶世の美少女だが彼女は時限爆弾だ、いつどのように爆発するかわからないんだぞ、という心の声が聞こえるけれど、美しいエリーゼといっときの幻でも一緒にすごせるのに、それを無下にするなんてもったいない、という気持ちもある。
エリーゼは私の左手に彼女の右手をかさねたまま、庭の中程にある美しい噴水に気をとられているようだ。
なにか、会話。そうだ、なにか会話をしなくては。
「エリーゼ、きみは噴水が好きなのかい?」
魔法ではなく、あれは確か遥か遠いレストラドスの堰との水位の差で吹き上がっていると聞いたことがある。話して聞かせたら感心してもらえるだろうか?
それとも、まだあまり上手くはないが、噴水に魔法で美しい灯りを浮かべた方がロマンティックかな?
「え?いいえ?あの噴水からユーリが現れたと読んだので、ついじっくりみておりました…噴水のあの石像部分が砕け散って、一糸まとわぬ姿のユーリが姿を現しますのよ?素敵です」
彼女をどつかなかった私を誉めてほしい。
というか、全裸の男が王宮殿の庭の噴水を粉砕して現れて、衛兵は何をしていたんだ。捕まえて牢へぶちこめよ……いけない、つい気持ちが荒んだ。
私はエリーゼのやわらかな手のひらから左手を取り返し、膝の上で握りしめた。いまはもう、エリーゼの話は聞きたくなかった。
「コーデリア伯爵令嬢。お会いできて光栄だ」
皇太子が微笑むと、エリーゼは
「エリーゼ・レスター・コーデリアでございます殿下。こちらこそ素晴らしいものをみせて下さりありがとうございます!わたくしはクロユリ派ですが、雑食ですので解釈違いも美味しく……」
何を言い出したのか全くわからない。
手打ちにされまいかと困惑して皇太子をみると、やはりというか知らない外国語をきいたときのような、曖昧な表情をしていた。チラリとこちらを見るのはやめてほしい、私も通訳など出来ない。
「つまり、お目通りかないましてこの上なく嬉しい…ということだね、エリーゼ?」
そう言ってやるとエリーゼは頬を染めて幾度もうなづき、皇太子は満足そうにそのエリーゼをみおろした。
「君は『訪いびと』だときくけれど、ほんとうか」
皇太子が突然訳のわからぬことを口走った。
いや、単に私が勉強不足なだけで、みなは分かるのかもしれないけれど…と、周囲を見回すけれど、どうやら周囲の貴族たちも、先程の皇太子同様の表情になっている。
「いいえ、わたくしはただ見てきただけですの。実際の『訪い人』はユーリという少年ですわ」
私は滝のような汗が額から吹き出すのを感じた。いま、いつもの云々を言われたら、私は死ぬだろう。いいや、確実にいま死ぬ。
もはや半分死んだつもりだった私に、エリーゼが片手を差し出した。いつの間にか皇太子は別の令嬢と話をしており、フロアには私とエリーゼだけになっている。立ったまま失神していたのかな私は?
「エリーゼ、踊ってくれるかい?」
声をかけると、エリーゼはうなづき、私と共にフロアへでた。
エリーゼのダンスは完璧だ。くるくると彼女が回る度、可憐な花のようにドレスの裾が開き、まるで意志があるように彼女の動きについてゆく。
「きみはとても綺麗だよ、エリーゼ」
私が言うと、エリーゼは頬をそめながら
「クローディアス様は今日も素敵です」
と返してくれた。ゆるやかな三拍子にのってフロアを十分に駆け回る。
まるで特別な魔法にでもかけられているようだ、とエリーゼをみると、少し疲れているのか息があがってしまっていた。しまった、少々加減がわからなくなっていた。
「すまない、疲れたかい?」
曲がおわり、ふう、と息をついたエリーゼに声をかけると、エリーゼははい、とうなづいた。
手をとってテラスから中庭へとでてゆく。ここならゆっくり座って休める筈だ。
「何か飲み物を持ってくるよ、まっていて?」
そう言うと、上着の肘のあたりをつままれた。
「いいえ、一緒に座って?」
エリーゼはそっと囁く。一気に心臓が跳ねるのを感じた。エリーゼに手をひかれるままに、私はエリーゼの側にすわり、見つめあった。
いけない、絶世の美少女だが彼女は時限爆弾だ、いつどのように爆発するかわからないんだぞ、という心の声が聞こえるけれど、美しいエリーゼといっときの幻でも一緒にすごせるのに、それを無下にするなんてもったいない、という気持ちもある。
エリーゼは私の左手に彼女の右手をかさねたまま、庭の中程にある美しい噴水に気をとられているようだ。
なにか、会話。そうだ、なにか会話をしなくては。
「エリーゼ、きみは噴水が好きなのかい?」
魔法ではなく、あれは確か遥か遠いレストラドスの堰との水位の差で吹き上がっていると聞いたことがある。話して聞かせたら感心してもらえるだろうか?
それとも、まだあまり上手くはないが、噴水に魔法で美しい灯りを浮かべた方がロマンティックかな?
「え?いいえ?あの噴水からユーリが現れたと読んだので、ついじっくりみておりました…噴水のあの石像部分が砕け散って、一糸まとわぬ姿のユーリが姿を現しますのよ?素敵です」
彼女をどつかなかった私を誉めてほしい。
というか、全裸の男が王宮殿の庭の噴水を粉砕して現れて、衛兵は何をしていたんだ。捕まえて牢へぶちこめよ……いけない、つい気持ちが荒んだ。
私はエリーゼのやわらかな手のひらから左手を取り返し、膝の上で握りしめた。いまはもう、エリーゼの話は聞きたくなかった。
1
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる