婚約者の様子が(かなり)おかしい。

西藤島 みや

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婚約者による強制的ななにかについて

運命とはこんなにも過酷

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星祭の当日の朝には、私は再び学校に戻ることになる。学校に通う生徒はほぼすべて寮にくらしており、エリーゼとも春まで会えなくなるのだ。

エリーゼの騒々しさから解放されるうれしさと、心のそこへ降り積もるような寂しさに、エリーゼの手をにぎっていた。
「エリーゼ、離れているあいだに私のことをわすれないように、なにか贈り物をしたいのだけど」
えええ、とエリーゼが目を瞠った。それから、クローディアス様、サービス過剰ですわ…などと、赤くなったり青くなったりして呟いている。

「むこうに可愛い小物の露天があったから、そこにしようか?」
そう言って笑いかけると、はい、と頷いて着いてくる。14とはいえ、まだまだ子供っぽいところもあるのだ。

まだまだ少ないとはいえ、数件あいていた露天のひとつが、ちいさな小鳥の人形を使った可愛い時計の店だった。
店は天幕の奥に作られており、そのなかは温かい。薪を燃やすこうばしい匂いがした。

天井までところ狭しと置かれた商品は、年の瀬だというのに青々とした木葉や、赤や黄色の木の実と色鮮やかな小鳥がちいさな箱庭のような場所へ並べられて時を刻んでいる。

大きな柱時計から、手のひらに乗るほどのちいさなピアノのうえに、小鳥が営巣しているのを模したものまで色々あった。
「可愛いわ」
嬉しそうに微笑むエリーゼに、うっとりしながらどれがいい?とたずねた。

「そうですね、これなんかどうかしら?」
そう言って手に取ったのは先程見たピアノよりは少し大きなもの。
「オルゴールかな?蓋が動く…」
私が蓋をひらくと、甘いワルツが聞こえてきた。やさしいけれど、夭逝した音楽家の曲はなんとなくもの悲しく感じる。

小鳥は二羽おり、仲睦まじく嘴を寄せあっている。つい、自分とエリーゼを重ねて見てしまうのはちょっと陶酔しすぎだろうか。
「いいね、これにしよう」
私はそれを店主の女性に差し出し、箱にいれさせた。エリーゼも周りを見回し、何か買っている。




「何を買ったの?」
帰りの馬車のなかで尋ねると、ふふ、とエリーゼは笑った。
「ひみつです、マルセルのお屋敷に帰ってから、ゆっくりごらんになるといいですわ」
暗くて表情はみえないけれど、窓のあかりにエリーゼの瞳はきらきらと星のように輝いている。

「わかった。楽しみにしておくよ…エリーゼ、これを忘れないで」
私が買ったものを渡すと、エリーゼは大事そうに受け取り、膝においた。

「寄り添う二羽…素敵ですわよね。せつないオルゴールの曲も素晴らしいし」
嬉しげに言うので、私もうなづいた。
「まるで、のようですわね」
うん、といいかけて固まった。

なぜそこで見ず知らずの男がでてくるのだろう。
いや、12歳のエリーゼ(?)にとっては多分、ものすごく素敵なカップルだったのかな。だけど今、それを君に買ったのは私だよね?怒ったほうがいいのか?


混乱しているうち、宰相邸についてしまう。私はエリーゼを邸内までエスコートし、迎えに出た宰相に深々と頭をさげ、
「とっても素敵な夜でしたわ。あ、でも、あの事はわたくしたちだけの秘密にしておきましょうね?」
という言葉に、宰相の射殺すような視線があまりにも痛すぎて、曖昧な返事をしつつ早々に退散した。

あのことってどれだろう?キスしたこと?皇太子のことかな?それとも、夜会を抜け出したこと?いや、エリーゼのなかの別の記憶のこと?
とにかく、できれば宰相の前では言ってほしくなかったなあ。

などと考えつつ、マルセル屋敷へもどり、自室にはいってひとここちついた。ほっとして、ふと受け取った包みをひらく。

そこには赤の切妻屋根の可愛い小屋のまどから、なにか咥えた真っ白い小鳥が所在無げにはみ出ていた。
咥えていた紙片を取れば、きゅ、と一度だけ鳴って、引っ込んでしまい、出てくる気配はない。
紙片を丸めたものを広げると、

『わたくし、魔術学校への転校を認められました!ユーリも来ますわよ!楽しみですね!』

おもわず、寝椅子から転げ落ちて侍従に助けられた。もう、笑うしかない。
「は、ははははは」
彼女がいなくてさみしい気がする、などと呑気に思っていた事を、こんなにも後悔した夜はない。

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