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それは物語にもゲームにもない結末
曰く、物語の終わりはいつも
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「それから二人は幸せにくらしました」
と、エリーゼは言う。
メデタシメデタシ、と言ってユーリが合いの手をいれる。
また呪文だ、と私が眉根をよせているとエリーゼは駄目よと眉と眉の間に白い絹の手袋をはめた指先を這わせた。
「これから国を背負うかもしれない方が怖い顔をしていては、皆不安になりますわよ?」
と微笑む。
皇太子が廃嫡になったことで、今、この国では少々面倒な王位継承争いがおきていた。だが、
「どちらにせよ、私はいずれ伯爵家の婿養子になるし、王位継承権はなくなる」
そう言って両手を拡げて見せると、エリーゼはええ?と首を傾げた。
「前にも聞いたけど、君は王妃になりたいの?」
もし、そうなら、少々困ったな、と口元をかくして彼女を上目遣いにみあげた。
少々あざといとは知っているが、エリーゼは私の顔にとても弱い。こんなふうにすれば、大概の私のお願いごとは叶えてくれると分かっているのだ。
だが。少々やりすぎた。
「ファアアア!クローディアス様が!どこ、何処に幾らふりこめばいいのかしら!」
新しい呪文だねエリーゼ。ユーリが生ぬるい表情で僕らを見ながら
「エリーゼは重課金勢になりそうだよね」
と、さらに詠唱をつづけた。
「『推ししか勝たん』がわかる日が来るとは思いませんでしたわ!」
この二人の言語に、ついていけるものがいるだろうか?相変わらず蚊帳の外だ。
「へえ、カプ推しやめたの?」
んん?ユーリの言葉に、エリーゼがなぜか、動きを止めた。
「できませんの…ごめんなさいユーリ。あなたは最高に可憐で麗しい主人公ですけれど、わたくし」
そそっ、とエリーゼが私の側へとやってきた。さらさらと彼女の髪が氷の結晶のように輝く。
「クローディアス様を誰にもお譲りできませんの。今回のことで、はっきり分かりましたわ」
切なげに私を見上げるエリーゼの頬をなでると、彼女はうっとりと瞳を閉じた。
私は引寄せられるように、彼女にくちづけた。人前で大胆なことを、と次の瞬間には我に返り、耳まで赤くなったが、エリーゼがあんまりにも可愛すぎるので、不可抗力だ。
へえともはあ、とも言えない音を出して、ユーリは僕らを眺め、
「まあ、末長くお幸せに?」
と首の辺りを掻き、
「ああー、エリーゼ姫はゲットと思ってたんだけど、やっぱクローディアス様はあらゆる意味でつええなあ!」
と叫んだ。
「不死の聖騎士にそういっていただけるなら、鍛練した甲斐があったよ」
私が応えると、ユーリは、違う、と呟いた。
………………何が違うのだろう?
「そういえば、何故ユーリはあの時、偽皇太子が私だとバレないと思ったんだい?」
ああ、とロビンも頷く。
「やはり、ゲームにでてきたからかな?」
ユーリはちょっとくびをかしげてから、ああそれか、と頷いた。
「ただ単に、外国人て見分けが難しいからさ?俺も始め皇太子と生徒会長の見分け全然つかなかったから、種族ちがったらもっとみわけつかなくなるな、と思って」
見分けがつかなかったのか?私と、あの悪魔の?というか、そんな一かばちかの綱渡りを、あんなに自信ありそうにしていたということなの?と、私は目を見開いた。
「ユーリは龍騎士の国に行っても、何とか生きていけそうですわね!」
エリーゼはぱちんと両手をたたいてあわせ、優雅に微笑んだ。
まあ、それだけは、確かだけれど。
兎も角、私は何とか学校へと戻ることができたし、生徒会としての日常も戻ってきた。
だが、宰相見習いは激務だし、私の卒業まではまだ一年ある。結婚はエリーゼが卒業したあとと、宰相閣下から言い渡されてしまった。
あくまでも、エリーゼのためのかたちばかりの婚姻だと、閣下は途轍もなく恐ろしい顔で私を睨み、怒鳴った。
「仕事もまともにできんガキに、エリーゼをまかせられるか!!」
恐怖で失神しなかった私を誉めてほしい。あの方は本当に人間だろうか?アイアンゴーレムの間違いじゃないかなあ……。
私にとってエリーゼ・レスター・コーデリアは単なる幼馴染ではなかった。そしていつのまにか、彼女は私の最愛の婚約者になっていた。
エリーゼは、とても、とても奇妙な女性。そして世界で最も素晴らしい女性だ。
つややかな銀の髪、透き通る白い肌、美しいサファイアの瞳はいつも新しい発見にきらきらしている。エリーゼが私に話す謎の物語は、あまりにも荒唐無稽だけれど。
時々何を言っているのか全くわからないし、理解できるともおもえないけれど。
エリーゼはまるで夢物語の英雄でも見るような目で、きらきらと私を見る。
私はクローディアス。宰相であるコーデリア伯爵家の、少々頼りない婿養子になる予定だ。
「クローディアスさま、私は気づきましたわ!あなたが宰相になれたら、ユーリを国王にすればよろしいの……!」
また物騒なことを言い始めた口を、咄嗟に押さえる。他所へ聞こえたらまた何か変な騒動に巻き込まれかねない。私は手のひらに彼女の吐息を感じ、潤んだサファイアの瞳を眺めながら、ため息を吐いた。
「そうだ、ロビンのいる騎士団を見に行ってみないかい?」
これはいい考えだ、と私は自分のアイデアについ微笑んだ。つられてか、口を塞いだままのエリーゼもなぜか微笑む。
「新たな沼がありそうですわね!」
よくわからないが、騎士団の鍛練場は小高い場所にある……沼地ではない。
婚約者の様子が(かなり)おかしい。 完結
と、エリーゼは言う。
メデタシメデタシ、と言ってユーリが合いの手をいれる。
また呪文だ、と私が眉根をよせているとエリーゼは駄目よと眉と眉の間に白い絹の手袋をはめた指先を這わせた。
「これから国を背負うかもしれない方が怖い顔をしていては、皆不安になりますわよ?」
と微笑む。
皇太子が廃嫡になったことで、今、この国では少々面倒な王位継承争いがおきていた。だが、
「どちらにせよ、私はいずれ伯爵家の婿養子になるし、王位継承権はなくなる」
そう言って両手を拡げて見せると、エリーゼはええ?と首を傾げた。
「前にも聞いたけど、君は王妃になりたいの?」
もし、そうなら、少々困ったな、と口元をかくして彼女を上目遣いにみあげた。
少々あざといとは知っているが、エリーゼは私の顔にとても弱い。こんなふうにすれば、大概の私のお願いごとは叶えてくれると分かっているのだ。
だが。少々やりすぎた。
「ファアアア!クローディアス様が!どこ、何処に幾らふりこめばいいのかしら!」
新しい呪文だねエリーゼ。ユーリが生ぬるい表情で僕らを見ながら
「エリーゼは重課金勢になりそうだよね」
と、さらに詠唱をつづけた。
「『推ししか勝たん』がわかる日が来るとは思いませんでしたわ!」
この二人の言語に、ついていけるものがいるだろうか?相変わらず蚊帳の外だ。
「へえ、カプ推しやめたの?」
んん?ユーリの言葉に、エリーゼがなぜか、動きを止めた。
「できませんの…ごめんなさいユーリ。あなたは最高に可憐で麗しい主人公ですけれど、わたくし」
そそっ、とエリーゼが私の側へとやってきた。さらさらと彼女の髪が氷の結晶のように輝く。
「クローディアス様を誰にもお譲りできませんの。今回のことで、はっきり分かりましたわ」
切なげに私を見上げるエリーゼの頬をなでると、彼女はうっとりと瞳を閉じた。
私は引寄せられるように、彼女にくちづけた。人前で大胆なことを、と次の瞬間には我に返り、耳まで赤くなったが、エリーゼがあんまりにも可愛すぎるので、不可抗力だ。
へえともはあ、とも言えない音を出して、ユーリは僕らを眺め、
「まあ、末長くお幸せに?」
と首の辺りを掻き、
「ああー、エリーゼ姫はゲットと思ってたんだけど、やっぱクローディアス様はあらゆる意味でつええなあ!」
と叫んだ。
「不死の聖騎士にそういっていただけるなら、鍛練した甲斐があったよ」
私が応えると、ユーリは、違う、と呟いた。
………………何が違うのだろう?
「そういえば、何故ユーリはあの時、偽皇太子が私だとバレないと思ったんだい?」
ああ、とロビンも頷く。
「やはり、ゲームにでてきたからかな?」
ユーリはちょっとくびをかしげてから、ああそれか、と頷いた。
「ただ単に、外国人て見分けが難しいからさ?俺も始め皇太子と生徒会長の見分け全然つかなかったから、種族ちがったらもっとみわけつかなくなるな、と思って」
見分けがつかなかったのか?私と、あの悪魔の?というか、そんな一かばちかの綱渡りを、あんなに自信ありそうにしていたということなの?と、私は目を見開いた。
「ユーリは龍騎士の国に行っても、何とか生きていけそうですわね!」
エリーゼはぱちんと両手をたたいてあわせ、優雅に微笑んだ。
まあ、それだけは、確かだけれど。
兎も角、私は何とか学校へと戻ることができたし、生徒会としての日常も戻ってきた。
だが、宰相見習いは激務だし、私の卒業まではまだ一年ある。結婚はエリーゼが卒業したあとと、宰相閣下から言い渡されてしまった。
あくまでも、エリーゼのためのかたちばかりの婚姻だと、閣下は途轍もなく恐ろしい顔で私を睨み、怒鳴った。
「仕事もまともにできんガキに、エリーゼをまかせられるか!!」
恐怖で失神しなかった私を誉めてほしい。あの方は本当に人間だろうか?アイアンゴーレムの間違いじゃないかなあ……。
私にとってエリーゼ・レスター・コーデリアは単なる幼馴染ではなかった。そしていつのまにか、彼女は私の最愛の婚約者になっていた。
エリーゼは、とても、とても奇妙な女性。そして世界で最も素晴らしい女性だ。
つややかな銀の髪、透き通る白い肌、美しいサファイアの瞳はいつも新しい発見にきらきらしている。エリーゼが私に話す謎の物語は、あまりにも荒唐無稽だけれど。
時々何を言っているのか全くわからないし、理解できるともおもえないけれど。
エリーゼはまるで夢物語の英雄でも見るような目で、きらきらと私を見る。
私はクローディアス。宰相であるコーデリア伯爵家の、少々頼りない婿養子になる予定だ。
「クローディアスさま、私は気づきましたわ!あなたが宰相になれたら、ユーリを国王にすればよろしいの……!」
また物騒なことを言い始めた口を、咄嗟に押さえる。他所へ聞こえたらまた何か変な騒動に巻き込まれかねない。私は手のひらに彼女の吐息を感じ、潤んだサファイアの瞳を眺めながら、ため息を吐いた。
「そうだ、ロビンのいる騎士団を見に行ってみないかい?」
これはいい考えだ、と私は自分のアイデアについ微笑んだ。つられてか、口を塞いだままのエリーゼもなぜか微笑む。
「新たな沼がありそうですわね!」
よくわからないが、騎士団の鍛練場は小高い場所にある……沼地ではない。
婚約者の様子が(かなり)おかしい。 完結
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エリーゼちゃんも腐ってても可愛いし健気だし大好きです。
他キャラクター達も魅力的で、ストーリーも軽快で楽しかったです。
出来たらこの後のみんながどのように過ごしていくのか、王宮のゴタゴタやユーリは竜騎士のところで
どうなっちゃうのかも明らかにしていただけたら嬉しいです。
面白い話をありがとうございました。
感想ありがとうございます。実はファンタジー的要素を入れたものを書いたのはこの作品がはじめてで、試行錯誤しながらなんとか結末まで書いたものなので、楽しんで頂けて嬉しいです。
まあ、ユーリはチートですからね…番外編、ちょっと書いてみようかな…気長に待っていただけるなら。