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運命の輪が廻る
王国の花
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足早に歩いて行くフィオラに、リアムは荷物を抱えてついて行く。
「メアリグレース」
ぱた、と足を止めたフィオラにリアムが追い付くと、フィオラはリアムを見上げて言った。
「メアリグレースって言うのね、今は。テイルズ様だったかしら」
その言い方に、リアムは頭をふった。
「誤解ですねえさん、メアリ…テイルズ男爵令嬢がここにいるのは確かですが、僕はそれ程親しくは」
フィオラはそれを最後まで聞かず、また早足で歩きはじめた。
「どうだか。どちらでもいいわ、皇女さまのところへ行くわよ」
リアムの返答も聞かずにフィオラは歩きだす。リアムは何か言いたげではあったものの、荷物を抱えたままフィオラのあとを追いかけて、再び歩きだした。
メルヴィル・デア・ソアラは、この国の第一皇女であり、また皇太子でもある女性だ。先般兄を亡くし、また他の妹達がいまだ幼いことから、兄の死から数日も立たずの立太子となった。
すみれ色と銀の混じり会う美しい巻き髪に、濃い緋色の瞳。出会うもの全てを惹き付けると噂され、帝国アテナシエアの花とさえ呼ばれる。
そのメルヴィルのための寮の一室。豪華ではあるが、高層階にあっても窓もなく、ものものしい騎士の検問を幾度かこえたところでようやく、応接室へ通された。
「どうぞ、おはいりになって」
メルヴィルは応接室の椅子にかけて二人を出迎えた。
「リアム様のほうから此方へいらっしゃるなんて、わたくしは光栄ね。取り巻きのかたに叱られてしまいそう…ご用はなにかしら?」
そう言いながら、カップをもちあげて座るよう勧めた。フィオラはちらりとリアムへ目を向けたけれど、リアムは立ったまま、ぴくりとも動かずに張り付けた笑みをうかべていた。
「義理の姉が学園の二年次へ編入いたしましたので、皇女さまへご挨拶をしたいと申しております」
そう言って、背後のフィオラが前に出られるよう少し下がった。
「そう、バセッティ家の令嬢ね。最近噂の」
そういいながら今度は扇でフィオラを指す。フィオラはスカートをひき、膝を曲げて深々と挨拶をした。
「フィオラ・バセッティでございます」
頭をあげるよう言われて、フィオラが頭をあげると
「あなた、噂になっていましてよ?兄が世を儚んだのは、あなたが男爵令息と良い仲になったからだと……勿論、そんなことで国家の重責を放り出す兄ではございませんでしたけれど、ひとの口に戸板はたてられませんでしょ?」
もう一度座るように勧められて、二人はようやく応接室のソファにあさく腰かけた。
「フィオラは、王宮へ参内したことはないときいています。噂は噂ということではないかと」
まるで他人のような言い方に驚き、フィオラはリアムを見た。第一彼がフィオラを名前で呼ぶなどということが、いままであっただろうか。
「そう、貴方がいうならそうかもしれないわね…フィオラ?随分と綺麗な女性だわ。まるで花が咲くようよね。ねえ、あなたもそう思わない?」
何をおもったか、たちあがってメルヴィルはフィオラの首に巻かれていた制服のスカーフを抜き取った。
「皇女様、何をなさいます?」
きょとんと首を傾げたフィオラに、メルヴィルはそのまま何も言わず、チラリと2人を見ただけで扉の向こうへ去ってしまった。
「嘘でしょ?私これからどうやって通学するのよ」
襟元を押さえながら歩くフィオラに、リアムは首を傾げる。
「別のスカーフをつかっては?」
フィオラはかぶりをふった。
「天下の皇女様が持っていったのよ?翌日何もないみたいに予備のスカーフだなんて」
ふう、とフィオラは眉をしかめた。
「あなたは助けには全然なってくれないみたいだし、せっかく家から出られたのに、これでは前途多難だわ」
頬を膨らまし、フィオラは腰に手をあてた。
「メアリグレース」
ぱた、と足を止めたフィオラにリアムが追い付くと、フィオラはリアムを見上げて言った。
「メアリグレースって言うのね、今は。テイルズ様だったかしら」
その言い方に、リアムは頭をふった。
「誤解ですねえさん、メアリ…テイルズ男爵令嬢がここにいるのは確かですが、僕はそれ程親しくは」
フィオラはそれを最後まで聞かず、また早足で歩きはじめた。
「どうだか。どちらでもいいわ、皇女さまのところへ行くわよ」
リアムの返答も聞かずにフィオラは歩きだす。リアムは何か言いたげではあったものの、荷物を抱えたままフィオラのあとを追いかけて、再び歩きだした。
メルヴィル・デア・ソアラは、この国の第一皇女であり、また皇太子でもある女性だ。先般兄を亡くし、また他の妹達がいまだ幼いことから、兄の死から数日も立たずの立太子となった。
すみれ色と銀の混じり会う美しい巻き髪に、濃い緋色の瞳。出会うもの全てを惹き付けると噂され、帝国アテナシエアの花とさえ呼ばれる。
そのメルヴィルのための寮の一室。豪華ではあるが、高層階にあっても窓もなく、ものものしい騎士の検問を幾度かこえたところでようやく、応接室へ通された。
「どうぞ、おはいりになって」
メルヴィルは応接室の椅子にかけて二人を出迎えた。
「リアム様のほうから此方へいらっしゃるなんて、わたくしは光栄ね。取り巻きのかたに叱られてしまいそう…ご用はなにかしら?」
そう言いながら、カップをもちあげて座るよう勧めた。フィオラはちらりとリアムへ目を向けたけれど、リアムは立ったまま、ぴくりとも動かずに張り付けた笑みをうかべていた。
「義理の姉が学園の二年次へ編入いたしましたので、皇女さまへご挨拶をしたいと申しております」
そう言って、背後のフィオラが前に出られるよう少し下がった。
「そう、バセッティ家の令嬢ね。最近噂の」
そういいながら今度は扇でフィオラを指す。フィオラはスカートをひき、膝を曲げて深々と挨拶をした。
「フィオラ・バセッティでございます」
頭をあげるよう言われて、フィオラが頭をあげると
「あなた、噂になっていましてよ?兄が世を儚んだのは、あなたが男爵令息と良い仲になったからだと……勿論、そんなことで国家の重責を放り出す兄ではございませんでしたけれど、ひとの口に戸板はたてられませんでしょ?」
もう一度座るように勧められて、二人はようやく応接室のソファにあさく腰かけた。
「フィオラは、王宮へ参内したことはないときいています。噂は噂ということではないかと」
まるで他人のような言い方に驚き、フィオラはリアムを見た。第一彼がフィオラを名前で呼ぶなどということが、いままであっただろうか。
「そう、貴方がいうならそうかもしれないわね…フィオラ?随分と綺麗な女性だわ。まるで花が咲くようよね。ねえ、あなたもそう思わない?」
何をおもったか、たちあがってメルヴィルはフィオラの首に巻かれていた制服のスカーフを抜き取った。
「皇女様、何をなさいます?」
きょとんと首を傾げたフィオラに、メルヴィルはそのまま何も言わず、チラリと2人を見ただけで扉の向こうへ去ってしまった。
「嘘でしょ?私これからどうやって通学するのよ」
襟元を押さえながら歩くフィオラに、リアムは首を傾げる。
「別のスカーフをつかっては?」
フィオラはかぶりをふった。
「天下の皇女様が持っていったのよ?翌日何もないみたいに予備のスカーフだなんて」
ふう、とフィオラは眉をしかめた。
「あなたは助けには全然なってくれないみたいだし、せっかく家から出られたのに、これでは前途多難だわ」
頬を膨らまし、フィオラは腰に手をあてた。
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