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見えない殺意
思わぬ再会
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2人は講堂の一番高い場所にある貴賓席へと足をすすめた。あと少しで、その入り口というときに、前をあるいていたメルヴィルの腕を掴んだものがいる。
「またなにか良からぬ算段ではないだろうな」
その言い方に驚き、あわててメルヴィルと男子生徒の間に入った。
「フィオラ・バセッティ?」
メルヴィルの腕を掴んだ手を押し戻そうと顔をあげると、相手は
「リアムの義姉上ですね?覚えていませんか?」
そう言って、メルヴィルの手を放した。
「ロズウェル公爵家の長男、ジャスパーよ」
耳元でメルヴィルが囁いた。
「わたくしの婚約者ですけれど、じきに破談になると思いますわ」
それをまるで当たり前のように言うメルヴィルを、まるで裏付けるようにジャスパーはきつく睨んでいる。
あまり上手くいっていないのね、とフィオラは2人を交互に見ながら思った。
「しかしフィオラ、貴方が学校へ来ているなんて知らなかったな」
メルヴィルへの態度と違い、フィオラへ向き直ったジャスパーは屈託ない笑顔をうかべた。
「あら、リアムはなにも言ってませんのね?」
確かジャスパーと、その弟であるジェットとリアムは今も友人だと聞いていたのだが。
「仕方ないわよ、この子達は皆メアリグレース男爵令嬢の言うなりなのだもの。ご覧なさいよ」
そう言ってメルヴィルは持っていた扇で講堂の端を指し示した。
そこには、次の外国語の授業のために生徒達が準備をはじめていた。しかし、その準備中にも関わらず、ぞろぞろとかたまって話している生徒達がいる。
「リアム?」
その生徒達の真ん中にいるのは、確かにリアムだ。他の男子生徒と共にいるが、その隣を陣取って他の男子たちに話しかけては、フィオラたちにまで聞こえるような甲高い笑い声をあげているのは、メアリグレースだった。
メアリグレースは、二つに結んだ白い大きなリボンをつけた髪をふりながら、何度も何度もリアムに抱きついて胸を押し付け、アピールしている。されているリアムの表情はこの角度からは見えなかったが、フィオラはどこか胸の奥でチリッと焼けつくような痛みを感じてそこから目を離した。
「あの『キャハハハ』を聞くと頭痛がするの。どこかにやるか、静かにさせるかどちらかにして頂戴」
メルヴィルの言い方に、ジャスパーはきつく睨み返しながらメルヴィルの手にしている扇をにぎり、
「陛下がどう考えるかは知らないが、俺はお前のような慈悲の欠片もない女にこの国を任せるつもりはない!」
と突き放した。よろけたメルヴィルをフィオラが支える。
「フィオラ・バセッティ。誤解無きよう言っておくが、あの男爵令嬢はとても心の清い、可憐な女性だ。その権力にとり憑かれた女が、他の女生徒を使って彼女を攻撃するから、我々生徒会が守護しているだけで、下心はない……リアムも同様だ。貴方も困ったことがあれば、すぐ相談してくれ。いいな?」
今目の前で、皇女を突き飛ばしておいてこのいいざまはなんなの、とフィオラは思ったが、それより早くメルヴィルがフィオラの腕をひいた。
「行きましょう」
黙って従うフィオラの背中に、ジャスパーは
「あとで連絡をくれよ!」
と声をかけてきた。フィオラの手を引くメルヴィルの手に力が入り、フィオラは僅かな痛みを感じながら、その背中についていったのだった。
「またなにか良からぬ算段ではないだろうな」
その言い方に驚き、あわててメルヴィルと男子生徒の間に入った。
「フィオラ・バセッティ?」
メルヴィルの腕を掴んだ手を押し戻そうと顔をあげると、相手は
「リアムの義姉上ですね?覚えていませんか?」
そう言って、メルヴィルの手を放した。
「ロズウェル公爵家の長男、ジャスパーよ」
耳元でメルヴィルが囁いた。
「わたくしの婚約者ですけれど、じきに破談になると思いますわ」
それをまるで当たり前のように言うメルヴィルを、まるで裏付けるようにジャスパーはきつく睨んでいる。
あまり上手くいっていないのね、とフィオラは2人を交互に見ながら思った。
「しかしフィオラ、貴方が学校へ来ているなんて知らなかったな」
メルヴィルへの態度と違い、フィオラへ向き直ったジャスパーは屈託ない笑顔をうかべた。
「あら、リアムはなにも言ってませんのね?」
確かジャスパーと、その弟であるジェットとリアムは今も友人だと聞いていたのだが。
「仕方ないわよ、この子達は皆メアリグレース男爵令嬢の言うなりなのだもの。ご覧なさいよ」
そう言ってメルヴィルは持っていた扇で講堂の端を指し示した。
そこには、次の外国語の授業のために生徒達が準備をはじめていた。しかし、その準備中にも関わらず、ぞろぞろとかたまって話している生徒達がいる。
「リアム?」
その生徒達の真ん中にいるのは、確かにリアムだ。他の男子生徒と共にいるが、その隣を陣取って他の男子たちに話しかけては、フィオラたちにまで聞こえるような甲高い笑い声をあげているのは、メアリグレースだった。
メアリグレースは、二つに結んだ白い大きなリボンをつけた髪をふりながら、何度も何度もリアムに抱きついて胸を押し付け、アピールしている。されているリアムの表情はこの角度からは見えなかったが、フィオラはどこか胸の奥でチリッと焼けつくような痛みを感じてそこから目を離した。
「あの『キャハハハ』を聞くと頭痛がするの。どこかにやるか、静かにさせるかどちらかにして頂戴」
メルヴィルの言い方に、ジャスパーはきつく睨み返しながらメルヴィルの手にしている扇をにぎり、
「陛下がどう考えるかは知らないが、俺はお前のような慈悲の欠片もない女にこの国を任せるつもりはない!」
と突き放した。よろけたメルヴィルをフィオラが支える。
「フィオラ・バセッティ。誤解無きよう言っておくが、あの男爵令嬢はとても心の清い、可憐な女性だ。その権力にとり憑かれた女が、他の女生徒を使って彼女を攻撃するから、我々生徒会が守護しているだけで、下心はない……リアムも同様だ。貴方も困ったことがあれば、すぐ相談してくれ。いいな?」
今目の前で、皇女を突き飛ばしておいてこのいいざまはなんなの、とフィオラは思ったが、それより早くメルヴィルがフィオラの腕をひいた。
「行きましょう」
黙って従うフィオラの背中に、ジャスパーは
「あとで連絡をくれよ!」
と声をかけてきた。フィオラの手を引くメルヴィルの手に力が入り、フィオラは僅かな痛みを感じながら、その背中についていったのだった。
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