やり直しは嫌なので、全力で拒否します!

西藤島 みや

文字の大きさ
23 / 33
見えない殺意

思わぬ再会

しおりを挟む
2人は講堂の一番高い場所にある貴賓席へと足をすすめた。あと少しで、その入り口というときに、前をあるいていたメルヴィルの腕を掴んだものがいる。

「またなにか良からぬ算段ではないだろうな」
その言い方に驚き、あわててメルヴィルと男子生徒の間に入った。
「フィオラ・バセッティ?」
メルヴィルの腕を掴んだ手を押し戻そうと顔をあげると、相手は
「リアムの義姉上ですね?覚えていませんか?」
そう言って、メルヴィルの手を放した。

「ロズウェル公爵家の長男、ジャスパーよ」
耳元でメルヴィルが囁いた。
「わたくしの婚約者ですけれど、じきに破談になると思いますわ」
それをまるで当たり前のように言うメルヴィルを、まるで裏付けるようにジャスパーはきつく睨んでいる。

あまり上手くいっていないのね、とフィオラは2人を交互に見ながら思った。
「しかしフィオラ、貴方が学校へ来ているなんて知らなかったな」
メルヴィルへの態度と違い、フィオラへ向き直ったジャスパーは屈託ない笑顔をうかべた。

「あら、リアムはなにも言ってませんのね?」
確かジャスパーと、その弟であるジェットとリアムは今も友人だと聞いていたのだが。
「仕方ないわよ、この子達は皆メアリグレース男爵令嬢の言うなりなのだもの。ご覧なさいよ」
そう言ってメルヴィルは持っていた扇で講堂の端を指し示した。

そこには、次の外国語の授業のために生徒達が準備をはじめていた。しかし、その準備中にも関わらず、ぞろぞろとかたまって話している生徒達がいる。
「リアム?」

その生徒達の真ん中にいるのは、確かにリアムだ。他の男子生徒と共にいるが、その隣を陣取って他の男子たちに話しかけては、フィオラたちにまで聞こえるような甲高い笑い声をあげているのは、メアリグレースだった。

メアリグレースは、二つに結んだ白い大きなリボンをつけた髪をふりながら、何度も何度もリアムに抱きついて胸を押し付け、アピールしている。されているリアムの表情はこの角度からは見えなかったが、フィオラはどこか胸の奥でチリッと焼けつくような痛みを感じてそこから目を離した。


「あの『キャハハハ』を聞くと頭痛がするの。どこかにやるか、静かにさせるかどちらかにして頂戴」

メルヴィルの言い方に、ジャスパーはきつく睨み返しながらメルヴィルの手にしている扇をにぎり、
「陛下がどう考えるかは知らないが、俺はお前のような慈悲の欠片もない女にこの国を任せるつもりはない!」
と突き放した。よろけたメルヴィルをフィオラが支える。

「フィオラ・バセッティ。誤解無きよう言っておくが、あの男爵令嬢はとても心の清い、可憐な女性だ。その権力にとり憑かれた女が、他の女生徒を使って彼女を攻撃するから、我々生徒会が守護しているだけで、下心はない……リアムも同様だ。貴方も困ったことがあれば、すぐ相談してくれ。いいな?」

今目の前で、皇女を突き飛ばしておいてこのいいざまはなんなの、とフィオラは思ったが、それより早くメルヴィルがフィオラの腕をひいた。
「行きましょう」
黙って従うフィオラの背中に、ジャスパーは
「あとで連絡をくれよ!」
と声をかけてきた。フィオラの手を引くメルヴィルの手に力が入り、フィオラは僅かな痛みを感じながら、その背中についていったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い

雲乃琳雨
恋愛
 バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。  ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?  元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...