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繰り返す悪夢の果て
断罪のとき
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「メルヴィル皇女、あなたとバセッティ令嬢ならびにその取り巻き令嬢たちの悪事は、全て私たちが把握している」
ジェットがどこをみているのか焦点の合わない奇妙な表情のまま、震える手で手にしていたビラを会場にばら蒔いた。
「でっち上げですわ、こんな!」
フィオラの傍にいた令嬢が叫ぶ。
「わたくし、こんなはしたない真似はいたしません!」
少し向こうでも声が上がる。
「メルヴィル皇女は恐ろしい女だわ!自らの兄であるルーカスを謀殺し、自分が女王になろうだなんて!それに味方するあなた達も同罪だわ!」
壇上でリアムの背に隠れるようにして、メアリグレースは言い返した。
「成る程、突然のルーカス殿下の死にはそのようなからくりが!」
わざとらしい声を観覧席からあげたのは、メアリグレースの父親、テイルズ男爵だった。
「恐ろしい女だ!では、バセッティ司祭の殺害もメルヴィル皇女の仕業というわけか!」
殺害?とざわめきがおきた。ある貴族たちは、動揺に落ち着きなく壇上にいる4人を見上げている。
「言い訳があれば聞きますわよ、メルヴィル皇女さま」
鼻で笑い、メアリグレースはまるで王女は自分であるかのようにジャスパーとジェットに命令した。
「あの女をこちらへ連れてきなさい」
ジャスパーとジェットは、一瞬苦痛に顔を歪ませ、それからまた茫然としたような表情になって壇をおりようと歩きだした。
「それにはおよびません、私は自らそちらに参ります」
凛とした声が斎場に響き、ざわめきが一瞬でしいん、と静まり返った。
「お話をきいてもらえるようでよかったわ、このままではあまりに不様で目も当てられない有り様ですもの」
そう言って、メルヴィル皇女はフィオラに手をのばした。
「フィオラ・バセッティ。手を貸して頂けるかしら」
すると、フィオラがいるあたりの令嬢たちがサッと場所をあけた。
「フィオラ・バセッティ!あれが魔女よ!怪しげな魔術で私の親友だったリディアを!」
メアリグレースが騒ぎ立てるが、だれも返答をしない。既にフィオラは何かかかれた石板を掲げていたからだ。その石板から、青い光が放たれた。
一際強い風が屋内である会場を吹き荒れ、だれもが一瞬目を閉じた。
「なんだ、これは!」
次に目を開いたとき、床には魔法陣の描かれた数多くの紙切れが散らばっていた。それは、祭壇を中心に貴族のすわる席まで広がっている。
「つまらない奇術ですな、皇女殿下!」
テイルズ男爵はヘラヘラと笑い、それから壇上の娘に目を止めて、首をかしげた。
「メアリグレース?」
メアリグレースは怯えたようにその紙吹雪を見下ろしている。メルヴィル皇女はすっと息を吸い、
「ジャスパー・ゼア・ロゼリア公爵子息さま?」
と、祭壇の上にいるジャスパーに呼び掛けた。
「本当にあなたは、わたくしとの婚約を破棄なさるおつもりがおありかしら?」
祭壇の上に立ち尽くし、ぼんやりと紙吹雪を眺めていたジャスパーが、突然顔をあげた。
「いいえ、私にそんなつもりはありませんが……皇女、突然何を??ここは……どこだ?」
最後は隣に立つ弟、ジェットに呼び掛けたが、ジェットもまた、首をふり、回りを見回している。
「メアリグレース・テイルズ男爵令嬢は、その魔法陣と薬物を使って我々に一種の催眠術をかけていました。フィオラが石板に描いたのはそれを解くための、魔法陣です」
それまで黙っていたリュゼが、朗、と声をあげた。
貴族たちは、なるほどと紙吹雪を見下ろす。紙吹雪の魔法陣には、一枚残らずメアリグレースの名がかかれていた。
「猊下、わたくしを裏切るのですか!」
メアリグレースがリュゼにとりすがるが、リュゼは歯を見せてそれをわらった。
「裏切る?ここへ来てからいちどたりと、お前の味方だったことなどない…お前は罠にかかったのだよ」
毒々しいほどの笑みを浮かべるリュゼに、メアリグレースの表情はごっそり抜け落ちた。
「テイルズ男爵とメアリグレース・テイルズを捕らえなさい!」
メルヴィル皇女がそう言うと、どこからともなく衛兵がかけ出てきてテイルズ男爵を捕らえた。
「ええい、触るな!」
メアリグレースは捕らえようとする衛兵たちを振り切り、駆け出した。
「おのれフィロニアの分際で!どこまでわたくしを愚弄するのだ!」
そう言うと、メアリグレースは懐からなにかを取り出した。それは紙吹雪と同じく、なにか書き付けられた紙片だ。
「だがカンタレラはわたくしの味方だわ!」
そう言うと、紙片に口づけて息を吹き掛けた。
それを、祭壇の、バセッティの棺へ張り付ける。
「お前たちもみな、死ぬがいい!」
ボウ、と燃え上がる紙片から出た焔が、斎場を包む。あちこちで爆発がおこり、貴族たちは悲鳴をあげて逃げ惑う。
「皇女殿下!出口へ!」
ジャスパーの声が聞こえ、ロゼリア兄弟がメルヴィルにかけよって行くのをフィオラは見た。
「リアム!」
フィオラは壇上のリュゼへ叫んだ。
「逃げましょう!」
だが、それより前にメアリグレースがリアムの腕を引いていく。
そのとき、ひときわ大きな爆発がすぐそばでおき、フィオラはその場に倒れ付してしまった。
ジェットがどこをみているのか焦点の合わない奇妙な表情のまま、震える手で手にしていたビラを会場にばら蒔いた。
「でっち上げですわ、こんな!」
フィオラの傍にいた令嬢が叫ぶ。
「わたくし、こんなはしたない真似はいたしません!」
少し向こうでも声が上がる。
「メルヴィル皇女は恐ろしい女だわ!自らの兄であるルーカスを謀殺し、自分が女王になろうだなんて!それに味方するあなた達も同罪だわ!」
壇上でリアムの背に隠れるようにして、メアリグレースは言い返した。
「成る程、突然のルーカス殿下の死にはそのようなからくりが!」
わざとらしい声を観覧席からあげたのは、メアリグレースの父親、テイルズ男爵だった。
「恐ろしい女だ!では、バセッティ司祭の殺害もメルヴィル皇女の仕業というわけか!」
殺害?とざわめきがおきた。ある貴族たちは、動揺に落ち着きなく壇上にいる4人を見上げている。
「言い訳があれば聞きますわよ、メルヴィル皇女さま」
鼻で笑い、メアリグレースはまるで王女は自分であるかのようにジャスパーとジェットに命令した。
「あの女をこちらへ連れてきなさい」
ジャスパーとジェットは、一瞬苦痛に顔を歪ませ、それからまた茫然としたような表情になって壇をおりようと歩きだした。
「それにはおよびません、私は自らそちらに参ります」
凛とした声が斎場に響き、ざわめきが一瞬でしいん、と静まり返った。
「お話をきいてもらえるようでよかったわ、このままではあまりに不様で目も当てられない有り様ですもの」
そう言って、メルヴィル皇女はフィオラに手をのばした。
「フィオラ・バセッティ。手を貸して頂けるかしら」
すると、フィオラがいるあたりの令嬢たちがサッと場所をあけた。
「フィオラ・バセッティ!あれが魔女よ!怪しげな魔術で私の親友だったリディアを!」
メアリグレースが騒ぎ立てるが、だれも返答をしない。既にフィオラは何かかかれた石板を掲げていたからだ。その石板から、青い光が放たれた。
一際強い風が屋内である会場を吹き荒れ、だれもが一瞬目を閉じた。
「なんだ、これは!」
次に目を開いたとき、床には魔法陣の描かれた数多くの紙切れが散らばっていた。それは、祭壇を中心に貴族のすわる席まで広がっている。
「つまらない奇術ですな、皇女殿下!」
テイルズ男爵はヘラヘラと笑い、それから壇上の娘に目を止めて、首をかしげた。
「メアリグレース?」
メアリグレースは怯えたようにその紙吹雪を見下ろしている。メルヴィル皇女はすっと息を吸い、
「ジャスパー・ゼア・ロゼリア公爵子息さま?」
と、祭壇の上にいるジャスパーに呼び掛けた。
「本当にあなたは、わたくしとの婚約を破棄なさるおつもりがおありかしら?」
祭壇の上に立ち尽くし、ぼんやりと紙吹雪を眺めていたジャスパーが、突然顔をあげた。
「いいえ、私にそんなつもりはありませんが……皇女、突然何を??ここは……どこだ?」
最後は隣に立つ弟、ジェットに呼び掛けたが、ジェットもまた、首をふり、回りを見回している。
「メアリグレース・テイルズ男爵令嬢は、その魔法陣と薬物を使って我々に一種の催眠術をかけていました。フィオラが石板に描いたのはそれを解くための、魔法陣です」
それまで黙っていたリュゼが、朗、と声をあげた。
貴族たちは、なるほどと紙吹雪を見下ろす。紙吹雪の魔法陣には、一枚残らずメアリグレースの名がかかれていた。
「猊下、わたくしを裏切るのですか!」
メアリグレースがリュゼにとりすがるが、リュゼは歯を見せてそれをわらった。
「裏切る?ここへ来てからいちどたりと、お前の味方だったことなどない…お前は罠にかかったのだよ」
毒々しいほどの笑みを浮かべるリュゼに、メアリグレースの表情はごっそり抜け落ちた。
「テイルズ男爵とメアリグレース・テイルズを捕らえなさい!」
メルヴィル皇女がそう言うと、どこからともなく衛兵がかけ出てきてテイルズ男爵を捕らえた。
「ええい、触るな!」
メアリグレースは捕らえようとする衛兵たちを振り切り、駆け出した。
「おのれフィロニアの分際で!どこまでわたくしを愚弄するのだ!」
そう言うと、メアリグレースは懐からなにかを取り出した。それは紙吹雪と同じく、なにか書き付けられた紙片だ。
「だがカンタレラはわたくしの味方だわ!」
そう言うと、紙片に口づけて息を吹き掛けた。
それを、祭壇の、バセッティの棺へ張り付ける。
「お前たちもみな、死ぬがいい!」
ボウ、と燃え上がる紙片から出た焔が、斎場を包む。あちこちで爆発がおこり、貴族たちは悲鳴をあげて逃げ惑う。
「皇女殿下!出口へ!」
ジャスパーの声が聞こえ、ロゼリア兄弟がメルヴィルにかけよって行くのをフィオラは見た。
「リアム!」
フィオラは壇上のリュゼへ叫んだ。
「逃げましょう!」
だが、それより前にメアリグレースがリアムの腕を引いていく。
そのとき、ひときわ大きな爆発がすぐそばでおき、フィオラはその場に倒れ付してしまった。
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