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追記
代 償〈元王太子ウィルの手記〉
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『お前は王になるのです、そのためにお前は生かしてやっているのだから』
うとうとしていた私は、ヘルミーナ王妃のその言葉が聞こえた気がして、がばっ、と体を起こした。
「……どうした、何かあったのか?」
荷馬車を走らせていた黒い帽子の男が、不安げに尋ねてきた。
「いいや、何でもない。気をつけて走らせろよ、踏みはずせば谷底だ」
ああ、と男は前へ向き直る。ここはかつて私の治めるはずだった王国のとなり、王政ではなく議会政治をとるグラナスの、さらに海沿いへとむかう山道だ。
傭兵として日々の糧を稼ぐわたしにとって、この危険な道はありがたいものだ。険しく細いつづら折りの山道、山賊がでるという薄暗い森、ときには野生の熊にまで出会う。余りに危険だから、と傭兵を雇って荷馬車に同乗してもらう農民が多い。これは剣を振り回すくらいしか取り柄のない私が見つけた割りのいい仕事だった。
この荷馬車には内陸で生産された小麦や芋、野菜などが乗せられ、そこに燃料としても使われている藁を被せたものだ。
藁を燃やして暖をとるなんて考えてみたことさえなかった。炭や薪の買えない者は藁でいっときの暖をとるが、それはすぐに燃え尽きるうえに、爆ぜたり煙がでたり、灰が舞うため宿屋では燃やすととても嫌がられる。しかも安宿では毛布はまるで薄い毛布一枚だけがあたりまえだから、真冬に薪が買えないと、命にかかわる。
こんなことすら知らなかったのだ。私はあまりにも愚鈍な王子であった。そんなだから、私の周りにはいつでも私のもつ王太子という肩書きだけを奉る者たちがむらがっていたんだろう。貴族たち、官僚、大臣たちはおろか、実の母上でさえそうだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マリエッタが殺されるじゃないか」
口をついてでたのは、我ながらクズな台詞だった。もう彼女を護る気等ないくせに、シャルロットを犠牲にしようとしている。
マリエッタを守りたかったんじゃない、ただ母上が憐れだった。けして愛してくれない夫にすがり、自分が生んだ子供が王になることだけをねがった憐れな女。最後には正気すら失った母上に、自分の目の前で人を殺させたくなかっただけだ。
次に分かったのは、まるで犬が遠吠えをするような声で叫びながら自分の頭を吹き飛ばそうとするダニエルと、それを止めるために危険を犯して銃身を握ったガイズ。
放たれた弾丸はダニエルとガイズには当たらず、私の少し前あたりに硝子片が降り注いだ。
シャルロット。幼いときから婚約によって互いに縛られていた彼女を、私は殺してしまうところだった。マリエッタが現れて以来、いつかこうなるのではないかと心のどこかで考えていた。私が死ぬか、彼女が死ななければ物語は完成しない気がしていたのだ。
彼女はよく本を読んでいた。私との会話に退屈していたのだろう。彼女が主人公の本に、私はどんな愚かな脇役として登場していたのだろうか。
「どうするつもりだ、ウィル」
疲れきり、掠れた父の声が聞こえた。
「国を出ます。これより先、私は陛下の名を語りません」
私は頭を垂れ、もはや何の意味も成さなくなった王家の紋章のはいったマントと、腰につけていたサーベルを父に……王陛下に差し出した。
「命乞いか」
馬鹿にしているわけでもなく、憐れむでもない。ただ、どこか脱力したような王陛下の声に、膝をつき頭をさげた。
「いいだろう。ルカを兄殺しの王にしたくはない」
殆ど会う機会さえなかった弟。あれが王になる頃、きっと私は流浪の民としてどこかで屍になっているだろう。
「ご温情に感謝いたします、陛下」
私はカッターシャツとスラックスだけの姿のまま、議場をあとにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マリエッタに父の裁決を伝えたあと、私は執務室へと向かった。そこに、私の練習用の着替えと剣がおかれていたからだ。
「これは、王太子殿下」
なかに不愉快な人物をみとめ、つい動きをとめた。
「ロイス、バリーと共に自宅で沙汰を待つよう言われなかったか?」
何をまたたくらんでいる?私はなるべく傍にいかないようにしながら、ロイスの手元をみた。
「ここにある権利書はすべて紙切れだぞ。私が王太子でなくなるからな」
すると、ロイスはひやりとするような不気味な笑顔をむけた。
「そうでしたか、私は次にいらっしゃるルカ殿下に誠心誠意お仕えするだけです。ですから、ここにあるものは何も持ち出さないで頂きたい」
はぁっ、と肩を落とした。やはりわかっていないようだ。
「お前とバリー宰相は殺人教唆と詐欺の罪で北方へ送られる。今日の謹慎は陛下のせめてもの温情だ。家に帰り、最後の別れをしろ。これ以上ここにいれば、牢へ直接送られるぞ」
私が着替えのはいった袋と剣を手に部屋を出ようとすると、ロイスはその腕を掴んだ。
「マリエッタは?マリエッタは、貴方と一緒にゆくのですか?それともマーカスとかいう男のところへ?」
ぎりぎりと腕を締め上げる手を無理やり引き離した。
「マリエッタも農奴として北へ行く」
実際には農奴は自由に自分の行き先など決められない。方角は同じ北でも、おそらくは会うことは叶わないだろう。
だが、ロイスは勝ち誇ったような顔で
「そうですか、マリエッタは私を選んだんですね!そうか!私の勝ちだ!」
と笑った。私はなにも言わず、荷物を持ち直して部屋をあとにした。
執務室からは、高笑いが聞こえていた。私は衛兵に声をかけ、奴を牢へ直接送るよう指示しておいた。
◇◇◇◇◇◇◇
考えてみたら、最後に会ったのがロイスというのはいただけなかったな。せめて、こっそりルカの様子くらいみてくればよかった。あれから2年もたつが、そんなことばかり考えている。
カタ、と荷馬車が止まり、海辺ののどかな町に出た。無口な農夫から謝礼をうけとり、漁師の詰所へとむかう。
「兄さん、他所もんだろ?何してる」
自警団らしき男たちが近づいてくるので、
「傭兵だよ、野菜運びの手伝いの帰りだ」
と答えると、胡散臭いものを見るように
「この時間じゃ街へ魚は運ばねえだろ」
と凄まれた。まだ日は高い、普段なら詰所には顔馴染みの漁師がいて、2日に一回加工した魚を運ぶ手伝いをさせてもらっていた。
「あんたがここでなにするつもりだかしらねえが、ちょっと話を聞かせてくれよ」
外国人、とくに武器をもった傭兵はちょくちょく警戒され、尋問される。田舎では自警団、街では憲兵にばかり声をかけられるので、だいぶなれてきた。
だが、今日は詰所には行けそうにない。時間までに行かなければ、漁師達は他の傭兵を頼むだろう。
これでまた暫くは、雨露をしのぐところを探し回ることになる。ああ、割りのいい仕事だったのに。
昼間から酒の匂いのする自警団の男に、胸ぐらを掴んで揺すぶられながら、私はそんなことをぼんやりかんがえていた。
うとうとしていた私は、ヘルミーナ王妃のその言葉が聞こえた気がして、がばっ、と体を起こした。
「……どうした、何かあったのか?」
荷馬車を走らせていた黒い帽子の男が、不安げに尋ねてきた。
「いいや、何でもない。気をつけて走らせろよ、踏みはずせば谷底だ」
ああ、と男は前へ向き直る。ここはかつて私の治めるはずだった王国のとなり、王政ではなく議会政治をとるグラナスの、さらに海沿いへとむかう山道だ。
傭兵として日々の糧を稼ぐわたしにとって、この危険な道はありがたいものだ。険しく細いつづら折りの山道、山賊がでるという薄暗い森、ときには野生の熊にまで出会う。余りに危険だから、と傭兵を雇って荷馬車に同乗してもらう農民が多い。これは剣を振り回すくらいしか取り柄のない私が見つけた割りのいい仕事だった。
この荷馬車には内陸で生産された小麦や芋、野菜などが乗せられ、そこに燃料としても使われている藁を被せたものだ。
藁を燃やして暖をとるなんて考えてみたことさえなかった。炭や薪の買えない者は藁でいっときの暖をとるが、それはすぐに燃え尽きるうえに、爆ぜたり煙がでたり、灰が舞うため宿屋では燃やすととても嫌がられる。しかも安宿では毛布はまるで薄い毛布一枚だけがあたりまえだから、真冬に薪が買えないと、命にかかわる。
こんなことすら知らなかったのだ。私はあまりにも愚鈍な王子であった。そんなだから、私の周りにはいつでも私のもつ王太子という肩書きだけを奉る者たちがむらがっていたんだろう。貴族たち、官僚、大臣たちはおろか、実の母上でさえそうだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マリエッタが殺されるじゃないか」
口をついてでたのは、我ながらクズな台詞だった。もう彼女を護る気等ないくせに、シャルロットを犠牲にしようとしている。
マリエッタを守りたかったんじゃない、ただ母上が憐れだった。けして愛してくれない夫にすがり、自分が生んだ子供が王になることだけをねがった憐れな女。最後には正気すら失った母上に、自分の目の前で人を殺させたくなかっただけだ。
次に分かったのは、まるで犬が遠吠えをするような声で叫びながら自分の頭を吹き飛ばそうとするダニエルと、それを止めるために危険を犯して銃身を握ったガイズ。
放たれた弾丸はダニエルとガイズには当たらず、私の少し前あたりに硝子片が降り注いだ。
シャルロット。幼いときから婚約によって互いに縛られていた彼女を、私は殺してしまうところだった。マリエッタが現れて以来、いつかこうなるのではないかと心のどこかで考えていた。私が死ぬか、彼女が死ななければ物語は完成しない気がしていたのだ。
彼女はよく本を読んでいた。私との会話に退屈していたのだろう。彼女が主人公の本に、私はどんな愚かな脇役として登場していたのだろうか。
「どうするつもりだ、ウィル」
疲れきり、掠れた父の声が聞こえた。
「国を出ます。これより先、私は陛下の名を語りません」
私は頭を垂れ、もはや何の意味も成さなくなった王家の紋章のはいったマントと、腰につけていたサーベルを父に……王陛下に差し出した。
「命乞いか」
馬鹿にしているわけでもなく、憐れむでもない。ただ、どこか脱力したような王陛下の声に、膝をつき頭をさげた。
「いいだろう。ルカを兄殺しの王にしたくはない」
殆ど会う機会さえなかった弟。あれが王になる頃、きっと私は流浪の民としてどこかで屍になっているだろう。
「ご温情に感謝いたします、陛下」
私はカッターシャツとスラックスだけの姿のまま、議場をあとにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マリエッタに父の裁決を伝えたあと、私は執務室へと向かった。そこに、私の練習用の着替えと剣がおかれていたからだ。
「これは、王太子殿下」
なかに不愉快な人物をみとめ、つい動きをとめた。
「ロイス、バリーと共に自宅で沙汰を待つよう言われなかったか?」
何をまたたくらんでいる?私はなるべく傍にいかないようにしながら、ロイスの手元をみた。
「ここにある権利書はすべて紙切れだぞ。私が王太子でなくなるからな」
すると、ロイスはひやりとするような不気味な笑顔をむけた。
「そうでしたか、私は次にいらっしゃるルカ殿下に誠心誠意お仕えするだけです。ですから、ここにあるものは何も持ち出さないで頂きたい」
はぁっ、と肩を落とした。やはりわかっていないようだ。
「お前とバリー宰相は殺人教唆と詐欺の罪で北方へ送られる。今日の謹慎は陛下のせめてもの温情だ。家に帰り、最後の別れをしろ。これ以上ここにいれば、牢へ直接送られるぞ」
私が着替えのはいった袋と剣を手に部屋を出ようとすると、ロイスはその腕を掴んだ。
「マリエッタは?マリエッタは、貴方と一緒にゆくのですか?それともマーカスとかいう男のところへ?」
ぎりぎりと腕を締め上げる手を無理やり引き離した。
「マリエッタも農奴として北へ行く」
実際には農奴は自由に自分の行き先など決められない。方角は同じ北でも、おそらくは会うことは叶わないだろう。
だが、ロイスは勝ち誇ったような顔で
「そうですか、マリエッタは私を選んだんですね!そうか!私の勝ちだ!」
と笑った。私はなにも言わず、荷物を持ち直して部屋をあとにした。
執務室からは、高笑いが聞こえていた。私は衛兵に声をかけ、奴を牢へ直接送るよう指示しておいた。
◇◇◇◇◇◇◇
考えてみたら、最後に会ったのがロイスというのはいただけなかったな。せめて、こっそりルカの様子くらいみてくればよかった。あれから2年もたつが、そんなことばかり考えている。
カタ、と荷馬車が止まり、海辺ののどかな町に出た。無口な農夫から謝礼をうけとり、漁師の詰所へとむかう。
「兄さん、他所もんだろ?何してる」
自警団らしき男たちが近づいてくるので、
「傭兵だよ、野菜運びの手伝いの帰りだ」
と答えると、胡散臭いものを見るように
「この時間じゃ街へ魚は運ばねえだろ」
と凄まれた。まだ日は高い、普段なら詰所には顔馴染みの漁師がいて、2日に一回加工した魚を運ぶ手伝いをさせてもらっていた。
「あんたがここでなにするつもりだかしらねえが、ちょっと話を聞かせてくれよ」
外国人、とくに武器をもった傭兵はちょくちょく警戒され、尋問される。田舎では自警団、街では憲兵にばかり声をかけられるので、だいぶなれてきた。
だが、今日は詰所には行けそうにない。時間までに行かなければ、漁師達は他の傭兵を頼むだろう。
これでまた暫くは、雨露をしのぐところを探し回ることになる。ああ、割りのいい仕事だったのに。
昼間から酒の匂いのする自警団の男に、胸ぐらを掴んで揺すぶられながら、私はそんなことをぼんやりかんがえていた。
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