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外伝 男爵令嬢はやり直したくはない
男爵令嬢のけじめ
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屋敷についたのは夜半近くになったときだったが、屋敷の家令は迷惑そうな顔をするでもなく、私たちを出迎えてくれた。
「現在、主は海外へ旅行中でございまして。アイリス様のお友達を出迎えられず、申し訳ないと申しておりました」
そう言って、ティールームへ私と子爵様をとおしてくれた。
私はバートと名乗った家令にお願いして紙を貰い、1通の手紙をしたためた。
「子爵さま、これを」
クララベル子爵は、私から受け取ったその書面に目をとおすと、大きく目をみひらいた。
「ここへ来てわかりました。アイリス様は、あの男と決着をつけるつもりなのですね?」
この屋敷には、アイリスの大事なかたが住んでいると聞いている。そのかたが、海外へ。まるでなにかから避難させられているようだもの。
「……いや、アイリスは何も知らない。すべて、俺たちが進めていることだ」
子爵は今までの、貴族然としたはりついた笑みを消し、顔を手でおおった。
「子爵さま…皇太子殿下と、公爵継嗣さまね?」
今の、正義感にあふれたクロードと、理知的で冷静なルーファス・オリバー。彼らなら、レンブラントや義父の手からこの国を救えるかもしれない。
私はギュッ、と手をにぎりしめた。あのとき、私に少しでも周りをちゃんと見るだけの気持ちがあれば
、王都は焼け野原にならずに済んだはず。
「子爵さま、アイリス様からクララベル領のことはお聞き及びでしょうか?」
子爵は緊張した面持ちで、ああ、とうなづいた。
「義父は遠からず、王家に刃を向けます。その準備を、進めているはずです。レンブラントが北領主になれば、国を支える根幹がゆるんで、必ず義父はその隙を狙うでしょう」
暫くの間、子爵は呆けたように私をみていたが、そうか、と頷いてくれた。
「レンブラントと義父を討ってくださりませ、子爵様」
私が書いた書面には、私自身がクララベル男爵の地位は放棄し、その全権をクララベル子爵のもとへ、ということがかかれていた。勿論印章も押してある。
「きみは、いいのか?それで」
尋ねられ、子爵の目を見て頷いた。
「彼らに騙され、踊らされていては私は、きっと遠からず破滅します。わたくしは彼らをもはや父とは思っておりません……母は気がかりではありますが」
そうか、と頷いて子爵は手紙を内ポケットへ片付けた。
「気がかりは、ほかにもございます。南領には、夜盗がでるといいます。なかでもレッド・オックスと呼ばれる残忍な首領が率いる……」
「オックスは、二度と現れない」
話し終わるよりまえに、子爵は何故か少しばかり大きな声で言った。驚いて子爵の手元を見ると、出されたカップの中が空なのにスプーンでかき回している。
「失礼、レッド・オックスはもう、この世には居ないのです」
私は驚いて彼を見た。オックスが亡くなってるっていうこと?目をしばたたいていると、困ったように子爵は苦く笑い、頬のあたりを掻いてから、とにかく、と立ち上がった。
「今日はもう遅い、休みましょう」
「現在、主は海外へ旅行中でございまして。アイリス様のお友達を出迎えられず、申し訳ないと申しておりました」
そう言って、ティールームへ私と子爵様をとおしてくれた。
私はバートと名乗った家令にお願いして紙を貰い、1通の手紙をしたためた。
「子爵さま、これを」
クララベル子爵は、私から受け取ったその書面に目をとおすと、大きく目をみひらいた。
「ここへ来てわかりました。アイリス様は、あの男と決着をつけるつもりなのですね?」
この屋敷には、アイリスの大事なかたが住んでいると聞いている。そのかたが、海外へ。まるでなにかから避難させられているようだもの。
「……いや、アイリスは何も知らない。すべて、俺たちが進めていることだ」
子爵は今までの、貴族然としたはりついた笑みを消し、顔を手でおおった。
「子爵さま…皇太子殿下と、公爵継嗣さまね?」
今の、正義感にあふれたクロードと、理知的で冷静なルーファス・オリバー。彼らなら、レンブラントや義父の手からこの国を救えるかもしれない。
私はギュッ、と手をにぎりしめた。あのとき、私に少しでも周りをちゃんと見るだけの気持ちがあれば
、王都は焼け野原にならずに済んだはず。
「子爵さま、アイリス様からクララベル領のことはお聞き及びでしょうか?」
子爵は緊張した面持ちで、ああ、とうなづいた。
「義父は遠からず、王家に刃を向けます。その準備を、進めているはずです。レンブラントが北領主になれば、国を支える根幹がゆるんで、必ず義父はその隙を狙うでしょう」
暫くの間、子爵は呆けたように私をみていたが、そうか、と頷いてくれた。
「レンブラントと義父を討ってくださりませ、子爵様」
私が書いた書面には、私自身がクララベル男爵の地位は放棄し、その全権をクララベル子爵のもとへ、ということがかかれていた。勿論印章も押してある。
「きみは、いいのか?それで」
尋ねられ、子爵の目を見て頷いた。
「彼らに騙され、踊らされていては私は、きっと遠からず破滅します。わたくしは彼らをもはや父とは思っておりません……母は気がかりではありますが」
そうか、と頷いて子爵は手紙を内ポケットへ片付けた。
「気がかりは、ほかにもございます。南領には、夜盗がでるといいます。なかでもレッド・オックスと呼ばれる残忍な首領が率いる……」
「オックスは、二度と現れない」
話し終わるよりまえに、子爵は何故か少しばかり大きな声で言った。驚いて子爵の手元を見ると、出されたカップの中が空なのにスプーンでかき回している。
「失礼、レッド・オックスはもう、この世には居ないのです」
私は驚いて彼を見た。オックスが亡くなってるっていうこと?目をしばたたいていると、困ったように子爵は苦く笑い、頬のあたりを掻いてから、とにかく、と立ち上がった。
「今日はもう遅い、休みましょう」
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