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【2-2】「クエストLv5《ウェネヌムの沼地》(その2)」

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 入口付近は、探索者の姿が目に付いたが、奥に進むにつれて、人影が無くなってきた。どうやら彼等は、奥に入る勇気を持ち合わせていないようだ。

「ほらね、雑魚でしょ?」

 得意気に笑うラビアだが、だからと言ってオレたちなら大丈夫と決まったわけではない。オレはもちろんのこと、ネロもラビアも回復魔法を使えないのだ。

《ウェネヌムの沼地》の難易度は、Lv5以上の探索者が二名以上と書かれてあった。それに加えて、回復役がいれば更に良いと。

 毒の沼地のダンジョンということもあり、回復役がいないのは、少し不安だ。

「ラビア、毒消し草は幾つ持ってる」

「心配性ね、ちゃんと三つ用意してるってば」

 ラビアは、手持ち袋の中から、毒消し草を手に取る。
 先ず、オレは毒消し草をこの目で見たことがないので、これが毒消し草なのか否か分からないのだが、数は用意されているので、特に問題はない。
 そう思うことにした。

「ニート、お出ましよ」

「ん? 何が……」

 指を指されて、気付いた。
 岩が動いている。

「ポイズンロック。毒を吐く岩のモンスターよ」

 毒を吐く。
 その言葉に、オレは身構える。

「口をもごもごし始めたら、毒を吐く合図だから、気を付けなさい」

「と言われても……」

 毒攻撃を仕掛ける相手との対戦は、これが初めてだ。
 そう上手くいくだろうか。

「先ずは、あたしがお手本を見せるから」

 そう言うと、ラビアは杖を手にポイズンロックへと歩み出す。

「ギ、ギギギッ」

 ざわつき始めたのは、ポイズンロックだ。
 よく見れば、一体だけじゃない。
 既に五体以上のポイズンロックがそこに集まっていた。

「岩のモンスターに、電撃魔法は効かないとでも思った?」

 くすりと微笑み、ラビアは呪文の詠唱を始める。
 少し長めの呪文だ。

 その隙に、五体の中の一体が、口をもごもご動かし始める。
 その数秒後、口から毒の塊を勢いよく吐き出した。

「そんな単調な攻撃であたしに勝てると思わないことね」

 ポイズンロックの毒攻撃を華麗に交わしたラビアは、杖の先を向ける。
 詠唱が終わったようだ。

「残念だけど、あたしの電撃魔法は――」

 空気の淀んだ空間において、空が一瞬光を放つ。
 ラビアが持つ杖の先が、黄色く輝いた。

「――岩をも、砕く」

 いかずちが、ポイズンロック目掛けて解き放たれる。
 それは、肉眼で追うには速すぎた。

 一瞬の中に、五体のポイズンロックはいかずちの餌食となり、粉々に崩れてしまう。これが、ラビアの魔法使いとしての実力だ。

「さあ、もっと奥に行くわよ」

 危険な気もするが、ラビアに意見を言っても怒るだけだろう。
 小さく息を吐き、オレは言われるがままについていく。
 そして、見た。

「あれが、毒の欠片……?」

 紫色に光り輝く水晶が、地面に落ちていた。
 それも一つではない。無数に存在する。

「そう、これが今回のクエストで必要なアイテムね」

 でも、とラビアは付け加える。

「これは、純度が低いわ」
「純度が……」

 見た目だけでは、オレには判断できない。
 だが、ラビアが言うには、純度が低いらしい。

「ここに落ちてるのは、光が鈍いでしょ? 純度が高い毒の欠片は、もっと綺麗な色をしてるの」

「見たことあるの?」

「ええ、もちろん。十回以上このクエストをしてるんだもん。今までに手に入れた奴が手元にあるわ」

 十回以上、同じクエストをこなしていたのか。
 ラビアが熱心になるほど、このクエストはお金を稼ぐことができるというわけか。

「じゃあ、一人でも行くことはできたんだな」

「違うわ。ここまでは、あたし一人でも大丈夫だった。……だけど、」

 奥を、見る。
 ここよりも更に、視界が悪い場所がある。

「この先に、あいつがいるの」

「……あいつ?」

 下唇を噛み、ラビアは目を細める。

「あいつを倒した先に、もっと綺麗な毒の欠片……いえ、もしかしたら、クエスト報酬を超える毒の結晶を手に入れることができるかも」

 ラビアが、一人では攻略するのが難しいと思えるほどの相手が、奥にいる。
 そのことに、オレは息を呑んだ。

「ここから先には、ポイズンリザードの巣があるわ」

「ポイズンリザード……」

 名前を聞くだけでも、先ほどのポイズンロックや、ただのゴブリンよりも強いと理解することができる。
 そんな奴らが、この先にいるというのか。

「じゃあ、そいつらを倒して、毒の欠片……じゃなくて、結晶を手に入れるために、オレとネロの力が必要ってことか」

「バカ、勘違いしないで。ポイズンリザードは、あくまで前座に過ぎないわ」

 鼻で笑い、ラビアは嘆息した。
 そして、躊躇いがちに、その名を口にする。





「ポイズンゾンビ、それが《ウェネヌムの沼地》の支配者よ……」
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