13 / 62
【2-2】「クエストLv5《ウェネヌムの沼地》(その2)」
しおりを挟む
入口付近は、探索者の姿が目に付いたが、奥に進むにつれて、人影が無くなってきた。どうやら彼等は、奥に入る勇気を持ち合わせていないようだ。
「ほらね、雑魚でしょ?」
得意気に笑うラビアだが、だからと言ってオレたちなら大丈夫と決まったわけではない。オレはもちろんのこと、ネロもラビアも回復魔法を使えないのだ。
《ウェネヌムの沼地》の難易度は、Lv5以上の探索者が二名以上と書かれてあった。それに加えて、回復役がいれば更に良いと。
毒の沼地のダンジョンということもあり、回復役がいないのは、少し不安だ。
「ラビア、毒消し草は幾つ持ってる」
「心配性ね、ちゃんと三つ用意してるってば」
ラビアは、手持ち袋の中から、毒消し草を手に取る。
先ず、オレは毒消し草をこの目で見たことがないので、これが毒消し草なのか否か分からないのだが、数は用意されているので、特に問題はない。
そう思うことにした。
「ニート、お出ましよ」
「ん? 何が……」
指を指されて、気付いた。
岩が動いている。
「ポイズンロック。毒を吐く岩のモンスターよ」
毒を吐く。
その言葉に、オレは身構える。
「口をもごもごし始めたら、毒を吐く合図だから、気を付けなさい」
「と言われても……」
毒攻撃を仕掛ける相手との対戦は、これが初めてだ。
そう上手くいくだろうか。
「先ずは、あたしがお手本を見せるから」
そう言うと、ラビアは杖を手にポイズンロックへと歩み出す。
「ギ、ギギギッ」
ざわつき始めたのは、ポイズンロックだ。
よく見れば、一体だけじゃない。
既に五体以上のポイズンロックがそこに集まっていた。
「岩のモンスターに、電撃魔法は効かないとでも思った?」
くすりと微笑み、ラビアは呪文の詠唱を始める。
少し長めの呪文だ。
その隙に、五体の中の一体が、口をもごもご動かし始める。
その数秒後、口から毒の塊を勢いよく吐き出した。
「そんな単調な攻撃であたしに勝てると思わないことね」
ポイズンロックの毒攻撃を華麗に交わしたラビアは、杖の先を向ける。
詠唱が終わったようだ。
「残念だけど、あたしの電撃魔法は――」
空気の淀んだ空間において、空が一瞬光を放つ。
ラビアが持つ杖の先が、黄色く輝いた。
「――岩をも、砕く」
いかずちが、ポイズンロック目掛けて解き放たれる。
それは、肉眼で追うには速すぎた。
一瞬の中に、五体のポイズンロックはいかずちの餌食となり、粉々に崩れてしまう。これが、ラビアの魔法使いとしての実力だ。
「さあ、もっと奥に行くわよ」
危険な気もするが、ラビアに意見を言っても怒るだけだろう。
小さく息を吐き、オレは言われるがままについていく。
そして、見た。
「あれが、毒の欠片……?」
紫色に光り輝く水晶が、地面に落ちていた。
それも一つではない。無数に存在する。
「そう、これが今回のクエストで必要なアイテムね」
でも、とラビアは付け加える。
「これは、純度が低いわ」
「純度が……」
見た目だけでは、オレには判断できない。
だが、ラビアが言うには、純度が低いらしい。
「ここに落ちてるのは、光が鈍いでしょ? 純度が高い毒の欠片は、もっと綺麗な色をしてるの」
「見たことあるの?」
「ええ、もちろん。十回以上このクエストをしてるんだもん。今までに手に入れた奴が手元にあるわ」
十回以上、同じクエストをこなしていたのか。
ラビアが熱心になるほど、このクエストはお金を稼ぐことができるというわけか。
「じゃあ、一人でも行くことはできたんだな」
「違うわ。ここまでは、あたし一人でも大丈夫だった。……だけど、」
奥を、見る。
ここよりも更に、視界が悪い場所がある。
「この先に、あいつがいるの」
「……あいつ?」
下唇を噛み、ラビアは目を細める。
「あいつを倒した先に、もっと綺麗な毒の欠片……いえ、もしかしたら、クエスト報酬を超える毒の結晶を手に入れることができるかも」
ラビアが、一人では攻略するのが難しいと思えるほどの相手が、奥にいる。
そのことに、オレは息を呑んだ。
「ここから先には、ポイズンリザードの巣があるわ」
「ポイズンリザード……」
名前を聞くだけでも、先ほどのポイズンロックや、ただのゴブリンよりも強いと理解することができる。
そんな奴らが、この先にいるというのか。
「じゃあ、そいつらを倒して、毒の欠片……じゃなくて、結晶を手に入れるために、オレとネロの力が必要ってことか」
「バカ、勘違いしないで。ポイズンリザードは、あくまで前座に過ぎないわ」
鼻で笑い、ラビアは嘆息した。
そして、躊躇いがちに、その名を口にする。
「ポイズンゾンビ、それが《ウェネヌムの沼地》の支配者よ……」
「ほらね、雑魚でしょ?」
得意気に笑うラビアだが、だからと言ってオレたちなら大丈夫と決まったわけではない。オレはもちろんのこと、ネロもラビアも回復魔法を使えないのだ。
《ウェネヌムの沼地》の難易度は、Lv5以上の探索者が二名以上と書かれてあった。それに加えて、回復役がいれば更に良いと。
毒の沼地のダンジョンということもあり、回復役がいないのは、少し不安だ。
「ラビア、毒消し草は幾つ持ってる」
「心配性ね、ちゃんと三つ用意してるってば」
ラビアは、手持ち袋の中から、毒消し草を手に取る。
先ず、オレは毒消し草をこの目で見たことがないので、これが毒消し草なのか否か分からないのだが、数は用意されているので、特に問題はない。
そう思うことにした。
「ニート、お出ましよ」
「ん? 何が……」
指を指されて、気付いた。
岩が動いている。
「ポイズンロック。毒を吐く岩のモンスターよ」
毒を吐く。
その言葉に、オレは身構える。
「口をもごもごし始めたら、毒を吐く合図だから、気を付けなさい」
「と言われても……」
毒攻撃を仕掛ける相手との対戦は、これが初めてだ。
そう上手くいくだろうか。
「先ずは、あたしがお手本を見せるから」
そう言うと、ラビアは杖を手にポイズンロックへと歩み出す。
「ギ、ギギギッ」
ざわつき始めたのは、ポイズンロックだ。
よく見れば、一体だけじゃない。
既に五体以上のポイズンロックがそこに集まっていた。
「岩のモンスターに、電撃魔法は効かないとでも思った?」
くすりと微笑み、ラビアは呪文の詠唱を始める。
少し長めの呪文だ。
その隙に、五体の中の一体が、口をもごもご動かし始める。
その数秒後、口から毒の塊を勢いよく吐き出した。
「そんな単調な攻撃であたしに勝てると思わないことね」
ポイズンロックの毒攻撃を華麗に交わしたラビアは、杖の先を向ける。
詠唱が終わったようだ。
「残念だけど、あたしの電撃魔法は――」
空気の淀んだ空間において、空が一瞬光を放つ。
ラビアが持つ杖の先が、黄色く輝いた。
「――岩をも、砕く」
いかずちが、ポイズンロック目掛けて解き放たれる。
それは、肉眼で追うには速すぎた。
一瞬の中に、五体のポイズンロックはいかずちの餌食となり、粉々に崩れてしまう。これが、ラビアの魔法使いとしての実力だ。
「さあ、もっと奥に行くわよ」
危険な気もするが、ラビアに意見を言っても怒るだけだろう。
小さく息を吐き、オレは言われるがままについていく。
そして、見た。
「あれが、毒の欠片……?」
紫色に光り輝く水晶が、地面に落ちていた。
それも一つではない。無数に存在する。
「そう、これが今回のクエストで必要なアイテムね」
でも、とラビアは付け加える。
「これは、純度が低いわ」
「純度が……」
見た目だけでは、オレには判断できない。
だが、ラビアが言うには、純度が低いらしい。
「ここに落ちてるのは、光が鈍いでしょ? 純度が高い毒の欠片は、もっと綺麗な色をしてるの」
「見たことあるの?」
「ええ、もちろん。十回以上このクエストをしてるんだもん。今までに手に入れた奴が手元にあるわ」
十回以上、同じクエストをこなしていたのか。
ラビアが熱心になるほど、このクエストはお金を稼ぐことができるというわけか。
「じゃあ、一人でも行くことはできたんだな」
「違うわ。ここまでは、あたし一人でも大丈夫だった。……だけど、」
奥を、見る。
ここよりも更に、視界が悪い場所がある。
「この先に、あいつがいるの」
「……あいつ?」
下唇を噛み、ラビアは目を細める。
「あいつを倒した先に、もっと綺麗な毒の欠片……いえ、もしかしたら、クエスト報酬を超える毒の結晶を手に入れることができるかも」
ラビアが、一人では攻略するのが難しいと思えるほどの相手が、奥にいる。
そのことに、オレは息を呑んだ。
「ここから先には、ポイズンリザードの巣があるわ」
「ポイズンリザード……」
名前を聞くだけでも、先ほどのポイズンロックや、ただのゴブリンよりも強いと理解することができる。
そんな奴らが、この先にいるというのか。
「じゃあ、そいつらを倒して、毒の欠片……じゃなくて、結晶を手に入れるために、オレとネロの力が必要ってことか」
「バカ、勘違いしないで。ポイズンリザードは、あくまで前座に過ぎないわ」
鼻で笑い、ラビアは嘆息した。
そして、躊躇いがちに、その名を口にする。
「ポイズンゾンビ、それが《ウェネヌムの沼地》の支配者よ……」
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
30
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる