不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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牧野ユミの証言

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遅くなってすいません。少し支度に時間がかかってしまいまして。
はい、私が田中政臣さんの恋人の牧野ユミです。よろしくお願いします。
私がまーくん・・・あっ、私の政臣さんの呼び方です。
もし、不愉快でしたらすいません、気をつけます。
あっ、いいですか?私もその方が助かります。そうでないと、呼び方に気を遣って話しづらいので。
私とまーくんは、付き合って今年で2年になります。
知り合ったきっかけは、マッチングアプリです。
刑事さん達には何か怪しげなものに聞こえるかもしれませんが、若い子にとっては当たり前のことなんです。
あっ、私ったら失礼なこと言っちゃいましたね、ごめんなさい。
でも、私の両親の同年代の人たちは口を揃えて、そういうアプリで知り合うのは不謹慎だと言うので。
なので、私とまーくんも出会いは合コンで知り合った、ということにしてあります。その方が、何かと都合がいいので。
まーくんとは、近いうちに結婚するつもりです。
まーくんも私と同じ気持ちで、まだ正式にプロポーズはされていませんけど、結婚したいね、とか子供欲しいね、なんて会話をよくしてます。
まーくんがどんな人かって言われると、そうですね・・・堅実。の一言でしょうか?
一流大学を出ていて、誰もが羨む大企業に勤めていて、収入も中の上くらいは稼いでいて、友達にも自慢できるくらいの顔で、おしゃれのセンスもトレンドはしっかり抑えている。
今時、なかなかここまでスペックの高い人は見かけないと思いません?
結婚するには申し分無いと思います。
性格も優しいし、真面目で誠実で、文句の付け所が無いですね。
え?
さっきから彼のスペックのことしか話さないって?
何をおっしゃりたいのかは分かります。
私が本当にまーくんのことを愛しているのか、ということを聞きたいのですよね?
えぇ、愛してますよ、普通に。
まぁ、お二人が思うように熱烈にではないかと思いますけど。
でも、こういう穏やかな恋愛もありません?もう、2年も付き合っているんだし、結婚を視野に入れているなら、尚更スペックの高い男の人と結婚したいと思うのは、当然のことだと思いますけど。
だって、結婚してから苦労はしたくないじゃないですか?
多少の不満はあっても、そのくらい目を瞑れるだけのスペックがあれば、彼とのセックスに不満があっても結婚はしたいな、と思うのが普通だと思います。
あっ!私ったら、何てことを!
ごめんなさい、今言った事はまーくんには内緒にして下さい!
・・・わかりました。その代わりに本心をお話しします。
でも、くれぐれもまーくんには内緒にしてください。そうでないと、私、困るんです。もう適齢期だし、今彼を失うのは大きな損失になるので。
はい、正直に言うと、私はまーくんとのセックスに不満があります。
彼、今までも言いましたけど、堅実なんです、テクニックが。
堅実というか、真面目すぎるというか、退屈というか。
とにかく、ワンパターンで楽しくないんです、セックスが。
刑事さん達は、女の子のセックスについてどう思っているのか知りませんけど、女の子にも性欲というのはあって、女の子同士だと普通にそういう話もするんですよ。
女がそんな話をするなんて信じられないのは、女を勝手に偶像化している男の身勝手さに他ならないと思います。
私はイヤです、そんな男の都合のいい女性像の枠に嵌められるのは。
だから私は自分の思ったとおりに生きるし、我慢なんてしません。
それは、まーくんも理解してくれると思います。
まーくんはいつも、私のことを尊重してくれるので、私、どうしても彼と結婚したいんです。
あと、まーくんはルックスが良いのが私が彼のことを好きな理由ですね。
ルックスって大切じゃないですか?
よく人は見た目じゃなくて中身だって言われますけど、生理的に無理なルックスの人相手じゃ、相手がどんなにお金持ちでもそこから愛は生まれないと思うんですよね。
その点彼は、女性に限らず男の人にもモテますから、周りに見せつけるにはもってこいですよね。
言い方悪いですけど、まーくんは最高のアクセサリーだと思うんですよ。
男だって思いません?いい女と付き合ったら周りに自慢したいとか、そういう女と付き合うことがある種のステータスみたいなものだって。
だから金持ちのお爺さんは、若い美人を金で囲ってあちこち連れ回したりするんじゃないですか?
その逆を私もしているだけにすぎないと思うんですよね。
男は良くて、女はダメっておかしくないですか?
そりゃあ、男と女は体の作りも違うから、当然全て平等とは思わないですよ。
女は子供を産めるけど、男にはできないですしね。
でも、こういう私の考え方もひっくるめて、まーくんは私を受け入れてくれるんですよ。
世間一般の愛って、精神的な側面が強いじゃないですか?
私、愛の形ってあくまでもそういうのにこだわったり、変なルールに縛られたりするものじゃないと思うんですよね。
まーくんが実際に私のことをどんな風に愛しているのかは知りませんが、私の彼への気持ちもある種の愛の形として間違えでは無いと思うんですよね。
あれ、何か私の独演会みたいになってしまいましたね。
まぁ、要するに何が言いたいかと言うと、まーくんは私のあるがままを受け入れてくれる、そんな器の大きい人だと思います。
総評すれば、愛してますよ、まーくんのことは。良き結婚相手として。きっと、良き夫、良きパパとなってくれると思います。ただ、恋愛対象としては少々面白みに欠けるかな。
これ、今日お話しした話しは絶対に彼には言わないでくださいね。

牧野ユミが帰ったあと、探偵と小川は互いに深いため息を吐き出した。
「随分と身勝手な女の子だったな。政臣は、あんな女と上手くやっていけるのだろうか?幸せになれるのだろうか?」
「さあな。しかし、さすがにさっきの話しは本人に伝えるのは酷すぎるだろう。世の中には、知らぬが仏、ということわざもあるくらいだし、傷つくのが目に見えているのにわざわざ教える必要も無いだろう。それで本当に幸せになれるかは保証できないが」



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