不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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東海林美樹の証言

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こんばんは。
すいません、こんな遠くまで来ていただいて。
どうしても会社の近くだと、誰かの目が気になってしまって。
今日は、田中君のことでお話しがあると伺ったのですが、田中君に何かあったのでしょうか?
あぁ、そうなんですね、刑事さんは田中君の叔父さまなんですか。詳しいことはまだ話せないとおっしゃいますがかまいません。私に出来ることで田中君の役に立てることがあるなら、喜んでご協力いたします。
それで、何からお話しすればよろしいでしょうか?
え?私が田中君に好意を寄せている?
そ、そんなこと、ありません。
誰ですか!そんないい加減なこと言うのは!?
あっ、わかりました。そんなことを言うのは、きっと里中君ですね。
でも、それが今回の件と何か関係があるんですか?
仮に私が田中君のことを好きだったとして、それと警察の方が訪ねてくることに何の関係があるのでしょうか?
勿論、田中君のためなら協力は惜しみませんけど。
私が田中君と知り合ったのは、2年前の秋のことです。
牧野ユミには会いましたか?ユミは私の友人でもあります。
当時、まだ付き合い始めたばかりの田中君を紹介してくれたのは、ユミでした。
正直に申し上げれば、田中君は素敵な方だと思いました。そ、それだけですよ、それ以上でもそれ以下でもありません。
えっと、そうそう、田中君のことでしたね。
田中君は、優しくて誰にも分け隔てなく付き合うことができて、いつも周りに気を配ることができる素敵な人です。
顔もかっこいいし、着てる服とか身につけている物もセンスがいいし、ユミが羨ましくて仕方ないです。
どうして私の方が田中君のことを真剣に想っているのに、田中君は私のことを見てくれない・・・あっ、私ったら何てことを言ってしまったのかしら!
・・・そうですね、ここまできて本心を誤魔化しても仕方ないですよね。
それに、素直な気持ちで話した方が田中君のためにもなりそうだし。
はい、そうです。私は田中君のことを愛してます。
友だちの恋人を好きになるなんていけないことかもしれませんけど、この気持ちは抑えきれないんです。
いいですよね?ただ想っているだけなら。
別に2人の仲を裂こうとしているわけでもないし、いいですよね。
でも、正直言って奪えるものなら奪ってしまいたいです。
知ってますか?ユミが里中君と体の関係だということを。人のいい田中君は気づいてないみたいですけど、酷いと思いません?しかもユミったら、全くそのことを悪びれるわけでもなくて、ユミにとって田中君はただの都合のいいアクセサリーで、結婚条件を満たしているだけの存在なんですよ!そんなの私、許せません!
でも、それでも田中君はユミにぞっこんで、きっとこんなこと言っても聞いてくれないでしょうし、かえって私への印象が悪くなるだけですから言えないんですけどね。
いったいどうしたら田中君の目を覚ますことができるのでしょうか?
私の知っている田中君は本当にいい人で、最近職場で何かトラブルがあったくらいは、誰かといざこざを起こすようなことも無い、とても心優しい、ちょっと悪く言えばお人好しすぎるかな、と思います。
あぁ、そういえばその田中君と職場でトラブルがあった人、亡くなったそうですね。私の所にも警察がやって来て事情を聞かれました。
田中君から、その人とのことはいろいろと聞いてます。本当に酷い話しです。そんな人が田中君のことを苦しめていたなんて、死んで当然です、天罰がくだったんですよ。
これで私がお話しできることは大体お話ししましたけど、こんなことで何か参考になったでしょうか?
少しでも田中君の疑いが晴れたのならいいのですけど。

東海林美樹が帰ったあと、探偵と小川は東海林の証言をまとめてみる。
「あの子、政臣に夢中だな」
「恋に恋する乙女といった具合だろうか。彼女の中では政臣君は一点の曇りもない完璧な男に見えているのだろう」
探偵は手元のコーヒーカップを手に取り、冷めたコーヒーを一気に飲み干した。
「これで政臣君の関係者からの話しは大体聞けたが、本当に政臣君のアリバイは完全なのか?」
「あぁ、5件とも友人や知人や店の店員などの証言に矛盾は無い。店によっては防犯カメラの映像でも確認が取れている。アリバイは完璧だ」
「そうか・・・完璧な好青年に完璧なアリバイ。やはり政臣君の潔白は疑う余地も無さそうだな」
「まぁ、そこそこ証言も聞けたし、これ以上目新しい話しも引き出せそうに無いし、政臣本人を調べるのはこれで十分かもしれないな」
探偵と小川が引き上げようとした時、東海林美樹が2人のもとに戻ってきた。
「あの、ちょっとお話しがあるんですけど」
「なんでしょうか?」
「今日、刑事さん達に会って田中君のことをお話ししたことを友人に話したら、俺も話したいと言う友人がいまして、一度会っていただけないでしょうか?」
探偵と小川は顔を見合わせる。
「わかりました、何か大事なお話しがあるようでしたら、是非伺わせてくださいと伝えていただけますか?」
「わかりました、ではまた後ほど本人から連絡させます」



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