不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし

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九十九要の証言

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こんにちは、九十九です。今日は、わざわざお時間を作っていただきありがとうございます。
なんか、無理言ってしまったようで申し訳ありません。
美樹ちゃんが政臣のことで刑事さん達に事情を聞かれた、と聞いて、俺もお話しした方がいいのではと思ったので。
皆んな、政臣のことを良くは言っても、悪く言う奴はいないでしょう?
たしかに、あいつのことを悪く思う奴はそうそういないでしょう。
あいつは面倒見もいいし、誰にでも等しく接するし、本当に気持ちがいいくらいいい奴ですからね。
でも、本当にそんな完璧な奴がいると思いますか?
俺、知っているんですよ。ていうか、たぶん俺しか知らないことかもしれないですけど。
あの日、浜村って奴が死んだって夜のことなんですけど、俺、見たんですよ、政臣を五反田で。
そうです、刑事さん達が知ってのとおり、五反田は浜村っていう政臣とトラブってた奴が住んでる所ですよね?
その日は、政臣は大崎のホテルで同窓会に参加していたというじゃないですか。でも、俺はハッキリとあいつのことを五反田で見たんです!
大崎と五反田なんて、本当に目と鼻の先じゃないですか?
適当に理由つけて外出したら、人を1人殺して帰ってくるなんて、一時間もかからないと思いませんか?
どうしてこんな重要なことを今まで警察に話さなかったかって?
それは・・・美樹ちゃんが、もしかしたらあいつが殺人犯かもしれないなんて知ったら悲しむんじゃないかと思ったので。
俺は、美樹ちゃんのことが好きなんです。まぁ、美樹ちゃんの方は俺なんか眼中に無いんですけど。
だから、今までこのことは胸の奥にしまっておいていたんです。
でも、それじゃあいけないんじゃないかって段々と思い始めてきて、思い切ってお話しすることに決めたんです。
今まで黙っていてすいません。
はい、ではその日のことをできるだけ詳しくお話しします。
その日、俺は接待で五反田の西口にある「鬼殺し」という、駅から7、8分の所にある居酒屋で、取引先の担当者さん達と一緒に呑んでいました。
接待が終わったのは、たしか・・・だいたい21時くらいだったと思います。
店の前で接待先の人達をタクシーに乗せて見送って、俺は上司と一緒に駅へと向かいました。
上司は地下鉄で帰ると言うので、五反田駅で解散することになりました。
上司を駅の出入り口まで見送って、自分はJRの改札の方へと向かいました。
その時です、俺が政臣を見かけたのは。
ちょうどあいつが駅前のタクシー乗り場でタクシーに乗るところでした。
一瞬ではありますが、あれはたしかに政臣に間違いありません。俺は、視力にはけっこう自信があるんです。
だから一瞬だったとはいえ、他の誰かと親友を見間違えるなんてことがあるはずがないんですよ。
政臣を乗せたタクシーは、そのまま大崎の方向へと走り去っていきました。
その時はそのまま、たいして気にも留めなかったんですけど、あとでその政臣とトラブってた人が死んで政臣のことで警察が聞き込みに来た時に、自分の見たものの意味がわかりました。
その時に、五反田で政臣を見たことを話していれば良かったと、今にしては思うけど、美樹ちゃんのことを想うと、言い逃してしまったというか、とにかくタイミングを逸してしまったのです。
我ながらバカだなぁ、とは思いますが、悪意を持って隠していたのでは無いことだけは分かって下さい。
あの・・・この証言で、政臣の立場ってかなり不利になるものなのでしょうか?
そうですよね。
友人としては、政臣の潔白を信じて願っていますけど。

九十九要は、2人に深々とお辞儀をして店を出ていった。
「どうだ?あの九十九という男の証言、信じるに値すると思うか?」
小川は体を椅子の背もたれに預けて呟いた。
「わからない。だが、検証する必要はあるだろう。ただ、何でこのタイミングで証言をしたのか、本当にタイミングを逃しただけなのかは疑問だ」
「と、言うと?」
「九十九要の行動原理には、いつも東海林美樹の存在があるように感じる。穿った見方かもしれないが、もしかしたら東海林美樹の関心を引きたい為に、このタイミングを選んだとも取れる」
「まぁ、我々としては新しい証言を得ることになったわけだ。同窓会の参加者や、会場のスタッフ、防犯カメラの映像も確認する必要があるな。あっ、あと政臣が五反田までタクシーを使ったのなら、政臣を乗せたタクシーも探さないといけないな」
小川は天井を見上げて大きくため息をついた。
「いずれにしても、これまで完璧だと思われた政臣君のアリバイの一部に、小さな穴が開いたわけだ。我々としては、あまり好ましくない事態になったが、このまま捜査を継続することで問題無いよな?」
「あぁ、俺だって警察組織の責任者だ、身内のことだからと言って見逃すわけにはいかない。例えそれが可愛い甥っ子だとしてもだ」






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