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嘘
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まるで殴られているかのような日差しの圧力も弱まって、秋の足音が聞こえ始めた9月の終わり、太陽が最後の抵抗をするように数日ぶりに暑さがぶり返した新宿駅の改札前で、俺は腐れ縁の小川を待っていた。
いつもどうしようもない面倒な依頼を持ちかけて来る小川が、また新たな依頼を持ち込んできた。
いつもなら小川の持ち込む依頼など一蹴するところだが、あいにく最近仕事が全く無く、金欠であった俺は渋々ではあるが小川の依頼を受けることとした。
どうか、今度こそは面倒に巻き込まれるような依頼ではありませんように。
そうして俺が心の中で、キリストや仏陀やアッラーに祈っているところへ、小川が愛車に乗って現れた。
車に全く興味の無い俺は、小川の乗っている車など勿論興味は無い。
しかし、覚える気は無くとも、全ての記憶を忘れられない俺は、仕方なく小川の愛車のことも忘れることはできず、今日も無駄なことに脳の容量が侵されるのに耐えなければならなかった。
「待たせたな、渋滞に巻き込まれてしまって」
嘘をつけ。髭を剃り、服装を整えても、頭の後ろの寝癖を俺は見落とさなかった。
いつもなら完璧に身なりを決めてくる小川だから、そんな寝癖をつけたままでやって来るはずもない。
おおかた寝坊でもして、慌てて身なりを整えて寝癖を気遣う暇もなく飛び出し、何事も無いふりをしているのだろう。
「睡魔との闘い、大変だったな」
「何のことだ?」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。それで、今回の依頼は何だ?また殺人じゃないだろうな?」
「安心しろ、今回は犬探しだ」
小川が不敵な笑みを浮かべて否定する。
「そうなのか?信じていいんだろうな?」
「疑り深いなぁ。詳しい話しは車の中で。さぁ、早く乗った乗った」
そう言うと、小川は押し込むようにして俺を助手席に乗せた。
「では出発だ、シートベルトを閉めてくださーい」
小川は妙に上機嫌で、俺がシートベルトを閉めたのを確認する前にアクセルを踏んで車を発進させた。
「それで、今回は犬探しだということだが・・・」
「まぁまぁ、そんなに焦るな。久しぶりだし、少しその辺をドライブしようじゃないか」
嫌な予感しかしない。
会うのは半年ぶりということもあってか、小川はいつになく饒舌だった。
「ところでだ、いったいどこまでドライブに行くつもりだ?」
出発してから、かれこれ2時間近く。周囲の景色もすっかりのどかな田園風景に変わっていた。俺は内心、焦りと苛立ちを感じていた。
「もうすぐだ、もうすぐ」
「それはそうと、もうそろそろ依頼の話しをしてくれないか?」
俺はさすがに苛立ちを隠せずになってきた。
そんな俺の口調から、俺の苛立ち察したのか、小川はようやく依頼のことを切り出した。
「そうだな、ここまでくればそろそろいいだろう。依頼というのは、実は犬探しじゃない」
やっぱり・・・そんな予感はしていたんだ。
「実は、俺の遠い親戚に烏丸という家があるんだが、その名前、聞いたことないか?」
「烏丸といえば、あの烏丸ホールディングスか?」
烏丸ホールディングスの名なら、日本人なら誰でも知っているというほど名の知れた企業だ。
秩父で創業した一軒の商店から、創業者の烏丸雄一郎が一代で日本最大の小売グループにし、今ではその業種は工業から金融まで多岐に渡る巨大企業グループになったのだ。その影響力は、財界のみならず政界にも絶大な影響力を発揮している。
「そうだ、その烏丸ホールディングスだ」
「そんな凄い親戚がいたなんて、今まで聞いたことなかったぞ」
「あぁ、3年前に甥っ子がその烏丸家の女の子と結婚したんだ。だから、親戚とは言っても遠い親戚だし、俺には全く関わりが無いレベルだからな」
小川は自虐的に声を出して笑った。
「そうか。では、俺は帰らせてもらう。その辺でいいから降ろしてくれ」
そうとなれば話しは別だ。俺の心はすでに東京へと向かっていた。
「まぁ待て。ここから1番近い駅は歩いて4時間はかかるだろう。バスすら走ってないし、お前はこのまま俺と一緒に行くのが1番現実的だ」
「小川・・・計ったな」
「細かいことは気にするな。あと1時間もかからない。それに、どうせ何も起こらないって。俺の勘は当たらない」
小川は笑って言ったが、案外そんな奴の勘ほど肝心な時には当たったりするものだ。特にお前の勘ならな。
こうして俺は小川に拉致され、一路、烏丸家へと向かうこととなった。
烏丸家は、東京から4時間ほど行った山間の小さな湖の畔にあった。
湖周辺の土地は、山も含めて見える範囲は全て烏丸家の私有地で、敷地内は全て車で移動。東京へはヘリコプターに乗って行くとのことだった。
そして、屋敷の正門から車で10分ほど走った、その湖の畔に白亜の大豪邸が建っていた。
俺たちを乗せた車が屋敷の玄関前に滑り込むと、そこには既に執事と思われる白髪の男性と、パッと見で10人はくだらない家政婦らしき女性たちが俺たちを出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました、小川様」
執事と思われる白髪の男性が俺たちに挨拶をした。
「どうも、正月以来ですね、田所さん。こちら、この家の執事で田所さん。この家のことは全て田所さんが取り仕切っている」
小川に紹介され、田所は俺に向かって深々とお辞儀をした。
「よろしくお願いします。さぁ、今日は日差しが強うございます。このような所で立ち話も何ですから、早速お部屋へご案内いたしましょう。市原、こっちへ。お二人をお部屋までご案内してさしあげて」
「はい、田所様」
ズラリと並んだ家政婦たちの中から、最も風格のある女性が田所に呼ばれてやって来て、俺たちに頭を下げた。
「こちらです」
俺たちは市原に案内されて屋敷の中へと踏み入れた。
エントランスは3階まで吹き抜けになっていて、広さはその中に一軒家を建てられそうなほど広かった。
「これは、屋敷の中も車移動する必要があるくらいだな」
俺はそう呟かざるを得なかった。
俺たちは市原の案内で、大きな応接間に通された。壁には鹿の頭の剥製が飾られ、天井には巨大なシャンデリアが吊るされ、アールデコ調の応接セットが部屋の中央に配置されていた。
部屋の隅には、これまた見たこともないくらいの大きさの、漆黒のグランドピアノが鎮座し、おそらく冬には暖炉に火が焚べられるのだろう。
俺たちは信じられないくらいフカフカのソファに腰を下ろした。
そこへ執事の田所が、30前後の男を連れて部屋の中に入ってきた。
「おじさん、ご無沙汰してます!遠路はるばるお疲れ様です!」
「修二君、今日はお招きありがとう!」
2人は再会を喜び合ってハグを交わした。
「小林、彼は烏丸修二君。俺の甥っ子だ」
小川に小林と紹介されて、俺は少々戸惑ったが、そんな俺を無視して小川は話しを進める。
「おじさんから、お噂はかねがね伺っています。凄い方だそうですね?今日からよろしくお願いします」
そう言って修二は俺に握手を求め、俺もそれに応じた。
「それでおじさん、今回は何日くらい泊まれるんですか?」
えっ?今、何て言った?
「そうだな、そんなに長居はしないよ」
おい!どういうことだ?
「今日は長い時間運転してお疲れでしょう。とりあえずお休みになって下さい」
「あっ、そうそう。修二君、例の件なんだけど」
小川は小声で前のめりになって修二に話しかけた。
「そうですね。あっ、田所さん、市原さん。ちょっと席を外してもらえませんか?」
修二にそう言われて、田所と市原は部屋を出て行った。
「どういうことなんだ、小川。聞いてた話と違うぞ」
俺は小川に抗議した。
「すまん、こうでもしないと来てくれないと思って」
「申し訳ありません。僕がおじさんに無理を言ってしまったためにご迷惑をおかけして」
「とにかく、話しだけでも聞いてもらえないか?」
小川はともかくとして、修二の深刻そうな顔を見ていると、この若者の手助けをしなければ気になって帰れないという気持ちになった俺は、とりあえず話しだけは聞くことにした。
「事の始まりは先月のことです。烏丸家当主で、私の妻で静香の祖父である烏丸昇仁様に、待望の男子である龍昇君が産まれた事に始まります。
ここまでは、烏丸家にとってとてもおめでたい話しに聞こえますが、実はそんなことはなくて、かえって緊張が高まっているのです。
と、いうのも、烏丸家は代々男子のみが家督を継ぐと決まっているのですが、昇仁様は男子に恵まれなかったのです。
奥様の艶子様との間には、陽美伯母さん、僕の義母の月代さん、星子伯母さんの3人の娘に恵まれたのですが、女子は家督を継げません。
そこで3人の娘にそれぞれ養子を取らせたのですが、その孫達も曾孫も全て女子でした。
なので昇仁様は愛人の松崎加奈さんに子供を産ませたのですが、これまた女子の美智さんしか産まれず、最近になって新しい愛人の麻谷麗さんを囲ったのです。そしてこの度産まれたのが待望の男子である龍昇君なのです。
そうなるとどうなるか。男子を設けた麗さんの天下です。それまでは正妻である艶子様が家の中のことを取り仕切っていましたが、昇仁様のご寵愛は全て麗さんに向けられます。そのせいで、烏丸家のパワーバランスは崩れてしまいました」
「なるほど、事情は分かりました。それで、修二君は俺にどうしてほしい?」
「明後日、龍昇君のお披露目の会が開かれます。それまでに何事も起きなければいいのですが、この空気、何か起きてもおかしくない雰囲気。お披露目会が終わるまで、ここで見守っていただけないでしょうか」
なるほど、修二の話で何かが切迫していることはよく分かった。ここは乗り掛かった船か。
「分かりました。では、お披露目会が終わるまで、事態の推移を見守りましょう」
「ありがとうございます!」
俺の言葉に修二の顔から不安が消え、安堵と希望に輝いて見えた。
いつもどうしようもない面倒な依頼を持ちかけて来る小川が、また新たな依頼を持ち込んできた。
いつもなら小川の持ち込む依頼など一蹴するところだが、あいにく最近仕事が全く無く、金欠であった俺は渋々ではあるが小川の依頼を受けることとした。
どうか、今度こそは面倒に巻き込まれるような依頼ではありませんように。
そうして俺が心の中で、キリストや仏陀やアッラーに祈っているところへ、小川が愛車に乗って現れた。
車に全く興味の無い俺は、小川の乗っている車など勿論興味は無い。
しかし、覚える気は無くとも、全ての記憶を忘れられない俺は、仕方なく小川の愛車のことも忘れることはできず、今日も無駄なことに脳の容量が侵されるのに耐えなければならなかった。
「待たせたな、渋滞に巻き込まれてしまって」
嘘をつけ。髭を剃り、服装を整えても、頭の後ろの寝癖を俺は見落とさなかった。
いつもなら完璧に身なりを決めてくる小川だから、そんな寝癖をつけたままでやって来るはずもない。
おおかた寝坊でもして、慌てて身なりを整えて寝癖を気遣う暇もなく飛び出し、何事も無いふりをしているのだろう。
「睡魔との闘い、大変だったな」
「何のことだ?」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。それで、今回の依頼は何だ?また殺人じゃないだろうな?」
「安心しろ、今回は犬探しだ」
小川が不敵な笑みを浮かべて否定する。
「そうなのか?信じていいんだろうな?」
「疑り深いなぁ。詳しい話しは車の中で。さぁ、早く乗った乗った」
そう言うと、小川は押し込むようにして俺を助手席に乗せた。
「では出発だ、シートベルトを閉めてくださーい」
小川は妙に上機嫌で、俺がシートベルトを閉めたのを確認する前にアクセルを踏んで車を発進させた。
「それで、今回は犬探しだということだが・・・」
「まぁまぁ、そんなに焦るな。久しぶりだし、少しその辺をドライブしようじゃないか」
嫌な予感しかしない。
会うのは半年ぶりということもあってか、小川はいつになく饒舌だった。
「ところでだ、いったいどこまでドライブに行くつもりだ?」
出発してから、かれこれ2時間近く。周囲の景色もすっかりのどかな田園風景に変わっていた。俺は内心、焦りと苛立ちを感じていた。
「もうすぐだ、もうすぐ」
「それはそうと、もうそろそろ依頼の話しをしてくれないか?」
俺はさすがに苛立ちを隠せずになってきた。
そんな俺の口調から、俺の苛立ち察したのか、小川はようやく依頼のことを切り出した。
「そうだな、ここまでくればそろそろいいだろう。依頼というのは、実は犬探しじゃない」
やっぱり・・・そんな予感はしていたんだ。
「実は、俺の遠い親戚に烏丸という家があるんだが、その名前、聞いたことないか?」
「烏丸といえば、あの烏丸ホールディングスか?」
烏丸ホールディングスの名なら、日本人なら誰でも知っているというほど名の知れた企業だ。
秩父で創業した一軒の商店から、創業者の烏丸雄一郎が一代で日本最大の小売グループにし、今ではその業種は工業から金融まで多岐に渡る巨大企業グループになったのだ。その影響力は、財界のみならず政界にも絶大な影響力を発揮している。
「そうだ、その烏丸ホールディングスだ」
「そんな凄い親戚がいたなんて、今まで聞いたことなかったぞ」
「あぁ、3年前に甥っ子がその烏丸家の女の子と結婚したんだ。だから、親戚とは言っても遠い親戚だし、俺には全く関わりが無いレベルだからな」
小川は自虐的に声を出して笑った。
「そうか。では、俺は帰らせてもらう。その辺でいいから降ろしてくれ」
そうとなれば話しは別だ。俺の心はすでに東京へと向かっていた。
「まぁ待て。ここから1番近い駅は歩いて4時間はかかるだろう。バスすら走ってないし、お前はこのまま俺と一緒に行くのが1番現実的だ」
「小川・・・計ったな」
「細かいことは気にするな。あと1時間もかからない。それに、どうせ何も起こらないって。俺の勘は当たらない」
小川は笑って言ったが、案外そんな奴の勘ほど肝心な時には当たったりするものだ。特にお前の勘ならな。
こうして俺は小川に拉致され、一路、烏丸家へと向かうこととなった。
烏丸家は、東京から4時間ほど行った山間の小さな湖の畔にあった。
湖周辺の土地は、山も含めて見える範囲は全て烏丸家の私有地で、敷地内は全て車で移動。東京へはヘリコプターに乗って行くとのことだった。
そして、屋敷の正門から車で10分ほど走った、その湖の畔に白亜の大豪邸が建っていた。
俺たちを乗せた車が屋敷の玄関前に滑り込むと、そこには既に執事と思われる白髪の男性と、パッと見で10人はくだらない家政婦らしき女性たちが俺たちを出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました、小川様」
執事と思われる白髪の男性が俺たちに挨拶をした。
「どうも、正月以来ですね、田所さん。こちら、この家の執事で田所さん。この家のことは全て田所さんが取り仕切っている」
小川に紹介され、田所は俺に向かって深々とお辞儀をした。
「よろしくお願いします。さぁ、今日は日差しが強うございます。このような所で立ち話も何ですから、早速お部屋へご案内いたしましょう。市原、こっちへ。お二人をお部屋までご案内してさしあげて」
「はい、田所様」
ズラリと並んだ家政婦たちの中から、最も風格のある女性が田所に呼ばれてやって来て、俺たちに頭を下げた。
「こちらです」
俺たちは市原に案内されて屋敷の中へと踏み入れた。
エントランスは3階まで吹き抜けになっていて、広さはその中に一軒家を建てられそうなほど広かった。
「これは、屋敷の中も車移動する必要があるくらいだな」
俺はそう呟かざるを得なかった。
俺たちは市原の案内で、大きな応接間に通された。壁には鹿の頭の剥製が飾られ、天井には巨大なシャンデリアが吊るされ、アールデコ調の応接セットが部屋の中央に配置されていた。
部屋の隅には、これまた見たこともないくらいの大きさの、漆黒のグランドピアノが鎮座し、おそらく冬には暖炉に火が焚べられるのだろう。
俺たちは信じられないくらいフカフカのソファに腰を下ろした。
そこへ執事の田所が、30前後の男を連れて部屋の中に入ってきた。
「おじさん、ご無沙汰してます!遠路はるばるお疲れ様です!」
「修二君、今日はお招きありがとう!」
2人は再会を喜び合ってハグを交わした。
「小林、彼は烏丸修二君。俺の甥っ子だ」
小川に小林と紹介されて、俺は少々戸惑ったが、そんな俺を無視して小川は話しを進める。
「おじさんから、お噂はかねがね伺っています。凄い方だそうですね?今日からよろしくお願いします」
そう言って修二は俺に握手を求め、俺もそれに応じた。
「それでおじさん、今回は何日くらい泊まれるんですか?」
えっ?今、何て言った?
「そうだな、そんなに長居はしないよ」
おい!どういうことだ?
「今日は長い時間運転してお疲れでしょう。とりあえずお休みになって下さい」
「あっ、そうそう。修二君、例の件なんだけど」
小川は小声で前のめりになって修二に話しかけた。
「そうですね。あっ、田所さん、市原さん。ちょっと席を外してもらえませんか?」
修二にそう言われて、田所と市原は部屋を出て行った。
「どういうことなんだ、小川。聞いてた話と違うぞ」
俺は小川に抗議した。
「すまん、こうでもしないと来てくれないと思って」
「申し訳ありません。僕がおじさんに無理を言ってしまったためにご迷惑をおかけして」
「とにかく、話しだけでも聞いてもらえないか?」
小川はともかくとして、修二の深刻そうな顔を見ていると、この若者の手助けをしなければ気になって帰れないという気持ちになった俺は、とりあえず話しだけは聞くことにした。
「事の始まりは先月のことです。烏丸家当主で、私の妻で静香の祖父である烏丸昇仁様に、待望の男子である龍昇君が産まれた事に始まります。
ここまでは、烏丸家にとってとてもおめでたい話しに聞こえますが、実はそんなことはなくて、かえって緊張が高まっているのです。
と、いうのも、烏丸家は代々男子のみが家督を継ぐと決まっているのですが、昇仁様は男子に恵まれなかったのです。
奥様の艶子様との間には、陽美伯母さん、僕の義母の月代さん、星子伯母さんの3人の娘に恵まれたのですが、女子は家督を継げません。
そこで3人の娘にそれぞれ養子を取らせたのですが、その孫達も曾孫も全て女子でした。
なので昇仁様は愛人の松崎加奈さんに子供を産ませたのですが、これまた女子の美智さんしか産まれず、最近になって新しい愛人の麻谷麗さんを囲ったのです。そしてこの度産まれたのが待望の男子である龍昇君なのです。
そうなるとどうなるか。男子を設けた麗さんの天下です。それまでは正妻である艶子様が家の中のことを取り仕切っていましたが、昇仁様のご寵愛は全て麗さんに向けられます。そのせいで、烏丸家のパワーバランスは崩れてしまいました」
「なるほど、事情は分かりました。それで、修二君は俺にどうしてほしい?」
「明後日、龍昇君のお披露目の会が開かれます。それまでに何事も起きなければいいのですが、この空気、何か起きてもおかしくない雰囲気。お披露目会が終わるまで、ここで見守っていただけないでしょうか」
なるほど、修二の話で何かが切迫していることはよく分かった。ここは乗り掛かった船か。
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(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
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