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別離
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「どうしても行ってしまうのか?俺をここに取り残して…?」
1人荷物をまとめる僕に、恋人の堀田が神妙な表情で呟く。
「あぁ、どうしても行かなきゃいけない。」
僕は、彼を突き放すように答える。
「俺がどれだけお前を愛しているか誰よりも知っているだろ?頼む!俺を置いていかないでくれ!」
堀田がまるで雨に打たれてずぶ濡れになった仔犬のように、僕にすがって懇願する。
「わかってくれ…こうすることがお互いの為なんだ。僕は過去にケリをつけに行かなければならない。そのために、君に辛い想いをさせることを、どうか許してほしい…」
「嘘だ!本当は俺の他に好きな男ができたんだろ!?行かせない!絶対に行かせない!!」
僕はすがりつく堀田の腕を払い除け、スーツケースを閉じて立ち上がる。
「それじゃあ、もう行くよ」
「ダメだ!行かせない!いつまでも此処で一緒に暮らすって言ったじゃないか!嘘つき!」
堀田はなおも僕の足にすがりつく。
「あのさ…もういいかな?そろそろ行かないと、本気で飛行機に間に合わなくなるから」
「ちぇっ~、もう少し楽しみたかったのに」
堀田は口を尖らせて、不満そうに呟いた。
これが僕と堀田の毎日のお約束。僕が堀田を残して出かける時は、堀田はいつもこんな猿芝居をして楽しむのであった。
最初のうちは楽しんで付き合っていた僕だけど、最近は飽きずに繰り返す堀田に少々呆れ気味で、適当に受け流している。
「最近、付き合い悪いぞ、浩介。前は、もっと真剣に付き合ってくれていたのにさ」
「そんなことないよ、堀田。僕はいつだって堀田のことが大好きだよ」
僕は半分感情をどこかに置いて、定型文のようにいつものセリフで返す。
「うーん!何てかわいいことを言ってくれちゃうんだ、浩介は~」
そう言って堀田は嬉しそうに僕を抱きしめる。
これも毎回のお約束。こう言うことで堀田はやっと満足する。
堀田と一緒に暮らし始めてもうすぐ一年。
一緒に上京していた母も、大学に進学したことで福岡に帰り、それを機に堀田がどうしてもと言うので同棲をスタートさせた。
一緒に暮らしてみてわかったのは、堀田は案外嫉妬深いということだ。
僕がバイトに行けば、さり気なく遠くの席から見守って(監視?)いるし、友達と飲みに行くとなると、もれなく堀田もついてくる。
堀田は僕と出会う前は、数えきれない男を泣かせてきたくせに、なんて勝手な奴なんだ。
まぁ、それもこれも僕が魅力的なせいなんだけど、と自分を無理やり納得させて怒りを押し殺しているんだけど。
「じゃあ、そろそろ行くね」
僕が部屋を出ようとすると
「待って!俺も行く!」
「え!?これからじゃチケット取れないって!」
「いや、空港まで見送りに行くだけだよ」
「なーんだ」
僕は本気で安堵した。堀田のことだから、本気で福岡まで着いてきかねないと内心ヒヤヒヤした。
飛行場の発着ロビーで、僕たちは並んで搭乗時間を待った。
「なぁー、本当に行っちゃうのか?今からでもキャンセルできないのか?」
堀田はこの期に及んで、まだそんなことをしつこくグチグチと言っている。
「(うざいなぁ)たかが成人式に行くだけだってば。明後日には帰るから大丈夫だって。お土産も買って来るから。何がいい?」
「こ・う・す・け…キャッ!言っちゃった(笑)」
(言うと思った)
このやりとりも、毎回のお約束の一部だ。
「福岡行き777便、ご搭乗開始いたします」
「じゃあ行くね、おとなしく待っててね」
僕はそそくさと搭乗ゲートへと向かう。
「早く帰って来いよー!着いたらメールするんだぞー!」
堀田がロビーに響き渡るような大声で見送りをしてくれる。空港の職員さん達も、僕たちを見て笑っているように見えた。僕は顔から火が出る想いで飛行機に搭乗した。
「まるで恋人のように仲がいいんですね」
空港の職員さんにそう言われる。
(ヤバい!バレてる!?)
1人荷物をまとめる僕に、恋人の堀田が神妙な表情で呟く。
「あぁ、どうしても行かなきゃいけない。」
僕は、彼を突き放すように答える。
「俺がどれだけお前を愛しているか誰よりも知っているだろ?頼む!俺を置いていかないでくれ!」
堀田がまるで雨に打たれてずぶ濡れになった仔犬のように、僕にすがって懇願する。
「わかってくれ…こうすることがお互いの為なんだ。僕は過去にケリをつけに行かなければならない。そのために、君に辛い想いをさせることを、どうか許してほしい…」
「嘘だ!本当は俺の他に好きな男ができたんだろ!?行かせない!絶対に行かせない!!」
僕はすがりつく堀田の腕を払い除け、スーツケースを閉じて立ち上がる。
「それじゃあ、もう行くよ」
「ダメだ!行かせない!いつまでも此処で一緒に暮らすって言ったじゃないか!嘘つき!」
堀田はなおも僕の足にすがりつく。
「あのさ…もういいかな?そろそろ行かないと、本気で飛行機に間に合わなくなるから」
「ちぇっ~、もう少し楽しみたかったのに」
堀田は口を尖らせて、不満そうに呟いた。
これが僕と堀田の毎日のお約束。僕が堀田を残して出かける時は、堀田はいつもこんな猿芝居をして楽しむのであった。
最初のうちは楽しんで付き合っていた僕だけど、最近は飽きずに繰り返す堀田に少々呆れ気味で、適当に受け流している。
「最近、付き合い悪いぞ、浩介。前は、もっと真剣に付き合ってくれていたのにさ」
「そんなことないよ、堀田。僕はいつだって堀田のことが大好きだよ」
僕は半分感情をどこかに置いて、定型文のようにいつものセリフで返す。
「うーん!何てかわいいことを言ってくれちゃうんだ、浩介は~」
そう言って堀田は嬉しそうに僕を抱きしめる。
これも毎回のお約束。こう言うことで堀田はやっと満足する。
堀田と一緒に暮らし始めてもうすぐ一年。
一緒に上京していた母も、大学に進学したことで福岡に帰り、それを機に堀田がどうしてもと言うので同棲をスタートさせた。
一緒に暮らしてみてわかったのは、堀田は案外嫉妬深いということだ。
僕がバイトに行けば、さり気なく遠くの席から見守って(監視?)いるし、友達と飲みに行くとなると、もれなく堀田もついてくる。
堀田は僕と出会う前は、数えきれない男を泣かせてきたくせに、なんて勝手な奴なんだ。
まぁ、それもこれも僕が魅力的なせいなんだけど、と自分を無理やり納得させて怒りを押し殺しているんだけど。
「じゃあ、そろそろ行くね」
僕が部屋を出ようとすると
「待って!俺も行く!」
「え!?これからじゃチケット取れないって!」
「いや、空港まで見送りに行くだけだよ」
「なーんだ」
僕は本気で安堵した。堀田のことだから、本気で福岡まで着いてきかねないと内心ヒヤヒヤした。
飛行場の発着ロビーで、僕たちは並んで搭乗時間を待った。
「なぁー、本当に行っちゃうのか?今からでもキャンセルできないのか?」
堀田はこの期に及んで、まだそんなことをしつこくグチグチと言っている。
「(うざいなぁ)たかが成人式に行くだけだってば。明後日には帰るから大丈夫だって。お土産も買って来るから。何がいい?」
「こ・う・す・け…キャッ!言っちゃった(笑)」
(言うと思った)
このやりとりも、毎回のお約束の一部だ。
「福岡行き777便、ご搭乗開始いたします」
「じゃあ行くね、おとなしく待っててね」
僕はそそくさと搭乗ゲートへと向かう。
「早く帰って来いよー!着いたらメールするんだぞー!」
堀田がロビーに響き渡るような大声で見送りをしてくれる。空港の職員さん達も、僕たちを見て笑っているように見えた。僕は顔から火が出る想いで飛行機に搭乗した。
「まるで恋人のように仲がいいんですね」
空港の職員さんにそう言われる。
(ヤバい!バレてる!?)
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