最弱の俺が、ハッタリと他力本願で異世界を生き抜きます!

水咲 蓮

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神託!

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青と赤の双月が共に半分欠けた夜空には、瞬く星々の多くが隠される程の雲がかかっていた。
まだ暑く、湿気の多いこの日、プリセンティア聖皇国の皇宮聖殿では、遅くまで信仰に熱心な神官達が、神に祈りを捧げていた。
「天に召します我らが神よ…」
「絶対にして偉大なる我が主よ…」
「おお、全智全能たる創造主…」
「我が祈り、我が願いを届けたまえ…」
「おお神よ、おおおお神よ、おお神よ…」
最後のは、もうテキトー感満載な気もするが、そんな様々な祈りを神官や信徒達が捧げる。
そんな人々の念が渦巻く礼拝堂の奥。
聖殿の最深部には、限られた者しか入る事ができない、神託の間と呼ばれる部屋があった。
その部屋だけは、例え聖皇という立場であっても、御言役みことやくという資格、或いは教祖からの許しが無ければ入室は叶わない。
御言役というのは、云わば神の神託を聞く事ができる大司教の位を持つ者と、その側付きで、神託の儀式の準備や儀式中の大司教達の身の回りを世話する上位神官の役割である。
そして、人には理解し難い神の言葉を、最低でも3人以上の大司教である御言役が同席し、神託の解釈を擦り合わせたものが、正式に神託として信徒達に伝えられるのだった。
そんな教団の最重要機密の様な場所に、教祖、権伝けんでん司教スールヤに呼ばれ、国の重臣2人と聖皇が伏せていた。
権伝司教、すなわち神をこの世に顕現させる際の仮の身体を捧げ、その身に神を降ろし、神の言葉を伝承する者である。
つまり、教団で唯一、神を身に宿せる最高位の教祖のみに許された権限であり、神の言葉を発する側なので、聞くための御言役とは全く別の立場である。
教祖の許可によって参上していた現聖皇は、大司教の役職も備え、教団の最高運営機関、五老司教にさえも席を置く、コテコテの神教国家の国主であった。
五老司教とは、5人の最高教団運営機関であり、最高幹部と言った所だ。
「先ほど、我らが主たるスルトマ神より、神託を授かった…」
そう前置きして話を切り出したのは、教祖スールヤだった。
「聖皇コルテア・ドートルト・ステアノーゲン・コーラルセインスト・セン・ホセイン・プリセンティアよ。とうとうこの地、我らがプリセンティア聖皇国に、神の使徒が降臨召される時が来た」
「おお…」
「とうとう…」
「使徒様…」
「勇者と使徒って同じだよな…」
「てか、聖皇の名前長っ…」
スールヤの言葉に、スールヤ側付きの御言役5名が感嘆の声を上げる。
5人目の呟きには、聖皇も眉をヒクつかせた。
「な、なんと!!」
「神の使徒様が、我が国に!?」
「おお、使徒様が降臨せし地に、このプリセンティアをお選び頂くとは、この上ない憘び…」
さらに、重臣2名と同時に聖皇コルテアも、落ち着きを取り戻し、スールヤに応えた。
「ふむ。誠に、名誉な事だ。これを、我が国としては至上の祝事とし、国を挙げて盛大なパレードを執り行うべし。そして、降臨される日を国の祝日と定め、毎年、感謝の証として祭事を奉らん。また、我が国と協力関係にある各国には、聖皇直筆の封書を持って伝えよ。最後に、プリセンティア聖皇国が、魔王を討伐する為の後ろ楯となり、この者の補佐を神命とせよ!」
「はっ!神の御言葉のままに!…して、ご降臨の期はいつ頃で?」
続く教祖の言葉に聖皇も応え、教祖に伺いを立てた。
「次の双満月の時。場所はここ、神託の間の中央魔法陣にて、召喚の儀式を執り行う様、神託にはあった。よって、神界と繋ぐだけの魔方陣を、次の双満月の日までに神託にあった改良を施し、神界から使徒を呼び寄せる召喚術式を付与する。その為、召喚の当日までは私の命無き者は、如何な御言役と言えど一切の立ち入りを禁じ、同時に魔の手の者等への最上級警戒体制を敷く事とする!よいな!?」
スルトマ神像の台座が奥に置かれた壇上で、教祖スールヤは身振り手振りを交えて熱弁する。
「ははっ!!御心のままに!」
皆が声を揃えて応える中で、「教祖様、動きが大袈裟でウケる…」などと呟く輩が居たことは、本人以外にこの場の全員が知るよしもなかった。



「皇都、プリス・センテノーラへようこそ!旅人さん、ツイてるねえ!今、この皇都では、神の使徒降臨の為に、お迎えの祝賀ムードで祭り状態だ!」
「飲食も半額!宝飾やファッションだって、最大7割引だったり、武器、防具の類いなら、修理費0マニ!!買うならポーション類の道具屋も含めて、オマケサービス中さ!」
「宿泊なら、ギルドか役所関係の施設に置いてあるクーポン使えば、最大9割引だよ!」
「ぜひ、使徒降臨の当日、使徒様を迎えた盛大なパレードを催すから、その時まで見ていったらどうだい!?」
「使徒様が初めてこの地を見て回られる、記念すべき大チャンスだ!!人によっては一生に一度も立ち会うことができない、超々貴重な瞬間だよ!!」
「これを逃す手はないよ!?」
神託の翌日。
夜明けの衆前謁見で聖皇自ら民達に演説を行い、即日から召喚の当日である5日後まで、皇都を盛り上げるよう触れが降りたのだった。
割引いた分は国が負担するとなれば、国民は盛大に盛り上げた。
それはもう、毎年の豊穣祭などとも比べ物にならない程に。
そうして、使徒への期待がとてつもなく大きな波紋を起こし、召喚の当日までのたった5日で、世界各地の主要国、主要都市にまで話が広まったのは言うまでもない。
そんな世界規模の祝賀ムードの中、『彼』が勇者、使徒として召喚されるのだった。
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