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急伝!
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「何を言っておる!国防兵団長が居なくなっては、この国の治安防衛基盤が崩れかねん!」
「いやしかし、神託にも我がプリセンティアの国をあげて、使徒様を補佐する旨を仰せつかっているのだ!兵団長程の助力を惜しんでスルトマ神の期待に応えられたと胸を張って誓えるのか!?」
外交監理長タンザバルの異議に、近衛騎士団長グラードが反論する。
外交監理長とは、他国に外交に行く外交官達を管理監督する、外交の中枢機関の長であり、外務大臣の様な役割を担う。
近衛騎士団は、皇家血族の近辺警護する騎士団で、聖皇にはその長であるグラードが常に傍に付いていた。
もちろん、国内寄り選りの実力者しか就けない、騎士の中の騎士。
少数精鋭の最も誉れある騎士団である。
事実上、グラードが国内1位の実力者であった。
今は、勇者とは言え、使徒がたった1人で魔王軍に乗り込む事に議論が交わされていた。
神託にも補佐を命ぜられた以上、使徒を無駄死にさせてはならない。
であれば、仲間を募り、共に力を合わせれば良いと結論を付けたものの、いざ、誰を仲間とするかと言うところで、兵団長ラケルが名乗り出たのだった。
しかしそこで、仮にも国防の長が、国内に向けるべきその責を放って、国外に出る旅務に付く事が問題となり、揉めに揉めていた。
外交で必要となる等の一時的な旅務ではない。
数年、数十年かかるかもしれない長期不在など、国防長が執る任務ではない。
「我が国防兵団は、国民や皆様のご協力もあって、お陰さまで有能な人材は厚く、私など何時辞めても代わりが務まる者は何人もおります」
「ラケル殿、その言い様では、我ら騎士団の人材が薄い様に聞こえてしまう。もう少し言葉を選ばれよ」
ラケルが聖皇へ向かって落ち着いた口調で改めて口上するが、その言葉が引っ掛かって、赤の騎士団長バーラントが嗜める。
会議には、騎士団から白の他に赤と青の騎士団長が出ていて、朝には顔を会わさなかったが、初対面で勇人を見ても、ほとんど反応を示さなかったのも、この2人と白のシェルハザードぐらいじゃないだろうか。
青の騎士団長は女性で、ルーシアと名乗っていた。
「これは失礼した。決して赤の騎士団を貶める様な意図はありません。私も若輩者故、拙い発言に語弊が生じた事、お詫び申し上げる」
パレードの時とは口調を正したラケルが、赤の騎士団長バーラントへ頭を下げる。
「しかし、それなら尚更、貴殿ではなく、貴殿に近しい実力を持った部下を付ければ良かろう。現職の長がその任を疎かにする事はあってはならぬ」
財務監理長シュトーゼンが、最長老ながらラケルヘ鋭い相貌を向けた。
「いやいや、彼は辞して別の者に任を引き継いでから、使徒様にお仕えするのですから、長の任は疎かにもなりませんよ。彼が出ていく時の現職の兵団長は、彼とは別の方になっているのですから」
「幸いと言うべきか、街の治安を護る我ら国防兵団は、町内各所で行われる様々な催しの警護や、その他案件において、長自身が駆り出される事が多く、そういった出来事が同時に複数重なり、身一つで足らない事もままありました。そして、その都度別の者達に長の代役を任せてきましたから、既に引き継ぐ程の事も無い程に、数人が長の役目を全うできる状況にあります」
生産技術局長ノルマーディンの話に、ラケルがもう一押し加えた。
生産技術局とは、農林水産や工業技術等の発展と管理を担う内務の中枢の二つ柱のうちの一つである。
「そうです。我々は兵団とは特に繋がりが深く、連携して政治を行う事が多いので、その状況は私も保証しますよ」
地生保管局長テスランが、ラケルの言葉を更に押す。
地生保管局とは、民の生活や土地開発等の保護及び管理を行う、内務の中枢の二つ柱のもう一つである。
ノルマーディンとテスランは、国内でも伝説的な秀才で、若くして国を担う要職に就いた人物だ。
ラケルも比較的若いが、三十路を歩み始めたラケルよりはテスランが二つ、ノルマーディンは五つも年下なのである。
因みに現職に就いたのは、共に25歳の時だったので、テスランは3年前、ノルマーディンは今年就いたばかりと言う事だ。
これまで議論に加わらなかった3人は、国家薬剤師長で高齢女性のセシュア、法務局長でこれまたシュトーゼンの次に老齢なガゼス、国防兵団と対の役務である特務兵団長のマルケスと言うが、今回の会議に関しては、一言も発すること無く終わりを迎えた。
なぜなら、物々しい足音と共に、教会の使者が、近衛騎士の制止を振り払い、会議室の戸をけたたましく叩いたからだ。
「至急!!使徒、勇人様!並びに聖皇、側近近衛のグラード様、お三方のみで、スールヤ様より神託の間へご足労願いたし!事は急を要するとの事!」
扉の開場は叶わなかった為に、会議室の中へ届く声で通告する。
「何事だ!?」
「何だ!!」
「何があった!?」
重臣達の湧き立つ動揺のなか、聖皇と勇人は視線を交わして頷き、席を立ったのだった。
「いやしかし、神託にも我がプリセンティアの国をあげて、使徒様を補佐する旨を仰せつかっているのだ!兵団長程の助力を惜しんでスルトマ神の期待に応えられたと胸を張って誓えるのか!?」
外交監理長タンザバルの異議に、近衛騎士団長グラードが反論する。
外交監理長とは、他国に外交に行く外交官達を管理監督する、外交の中枢機関の長であり、外務大臣の様な役割を担う。
近衛騎士団は、皇家血族の近辺警護する騎士団で、聖皇にはその長であるグラードが常に傍に付いていた。
もちろん、国内寄り選りの実力者しか就けない、騎士の中の騎士。
少数精鋭の最も誉れある騎士団である。
事実上、グラードが国内1位の実力者であった。
今は、勇者とは言え、使徒がたった1人で魔王軍に乗り込む事に議論が交わされていた。
神託にも補佐を命ぜられた以上、使徒を無駄死にさせてはならない。
であれば、仲間を募り、共に力を合わせれば良いと結論を付けたものの、いざ、誰を仲間とするかと言うところで、兵団長ラケルが名乗り出たのだった。
しかしそこで、仮にも国防の長が、国内に向けるべきその責を放って、国外に出る旅務に付く事が問題となり、揉めに揉めていた。
外交で必要となる等の一時的な旅務ではない。
数年、数十年かかるかもしれない長期不在など、国防長が執る任務ではない。
「我が国防兵団は、国民や皆様のご協力もあって、お陰さまで有能な人材は厚く、私など何時辞めても代わりが務まる者は何人もおります」
「ラケル殿、その言い様では、我ら騎士団の人材が薄い様に聞こえてしまう。もう少し言葉を選ばれよ」
ラケルが聖皇へ向かって落ち着いた口調で改めて口上するが、その言葉が引っ掛かって、赤の騎士団長バーラントが嗜める。
会議には、騎士団から白の他に赤と青の騎士団長が出ていて、朝には顔を会わさなかったが、初対面で勇人を見ても、ほとんど反応を示さなかったのも、この2人と白のシェルハザードぐらいじゃないだろうか。
青の騎士団長は女性で、ルーシアと名乗っていた。
「これは失礼した。決して赤の騎士団を貶める様な意図はありません。私も若輩者故、拙い発言に語弊が生じた事、お詫び申し上げる」
パレードの時とは口調を正したラケルが、赤の騎士団長バーラントへ頭を下げる。
「しかし、それなら尚更、貴殿ではなく、貴殿に近しい実力を持った部下を付ければ良かろう。現職の長がその任を疎かにする事はあってはならぬ」
財務監理長シュトーゼンが、最長老ながらラケルヘ鋭い相貌を向けた。
「いやいや、彼は辞して別の者に任を引き継いでから、使徒様にお仕えするのですから、長の任は疎かにもなりませんよ。彼が出ていく時の現職の兵団長は、彼とは別の方になっているのですから」
「幸いと言うべきか、街の治安を護る我ら国防兵団は、町内各所で行われる様々な催しの警護や、その他案件において、長自身が駆り出される事が多く、そういった出来事が同時に複数重なり、身一つで足らない事もままありました。そして、その都度別の者達に長の代役を任せてきましたから、既に引き継ぐ程の事も無い程に、数人が長の役目を全うできる状況にあります」
生産技術局長ノルマーディンの話に、ラケルがもう一押し加えた。
生産技術局とは、農林水産や工業技術等の発展と管理を担う内務の中枢の二つ柱のうちの一つである。
「そうです。我々は兵団とは特に繋がりが深く、連携して政治を行う事が多いので、その状況は私も保証しますよ」
地生保管局長テスランが、ラケルの言葉を更に押す。
地生保管局とは、民の生活や土地開発等の保護及び管理を行う、内務の中枢の二つ柱のもう一つである。
ノルマーディンとテスランは、国内でも伝説的な秀才で、若くして国を担う要職に就いた人物だ。
ラケルも比較的若いが、三十路を歩み始めたラケルよりはテスランが二つ、ノルマーディンは五つも年下なのである。
因みに現職に就いたのは、共に25歳の時だったので、テスランは3年前、ノルマーディンは今年就いたばかりと言う事だ。
これまで議論に加わらなかった3人は、国家薬剤師長で高齢女性のセシュア、法務局長でこれまたシュトーゼンの次に老齢なガゼス、国防兵団と対の役務である特務兵団長のマルケスと言うが、今回の会議に関しては、一言も発すること無く終わりを迎えた。
なぜなら、物々しい足音と共に、教会の使者が、近衛騎士の制止を振り払い、会議室の戸をけたたましく叩いたからだ。
「至急!!使徒、勇人様!並びに聖皇、側近近衛のグラード様、お三方のみで、スールヤ様より神託の間へご足労願いたし!事は急を要するとの事!」
扉の開場は叶わなかった為に、会議室の中へ届く声で通告する。
「何事だ!?」
「何だ!!」
「何があった!?」
重臣達の湧き立つ動揺のなか、聖皇と勇人は視線を交わして頷き、席を立ったのだった。
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